第5話 たぬきには関係ないと思いますが王子さまは訳アリなようです
レナードを拾ってきて何度目かの朝。朝食のシチューとパンを用意しながら、レナードがわたしに言いました。
「君は僕がなぜ倒れていたのか、とか。僕の事情を一切聞かないね」
「はい。わたしには関係のないことですから」
わたしはたぬきにしてはお行儀よく椅子に座り、テーブルの上に置かれた器からシチューを食べています。スプーン使いもだいぶ上達しましたよ。レナードは器用で、パンなども自分で作ってしまいます。収納袋から材料を出せるからだよ、と本人は言っていますが、お芋を洗うのも手間だと思うわたしからみたら充分すぎるほど凄いです。お芋は土から掘り出して、周りの土をペッペッと軽く落としてお口にインする主義なのですよ、わたし。ちょっと土がジャリジャリしますけど、食欲のほうが優先ですよね。
「ん……興味がないならいいけど。でも一応、伝えておいた方がいいかな」
レナードはそういうと、わたしに事情を説明しはじめた。そんなの本当にいいのに、とは思ったけれど、レナードは話始めてしまったので、わたしは聞き役を務めた。だいたいの話をまとめるとこうだ。レナードは第一王子、王さまの最初の男の子として生まれた。だけど側妃の子どもだから、王位継承権は次に生まれた第二王子のほうが上。その後、男の子だけでなく女の子も王妃や愛妾など様々なところで生まれて、レナードの兄弟姉妹はたくさんいるらしい。王妃さまのところには、第二王子以外の男の子はいなくて、ほかはみんな女の子。でも四人くらい子どもがいる。他にも兄弟姉妹がたくさんいるから、レナードは騎士団に所属してヒャッホーしていた。だけどヒャッホーしすぎて功績をあげまくったのが悪かった。王位を狙っていると思われて、レナードは命を狙われてしまったのだ。
「黒幕が分からないと手の打ちようがないから、僕はしばらく身を隠しておいたほうがいい。それには、この場所がうってつけなんだよ」
「そうなんだ」
わたしはレナードの説明にウンウンとうなずいた。もちろん半分くらい分かってない。半分くらい分かっているかどうかも怪しい。でもレナードがココにいたほうがいいと思うなら、そのままいたらいいと思うの。一緒に生活すると楽しいし。なによりも、レナードがいると、食生活の充実が半端ない。
「隠れているだけだと問題解決できないから、探りをいれるために味方と連絡をとるよ?」
「それがよければ、そうすれば?」
「そうすると連絡のために、君の知らない人がココに来たりするけど。大丈夫?」
「? いいよ?」
わたしの返事に、なぜかレナードが驚いている。
「こんなところで暮らしているから、てっきり訳アリなんだと……」
いえいえ、訳アリなのはレナードだけです。わたしは訳アリではありませんよ? たぬきなだけです。




