お風呂
「ただいま〜!」
俺はアイリの後ろ姿が見えたから声をかける。
「あ、お兄ちゃん!おかえりなさい!」
アイリが俺のことを元気に迎えてくれた。
「魔王の様子はどうだ?」
「特に問題ないですよ。今は眠っています。」
俺に向かって誰かが歩いてきた。
「えっと、あなたは…」
「石井 優です。以後お見知り置きを。」
石井は手を出してくる。
「こちらこそ。」
俺は石井の手を握り返す。
「ところでなぜ帰ってくるのに時間がかかったのですか?」
石井が痛いところを突いてくる。
何て答えよう。
「何か落ちているものがないか探していたんですよ。特に何もありませんでしたが。」
ここはポーカーフェイスだ。顔に出さないように注意しよう。
1年後に何かが起こると佐々木は言っていたが確証はないしな。今は様子を見よう。
「そうですか…」
石井は目を細め俺を見てくる。
「それでは1つ質問良いですか?」
「何でしょう?」
「あなたは虎門学園の生徒ですか?」
げっ、俺の正体に気づいているのか?
バレないように仮面をつけてたんだがな…
「その反応はやっぱり。他の人には言わないので、それじゃ。」
石井は俺から去っていった。
「はぁ…まぁ誰にも言わないみたいだしいいか。裏切り者にもバレる心配はなさそうだしな。」
しかしあの化け物の声は…多分…いや、まだ分からないな。
「お兄ちゃん!」
「どうした?」
「もう3回も呼んだのに。」
アイリが猫耳をピクピクさせ頬を膨らませている。
「ごめんごめん。それで何か?」
「お兄ちゃん私に魔法を教えて!」
えっ、確かアイリはMPが全然なかったはず。
そういえばMPって訓練で増やせるのか?
試してみようか…
「分かった。明日試してみようか。」
「やったー!じゃ私部屋に戻るね。」
アイリは走って部屋に戻っていく。
「転ぶなよ〜」
元気なもんだ。
しかし疲れたな。部屋に戻って寝るとするか。
◆
俺は自分の部屋に寝っ転がった。
ベットで体を伸ばす。
今日は疲れたな。もう寝るか。
あ、その前に風呂に入るか。
大浴場が魔王城にはある。
この時間は確か男性の時間だったはずだが…
俺は借りている部屋に置いてあった着替えを持って風呂場に向かった。
俺は看板に書いてある時間を確認し風呂に入る。
あと1時間か…それまでに出てこよう。
大浴場には石鹸とタオルが置いてあった。
俺は魔法で水を飛ばすことができるがせっかくなのでタオルを持ち体を洗って風呂に入った。
おれが入ったのは露天風呂だ。岩に寄りかかって座った。
この岩は露天風呂の中心に1つでかいのがある。俺の体が隠れるぐらいの大きさだ。
露天風呂はテニスコート2つ分位の大きさで結構広い。温度は魔王によると43度ある。俺にとっては少し暑いぐらいだ。湯気もかなり出ていて前がほとんど見えない。
「ふぇぇぇ〜〜気持ちがいい。」
俺は日本でも風呂には結構こだわってた方だ。
風呂に入れたお湯は1日目は普通に入り2日目は匂いがつく粉を入れたりして入る。
本当は毎日お湯を変えたいところだが金がなかった。というより親に怒られた。
「あれ?そこにいるのはソーマさんですか?」
声がする方を見ると石井と谷口 翔大がいた。
「そうです。」
「あれ、ソーマさんって虎門学園の斎強 相馬さんですか?」
谷口が俺を見て聞いてくる。
俺は石井を見るが首を振っていた。
教えてはいないってことだろう。
だとすると仮面をつけていない。だからバレたのだろう。
「ええ…そうです。」
「って!何で俺の事知ってるんですか?」
俺は谷口 翔大とは一度も話したことがし顔を合わせたこともない。
「相馬さんは虎門学園で結構有名でしたよ。あ、俺は谷口 翔大です。翔大って呼んでください。」
「えっ?」
俺はそんな目立つことしてないのだが…何故だ?それに有名ってどういうことだ?
「なぜって顔してますね。相馬さんって何やっても全て平均的な点数取るじゃないですか。」
確かに俺はテストも全部平均点プラマイ2点の点数を取り、体育の基礎体力テストも平均的ぴったしだったな。
「全て平均的だとけっこう目立ちますよ。それと結城さんとよく話していたから。」
「なるほど」
結城は学年の中でも人気があったしな。
「っと。そろそろ時間だな。俺は風呂から出ますね。」
石井が風呂から出ようとするが翔大が石井を止める。
「このまま残ろうぜ!」
翔大が石井を見てニヤニヤしている。
「ちょっ!早くしないと時間が……」
「ほら誰も居ないじゃない。」
脱衣所の方から声が聞こえてきた。
「なっ!服とか置いてあったはずだが。」
石井が驚いているが翔大がニヤリと笑って答えた。
「脱衣所に置いてあった服は全て隠しておいたぜ。もちろん相馬さんのやつも。」
マジか!
翔大ナイス!!!!……じゃなくてどーしよう……
「とりあえず岩陰に隠れよう。相馬さんも。」
翔大が俺と石井の腕を引っ張って岩陰引きずり込んだ。
相馬さんってなんか違和感があるな。
「相馬って呼んでくれ。なんかさん付けされると違和感がある。」
「おう、了解」
翔大は俺に向かって敬礼する。
なぜだ!
「とりあえず怒られたら翔大の責任にするからね。それとそういう事するから翔大は恋人が出来ないと思うのだが。」
石井はそういうが…岩陰から覗いて見てるからお前も同罪だろ!
「うっせ〜!お前だって見てるじゃねぇーか。それとなんかあったら連帯責任だ。」
あぁ嫌な予感しかしないけどな……
俺も岩陰から覗いて見る。
そこにいたのは
アイリ、三浦 香、丸山 茜、魔王(清水 桜)
の4人だ。
「ここからだと声が聞こえないのが残念だな。」
翔大は残念そうに言う。
「露天風呂に来るまで待てばいいんじゃないか?」
と石井。
「確かにそうだけど少しリスク高いよな。」
と俺。
悪いとは思っているがノリノリな3人であった。
「おい、こっちに来るぞ、これからは静かにな。それと岩陰から覗くのもバレるから禁止だ。」
湯気がけっこう出てるからバレないとは思うけど…でもリスク高いしな。
「「了解」」
俺と石井は翔大に軍隊のような返事をする。
「うわ〜!露天風呂凄いね。」
この子供みたいな声はアイリだ。
「私がここは設計して作ったからね。日本をイメージしたんだよ。」
「凄いよ!日本を思い出す!茜も早く〜」
「香、余りはしゃがないように。」
声で大体わかるが…
石井が水を飲んでいる。どうやら持ってきていたようだ。
「石井。俺にもくれよ」
翔大が石井に水をもらおうとしてる。
石井は手でokサインを作った。
「そうだ、三浦さんって石井君の事が好きなの?」
「ブッッーー!」
石井が風呂場で飲んでいた水を吹く。
「おい!吹くな!」
ヒソヒソ声で俺らは話す。
「誰?!」
どうやら魔王が石井が吹いた音に気付いたようだ。
「ま、まずい!みんな潜って隠れろ!」
翔大が潜り俺も急いで戻る。
お湯の中で何とか目を開けると目の前に魔王の足があった。
「聞こえて気がしたんだが気のせいか…」
魔王は特に探したりする事なく戻っていく。
「プハッ」
ハァハァ、慌てて潜ったから息がやばかった。
「何とかなったな。」
俺たちは顔を見合わせて一息吐く。
「石井、何聞いても吹くなよ。」
「わかったよ。極力我慢する努力をするよ。」
そして女性陣の会話が再開される。
「どうだった?」
「誰もいなかったわ。」
「なら良かった。もし男子達がいたら記憶が消えるまで殴ってやるわ」
香さんが物騒な事言ってる。
「それは大丈夫だと思うよ。翔大くんはわからないけど…」
茜さんは翔大を信用していないようだ。
俺と石井は2人で翔大を同時に見る。
「えっ、2人ともなんだよ?」
「「いや、なんでもない。」」
俺と石井は翔大から目を逸らした。
「お前ら俺を信用してねぇーな!」
翔大の声の大きさはギリギリ向こうに聞こえそうな声の大きさだった…
「バカ!声がでか…い…」
石井は途中から声のトーンが小さくなった。石井が向いている方を見てみると魔王がいた。
「キャ………」
俺は魔王の口を慌てて抑え岩に座らせる。
「うお!相馬大胆じゃないか!」
石井が俺にニヤニヤしながら言ってくる。
いや、ちげーからな!
「待て待て、このままだと他の連中にもバレるぞ!」
魔王が暴れてくるが何とか捕獲し落ち着かせた。
「君達ここで何してるの?」
魔王が目を細め聞いてくる。
「あーえっと、風呂に入ってる。」
言い訳が思いつかない!
「君達そういうことなのね。」
魔王が俺たちは3人を見ながらニヤリと不敵に笑った。
「なら君達の事バラさないから私の願い後で聞いてくれる?」
い、嫌な予感がするぞ……
「その、願いってなんだ?」
「白金貨3枚頂戴!みんなで一枚ずつ。」
「「「えっ!それは無理!」」」
「おーい……」
「わ、分かった!払うよ払う。」
「ありがとう!」
魔王はそう言うと去っていった。
「……これで覗きはこりただろう…」
石井が落ち込みながら言う。
「そ、そうだな…」
翔大もかなり落ち込んでいるようだ。
それから約10分経ったとき女性陣が出て行ったので、
その10分後に俺たちはトボトボと落ち込みながら風呂から出て行くのであった。
稼いだ金が飛んでいった…
参ったなー……こんなことアイリに話す訳にも行かないしな。
言い訳を考えないと。




