試験対策をしまして
――第1問。
デバイスを携帯して外出する際は、予期せぬ交戦に備えて、いつでも即座に行使できるようにした状態で持ち歩かなければならない。
〇か×か
「……〇かな」
答え:×
解説: 一般の混乱や無用なパニックを防ぐため、平時の移動時は安全装置をロックし、専用のケースや収納状態で露出させずに携帯しなければならないため。
――第5問。
一般貸与デバイスの所有者は、自身の身に直接危険が及んだ場合にのみ、自衛権の行使として術式を展開することが許されている。
〇か×か
「自衛のための貸与だから〇だろ」
答え:×
解説: 自身の身だけでなく、すぐ側で危険にさらされている一般市民の避難誘導や緊急の保護など、他者の救助・防衛を目的とする場合でも術式の展開が認められているため。
「……くそが!」
俺は机を叩き大声を上げる。
現在、俺は自宅でアーケインデバイスの使用免許のための勉強をしていた。
が、これがどーも性格が悪い問題ばかりだ。
ひっかけがあまりにも多すぎて嫌になる。
きっとこれを作った人間は性格が終わっているに違いない。
『フハハハハっ、このような問題も解けないとは情けない。まぁ、貴様には我が居る。アーケインデバイスなど使えなくてもよかろう!』
俺が問題集に憤慨していると、マキナが馬鹿にしてくる。
「ほーん? ということは、高尚な妄念具様はきっとお間違えにならないんでしょうねぇ?」
『当然だ。人間ごときが作った問題など、我の敵ではない』
と、俺の皮肉に対し自信満々のマキナ。
それならと、俺は彼女に問題集の一問を見せる。
「じゃあ、これも解けるんだろうな?」
――第10問。
夜間は視界が極めて悪く業魔の奇襲を受けやすいため、移動時は周囲への警戒を特に厳重にしなければならない。
〇か×か
『ハッ! 馬鹿にしているのか? こんなもの〇に決まっているだろう! 夜間は人間の目では視界が極端に悪くなるからな!』
と、意気揚々と答えるマキナに解答を見せてやる。
答え:×
解説: 夜間だけでなく、日中であっても予報外の異界化や突発的な脅威が発生する可能性はあるため、警戒は昼夜を問わず常に行わなければならないため。
『ファ〇ク! 滅べ、クソ人類!』
「ぶははははは! ばーかばーか、お前だって解けねぇじゃねぇか!」
いやー、自信満々の相手を分からせるというのはとても気分がいい。
『ふ、ふん! こんなもの解けなくても我は別に困りはせんわ! クソが!』
おーおー、負け犬が吠えとるわ。
「ようこそ、こちら側へ」
『ふざけるな、私はディザイアだぞ。人間と同じにするな!』
「まぁ、そう言うなよ。同じ穴の狢として仲良くしようぜぇ?」
俺の言葉に、マキナはさらに不機嫌そうにするのだった。
試験は1ヶ月後。
準備期間は非常に短いが、それだけMAHOも焦っているということになる。
実技についてはリライターとしてだが実戦経験があるので問題ない。
面接も……まぁ、何とかなるだろ。
ということで、目下の問題は筆記試験となるわけだ。
それまでに、何とか知識を吸収しなければならない。
『なんなら、我が答えを盗み見てやろうか? 我ならそれぐらい容易いが』
「……ないわー」
俺が引きながらそう言うと、マキナは『何故だ⁉』と本気で分からないという風に困惑する。
こればっかりは、自分の実力で合格しなければ意味がない。
実技に関しても、マキナには頼らないつもりだ。
「周りが自分の実力で頑張ってるのに、俺だけズルするわけにはいかないだろ。だから……気持ちだけ受け取っておくよ」
『――ふん、相変わらず人間の心は理解できん。ならば、今後泣きついても我は手助けをせんからな』
「あぁ、それでいい」
マキナの言葉に俺は頷く。
その後、しばらく試験勉強を行い数時間後。
俺は凝り固まった体をグイッと伸ばす。
骨がポキポキと鳴るのがどこか心地いい。
「ぐー……っ。ああ、疲れた。気分転換に散歩でも行くかな」
今日は周辺で特に異界化予報も出ていない。
なので魔法少女の戦う姿も見れないと思い、集中して勉強していたのだ。
とはいえ、すでに直近で2回も予報を覆されているので、あまりアテにはなくなっているが。
MAHOとしても、威信に関わるため最近は予報士を増員したと聞く。
いや、ほんと俺のせいでマジすんません。
さすがに、俺が原作に介入したせいというのは理解しているので、内心で謝る。
とはいえ、状況的に原作に介入しないルートはあり得なかった。
マキナと出会ってしまったことで、俺の運命も決まったと言える。
『――なんだ?』
俺がマキナを見ていると、不審に思った彼女が声をかけてくる。
「いや? お前が居てよかったなと思ってたんだよ」
こいつを含めディザイアは信用できない。
が、こいつが居なかったら軍荼利姉さんを救えなかったのも事実だ。
なので、一応感謝はしているのである。
『ふん、そう思うならもっと崇め奉れ。そして我に体を寄こすがいい』
「はっ、死んだら考えてやるよ」
『殺しても死なんくせに何を言う……』
と、そんな軽口を叩きながら俺たちは、息抜きに外出をする。
◆
「お?」
「え、あ、ぐ、偶然ね……!」
俺が街に出てくると、赤毛のツインテールにゴスロリの格好をした少女――滅城 サリエ……さっちゃんが挙動不審になりながらこちらに声をかけてきた。
「さっちゃんか。どうしたんだ? また世界を滅ぼしに?」
「そんな、ちょっと近くまで、みたいなノリで言うんじゃないわよ! ……アタシはちょっと新しいゴスロリ衣装を見に行こうとしてたの。行きつけの店に新作が出たって言うから」
新作ねぇ。
「正直、ゴスロリって全部同じに見えるんだよね。いや、デザインはかっこいいし、可愛いとは思うんだけど」
俺がそんなことをぽつりと言うと、信じられないという風に目をカッと見開くさっちゃん。
「はぁ⁉ あんた、何言ってるの! いい? ゴスロリ衣装ってのは奥が深くてね……」
と、さっちゃんのゴスロリ魂に火が付いたのか、そこから10分ほど彼女の早口トークが続く。
「ごめん、わかった! わかったから! そこまで愛が深いと思わなかったんだ!」
なおもヒートアップし続ける彼女に、俺は白旗を挙げる。
思えば、俺も魔法少女に関しては譲れないものがあり「魔法少女なんて全員同じだろ?」と言われたらぶっ殺してたと思う。
うん、オタクとしてあるまじき発言だった。
反省である。
「わ、わかればいいのよ。わかれば!」
「お詫びに、さっちゃんの行きつけの店とやらに連れてって教えてくれない?」
俺がそう言うと、さっちゃんは「ヘァッ⁉」とどこぞの巨大な光の戦士のような鳴き声を上げて顔を真っ赤にする。
「ほら、この間は俺がさっちゃんに魔法少女について語っただろう? 今度は、君の推しを俺に語ってくれ。仲間の好きなものは知っておきたいんだ」
自分の推しを押し付けるだけではなく、相手の推しも知り受け入れる。
これが俺のオタク道だ。
「し、仕方ないわね! いいわ、たっぷりどっぷり語ってあげるから覚悟しなさい!」
『カッカッカ、マスター、よかったじゃねぇか、デートだぶらすっ⁉』
ピコピコハンマー化しているグランギニョル――グランが何かを喋ろうとしたが、さらに顔を真っ赤にしたさっちゃんに地面に叩きつけられてしまう。
「余計なことを話そうとするんじゃないわよ、このスカタン!」
「さ、さっちゃん?」
息を荒くしているさっちゃんに恐る恐る話しかけると、ハッと我に返りこちらを向く。
「な、なんでもないわ! いい? グランは何も言わなかった。いいわね!」
「アッハイ」
さっちゃんのただならぬ雰囲気に押され、俺はただただ頷くだけだった。




