第4話 たぬきはとっても楽しいです
わたしが拾ってきた人間は、この国、オーリン王国の第一王子レナードさまだそうです。第一王子ですが、側妃の息子だそうで王位は第二王子が継ぐ予定となっていて、レナードさまは騎士団に所属しているのだそうですよ。騎士ですよ、騎士。馬に乗ったり、剣を振り回したりする、あの騎士です。カッコいいですね。
わたしはたぬきなのでレナードの話は半分くらいしか分かりませんけど。あ、レナード呼びなのは本人からの希望です。わたしは恩人なので『さま』は必要ないそうですよ。呼び捨てにしているところを他の人間に聞かれたら、わたしは切られてしまいそうですが、ここには他の人間がいないからオッケーオッケー。気楽にいきましょう。
「アディ。それにしてもココは酷いな。少し手を入れてもいいか?」
「はい、どうぞ」
レナードは礼儀正しくわたしに許可を得てから、小屋を片付け始めました。わたしは片付けてくれるなら何でもいいんですけど、レナードは固い性格のようです。なにせ王子さまですからね。……いや、だから王子さまってナニ? いまひとつ事態を理解できませんが、わたしが理解していようといまいと時間は勝手にながれていって、レナードは小屋を綺麗にしてくれちゃっていますからね。大丈夫です。……え、何が大丈夫? 何が、でしたっけ? たぬきが混乱している間に、いい匂いがしてきましたよ。レナードは小屋を片付けて、掃除をして、料理までしてくれちゃっています。仕事が早いですね。
「勝手に料理をしてみたが、食べるかい?」
「はい。食べてみます」
わたしは椅子に座り、テーブルに置かれた料理を見ました。湯気が立っていますよ、湯気。凄いですね。
「僕は騎士団に所属しているから、王族といっても生きていく上で必要なことは一通りできるのだよ。だからそんな不思議そうな顔でシチューを見つめないでくれないかな。毒は入ってないし、なんとか食べられる味だとは思うよ」
「はい」
そうか。これはシチューという食べ物なのですか。わたしはスプーンを使い、レナードが食べる所を観察しつつ見様見真似でシチューを口に運びます。
「おいしい」
「それはよかった」
わたしが褒めると、レナードの顔がパァァァァァッと明るくなりました。まぶしい。
「それでだね、アディ。あの……お世話になりっぱなしで悪いのだけれど、しばらく僕をここに置いてくれないだろうか?」
「いいですよぉ~」
こうしてレナードは、わたしの生活のなかに入り込んできました。拾ってきて一緒にいるようになるって、レナードと魔法の杖は同じですね。魔法の杖との出会いをレナードに話したら驚かれてしまいましたが、両親にレナードとの出会いを話したら同じくらい驚かれると思うのですよ。多分。……ん~。でもレナードはお掃除してくれるし、料理作ってくれるし、屋根も直してくれたので、一緒に暮らすのは大歓迎。レナードとの暮らしは、たぬきはとっても楽しいです。




