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羅刹女と戦いまして

【TIPS】

 土のス〇ルミリョーネは衝撃でしたね

「うぐ……っ」


 ボタボタと鮮血が口から滴り落ちる。


「リライター……っ、くそ、羅刹女、何をした!」


 吐血をし蹲る俺を見て、久遠くんはキッと羅刹女を睨む。


「え、えぇ……?」


 一方、唐突な状況に困惑している羅刹女は、呆然としている。

 ごめんね、なんか君が悪いことになってごめんね。

 本当に悪いのは俺だったね、死にます。


 軍荼利姉さんを助けた時点で原作改変だろと言われたらその通りなのだが、原作キャラから直接言われるとダメージが桁違いなのである。

 くくく、さすがは天魔……精神攻撃もお手の物ってわけか……っ。


『いや、自業自得では?』


 マキナが何か言っているが、俺には何も聞こえないな。

 聞こえない!


「いや、わっちはまだ何も……」

「許せません! その間違った救済とやらも阻止して見せます!」

「あの、だから……」

「ふひ、て、天魔だか何だか知らないけど……MAHOとして、見過ごせない」

「その……」


 羅刹女が何かを言おうとする度にみろくちゃんや葵が正義感に満ちた言葉を吐く。


「……ふふふ、かかってくるがいいでありんす! 主さんたちも救済してやりんしょう!」


 弁明を諦めたのか、パンッと扇子を広げ臨戦態勢となる羅刹女。

 ほんっっっとごめんね! 俺のせいで変な空気になって!

 敵ではあるが、俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになり内心で必死に謝る。


 そんな中でも状況は進んでいき、久遠くん達は戦闘を開始する。


「みろく! 葵さん! 支援魔法をかけるよ!」


 久遠くんが2人に魔法をかけると、みろくちゃん達は武器を構え、羅刹女に斬りかかる。


「土葬槍」


 しかし、羅刹女は慌てず扇子を軽やかに振るう。ぼこりと地面から槍を持った骸骨が現れ、彼女らに襲い掛かる。


「ひぇっ、おばけ⁉」

「水流槍!」


 突然の骸骨にみろくちゃんは驚いて飛び上がるが、それをカバーするように葵が三叉矛に水を纏い、骸骨を一掃する。


「き、気を付けたまえ……羅刹女は土の天魔と名乗っているが、本質はネクロマンサー。アンデッド系を操るぞ……っ」

「リライター、無理するな……!」


 よろめきながらみろくちゃん達に警告する俺を見て、久遠くんが心配そうに支えてくる。

 そんな俺の警告を聞いていた羅刹女はチッと舌打ちをする。


「ネタバレをする男はモテないでありんすよ……!」


 その言葉に俺はドキリとする。

 それは俺が男だと分かっていることに他ならない。

 が、戦闘に夢中になっているのか、久遠くんたちは特にそこに関しては気にしている様子はなかった。


「我武者羅《がむしゃら》」


 羅刹女が再び扇子を振れば、地面の影が底なし沼のように蠢き、漆黒の甲冑を纏った侍の格好をした骸骨たちが次々と這い出てくる。

 ずらりと立ち並ぶ数十体もの骨の武者たちが、禍々しい刃を光らせて一斉に襲いかかってきた。


「くっ、数が多い……っ!?」

「押し潰される……っ!」


 みろくちゃんと葵が間髪入れずに武器を振るうが、倒しても倒しても床の影から次々とアンデッドが湧き出してくる。

 普通の業魔とは比較にならない、天魔ならではの圧倒的な魔力量。

 一足飛びに懐へ肉薄しようとする前衛のふたりは、肉の壁ならぬ骨の壁に足止めされ、苛烈な迎撃に徐々にジリ貧へ追い詰められていく。


「ふふ、人間ごときが天魔の軍勢に勝てるわけがござりんせん。じわじわと肉片にしてやりんしょう」


 後方で余裕たっぷりに扇子を仰ぎ、高笑いを浮かべる羅刹女。

 幹部級の余裕と圧倒的な戦力差。このまま削り負ければ、じわじわと追い詰められて全滅しかねない。

 迫り来る骨の刃を間一髪で弾き返しながら、みろくちゃんは自身の震える体に喝を入れ、愛用の剣を固く握り直した。


「さ、最初はびっくりしたけど……ネクロマンサーって分かれば、怖くなんてないんだから!」


 みろくちゃんの叫びに応えるように、久遠くんが手元のデバイスを強く操作する。


「みろく! 葵さん! 限界まで支援する……持ちこたえてくれ!」


 久遠くんの強力な支援魔法が限界を超えて注入され、みろくちゃんの身体から溢れ出る魔力が眩いばかりの輝きを放ち始めた。


「破邪顕正《はじゃけんしょう》――っ!」


 光を纏わせた剣が一閃されると、眩い断空の刃がこの空間を真昼のように照らし抜いた。

 光の属性はすべての悪意と異形に対して絶大な相性を誇る。

 押し寄せていた骸骨の武者たちは、みろくちゃんの光を浴びた瞬間、悲鳴を上げる間もなく浄化の光に包まれてサラサラと灰へと変わっていった。


「な、光属性でありんすか⁉」


 圧倒的な数で押し潰すはずだったアンデッドを一瞬で霧散させられ、羅刹女は初めてその美しい顔を狼狽えに歪めた。

 光属性は基本的に他の属性に対して強力だが、闇と死を司るアンデッドにとっては殊更致命的な天敵だ。


「いまです、葵さん!」

「ふ、ふひ……任せて!」


 みろくちゃんで作られた絶好の隙を逃さず、葵が三叉矛《トライデント》を構えて猛然と踏み込む。

 久遠くんのバフを受けた葵の足元から激しい水流が巻き起こり、三叉矛の穂先へと収束していく。


「貫け……激・水流槍!」


 激流を纏った刺突が、無防備になった羅刹女の懐へと容赦なく放たれた。

 羅刹女はハッと正気に戻り、巨大な扇子を盾のように交差させて間一髪で受け止める。


 ――ドゴォンッ!


 重厚な衝撃音が響き渡り、水の爆風が吹き荒れる。

 三メートルを超える羅刹女の巨躯が、葵の放った一撃の勢いに押されてズルズルと大きく後退した。


「チッ……小娘どもが、調子に乗るんじゃありんせんよ……!」


 足元を濡らしながら、羅刹女が苛立ちを露わにして扇子を激しく振り下ろす。

 すると、彼女の足元の影から巨大な土の腕が突き出し、みろくちゃんと葵を押し潰そうと振り下ろされた。


「危ない!」


 久遠くんが即座に指示を飛ばしつつ、手元のアーケインデバイスを構える。


「爆ぜろ!」


 あらかじめセットされていた爆破魔法が起動し、土の巨人の肘関節部分で炸裂する。

 衝撃で巨人の腕が軌道を大きく逸れ、みろくちゃんと葵は間一髪で圧殺を回避した。


「ナイスサポートです、久遠さん!」

「今だ、みろく! 決めろ!」


 久遠くんの指示と完璧なサポートに呼応し、みろくちゃんが強く地を蹴る。

 久遠くんのバフによって限界突破した光が最奥の空間を照らし、羅刹女にはもう光を防ぐアンデッドの壁を作り出す余裕は残されていなかった。


「な……っ⁉」

「これで……おしまいですっ!」


 羅刹女が苦し紛れに扇子を構えようとするよりも早く、みろくちゃんが光の軌跡を描きながら羅刹女の懐へと飛び込む。

 巨躯から放たれる圧倒的な威圧感を掻い潜り、渾身の力を込めて剣を振り抜いた。


「やああああ!!」


 眩いばかりの光の刃が、三メートルを超える羅刹女の巨体を十文字に切り裂く。


「ぐ、あああああぁっ!?」


 光の刃に切り裂かれ、苦しそうにうめく羅刹女から黒い煙が立ち上る。


「やったの……っ⁉」


 もはやフラグの代名詞ともなるセリフをみろくちゃんが叫ぶ。

 そして、当然のことながらこれくらいで幹部である天魔が倒せるわけがない。


「こ、こここ……小娘がぁっ! よくも、わっちに……! 許さねぇ!」


 パリパリと音を立てて白い肌に亀裂が入り、その隙間から禍々しい土気色の皮膚があらわになっていく。

 美しかった顔は醜く歪み、殺意と怒りに満ちた表情を浮かべる。

 角が伸び、牙が裂け、瞳は大きく落ちくぼみ、美貌の花魁は醜悪な怪物へと変貌していく。


「てめぇら……ただじゃ殺さねぇからな……っ!」


 優雅だった言葉遣いも完全に崩れ落ち、かつての美しき面影はどこにもない。

 肉体の所々が腐れ落ち、鼻を突く強烈な死臭が漂い、破けた肌の隙間からは生々しい骨が覗いている。


 これこそが天魔・羅刹女の真の姿である。

 本人の自認は美しき花魁。だが、その本質は醜悪で残酷な、死の匂いを撒き散らす本物の『鬼』なのだ。


「さぁ、第2回戦の始まりだ……ぐちゃぐちゃにしてやるよぉ!!」


 羅刹女が天を仰いで咆哮すると、異界の空間全体が黒い靄に包まれ、地鳴りのような響きとともに大地が激しく揺れ動き始めた。

 ――――――――――


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