46話 天長節の配信スタート~世界はかくして塗り替わる~
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1928年4月29日午後19時。
被服廠跡。
天長節の浮ついた空気から一変して、そこには異様な空気が漂っていた。
「あれ?なんか、人がいっぱいいない…?」
志乃は人払いをするとか何とか言っていたはずだ。なのにその場にはそれなりの数の人がいる。
しかも、心なしか、みんな私たちの方をじっと見つめている気がするんですけど?
え、これまずくない?私たちの正体とかばれちゃったら、いろんな意味でジエンドなんですけど?!
「心配には及びませんよ。皆組織の人間です」
後ろからそう声がした。振り返ると、志乃が闇夜から現れる。
ただし、いつもの着物姿ではない。
ゲームとかアニメに出てくる和風の女神様がよくしているような恰好っていえば伝わるかな。額の上になんか金色の大きめなかんざしみたいなのをつけ、平安貴族みたいな純白の上着と袴。はいている靴までなんか特別っぽいね。
何というか、ザ・神職って感じの格好だ。
実はこれ、打ち合わせの通りだったりする。
志乃には配信で、現地の霊能力者役で出てきてもらうからね。嫌がる志乃にごり押しをして半ば無理やりこの格好をしてもらっている。
だからこれはいいんだけど
「こんなに組織の方が来ているなんて聞いていなくってよ。この機に乗じて、陽菜さんに手を出そうというのではないのでしょうね」
冴子さんが半身で私を隠すようにして前にでる。
「ご安心ください。むしろ、そうならないための人員とお考えください」
「…どういうことですか?」
「この度の出現やマレビト様の目覚ましい能力の発露により、貴女様を研究会にお迎えしたいと言う声が増えました。彼らが暴走しないよう、奥様の派閥の者を現場に配置しているのです」
うげ…。勘弁してよ。
せっかく亡者対策がここまで何とか進められてきたのに、それが終わったら組織を気にしなきゃいけないとかやめてほしい。
しかし、ふじは、想像以上にきっちり約束を守りに来てくれるね。まさか彼らに守られる状態になるとは思っていなかった。
それでも彼らの視線はどこか異様な熱を帯びていて、これを延々と浴びつづけるのは結構つらいね。さっさとダンジョン張ってしまおっと。
私は結界の状態を確認すると、早々にダンジョン生成を始めた。
うー、なんか私の歩いた後を組織の連中がぞろぞろついて回ってくるのやめてくんないかね。
いや、気にしちゃだめだ。とにかく集中集中。
ギャラリーに囲まれた中のダンジョン生成はやりにくいの一言だったが、昨日のリハーサルのおかげでかイメージを固めることにはあまり苦労はしなかった。
「――よし、ダンジョン生成!」
その一言で、ダンジョンの空間を閉じ、生成を完了する。
とたん、ダンジョンの中に残るのは、私、冴子さん、亮介と志乃。あとは配信で少し役割のある志乃直属の部下が数人だけになった。
うわ、かすかにダンジョンの外で組織の連中がどよめいている声が聞こえてくるよ…。なんだかひたすら興奮気味なのが、キモくて嫌。
ええい、気にするな私!一旦、目の前のことに集中だ。
「さて皆さん!いよいよ、19時半から本番開始です!各々準備をお願いします!」
ぐずぐずしていると1928年側で実際に亡者が出かねない。そうなる前に、さっさと配信を始めないといけない。
志乃たちと軽く事前打ち合わせを済ますと私の方でも準備を始める。
まずはスマホにジンバルとLEDライトをつける。これは、現場に来る前に隠れ家である日本橋の地下土蔵に寄ってもらって回収したものである。
これがなきゃ心霊スポット生配信は始まんないよね。うー、この感触、めっちゃ懐かしい!
あと今回はBGMを使うために専用のアプリも準備する。これまであんまり使わなかったけど、今回は演出が大事だからね。
目指すのは「いかにもヤラセ」って感じの演出だ。
今までそうならないよう気を付けていたこれらの地雷を今回は盛大に踏み抜いていこうじゃないか。
*
「この世界は一つじゃない――はい、こんばんわ。IPOのヨルです!みなさんお久しぶりです!前のチャンネルの後ちゃんと近況報告できてなくてごめんね!あのあと、なんとかこの時代に馴染んで生活することができてます!みんな、色々と助けてくれてありがとうねー」
撮影をしながら実況をするこの感覚、懐かしいな。ワッとコメント欄が湧き上がる。
『きたぁぁぁぉ!!!
『情報物理学の時間だぁ!!』
『マジでやってる。世間を騒がせてる自覚あんのかね」
『お嬢様!お嬢様!』
『ヨル!お前が東京駅近くでバイトしてたことはわかってるぞ!』
『あれ?BGW?演出変えたのかな?』
『いいから周りの風景うつして!』
コメントはカオスの一言。昔はどこか内輪の雰囲気があったが、今ではいろんな視聴者が混ざり合ってそれぞれがめいめいにわめきあっている。
それだけ私のコンテンツに注目が集まってるってことだよね。俄然やる気がわいてくる。
「さて!これまで当チャンネルでは、私が迷い込んでしまったここが本当に1928年の世界なのか、当時の新聞記事を使って検証してきました。その結果、新聞記事に書かれているとおりの出来事がちゃんと起きるみたいですねー。でも、このままだとただの歴史検証チャンネルっぽくなっちゃいますよね。なので今回は、本チャンネルの趣旨である情報物理学に立ち返りたいと思います!」
こうやって、今からやるのはオカルトチャンネルなんだよー、ということを明言。それにより、これをタイムトラベルの証明動画だと真に受けてる一部の視聴者をふるいにかけるのが狙いだ。
「予告していた通り、今日の検証記事はこちら!1928年5月1日の辻売新聞の朝刊です。こちらの記事によると、1928年4月29日の天長節、つまり天皇の誕生日のことですね。この時代の天皇誕生日って祝宴ムード満載で、街のそこらで万歳三唱とかしているんですが、それに水を差すように震災で死んだ人々の亡霊が目撃されたというのです。その現場がこちら!!現代でいうと墨田区の横網町公園、この当時だと本所被服廠跡地です!」
私はあえて安っぽい効果音を鳴らして辺りの光景を映し出した。
下手するとこのタイミングで亡者が出てくるかもしれないからね。なんせ視聴者の無意識の期待がそのまま実現するのが情報物理学だもん。
でも、ストーリーの都合上、今この瞬間は亡者にはまだ出てほしくない。
今後のためにも、視聴者には亡者が出るのはもっと別の場所だと思い込んでもらう必要があるからね。
そのために、BGMもちょっと明るめの感じにして、語りもテンション上げて、今だけ帝都ツアーの雰囲気でのお届けだ。視聴者にはまずは1928年の後継に集中してもらう。
「わ!見てください!これが1928年の横網町公園なんですね!ほら、今建築中の建物、見えますか?あそこに建てられているのは、現代の慰霊堂です!去年の2月から工事が始まって完成するのが来年の1930年。出来上がる予定の建物のイメージはこちら。どことなく仏教式を思わせつつ宗教チャンポンなきれいな建物ですが、それが1928年だとこんな感じです」
建設中の建物を一言で言うと鉄と木材による骨組み的なシンフォニーだ。
まず縦横無尽に鉄筋的なものが張り巡らされている。で、その鉄骨の周りを木製の枠のようなものが取り囲んでいるんだよね。
たぶん、あれ、中にコンクリを入れるんだと思う。いくつか、そうやって作られたと思しきむき出し感満点のコンクリの壁があるからね。
「今の状態見てると、どんな無骨な建物になるのかって不安になりますけど、ここからしっかり時間をかけて、今のきれいな建物になっていくんですねー。
で、こちらもご覧ください。これは今はもうない建物で、関東大震災で亡くなった人たちのお骨を一時的に預かっている納骨堂です」
画面をパンして木造のいかにも和風の寺院って感じの建物を映し出す。
「立派な建物をちゃんと建てているんですよね。ここには今でも被災者の遺族がお骨を受け取りに来たりお祈りして帰るそうです。でもこれは仮の納骨堂で、慰霊堂ができたらお骨はそちらに納め直されたそうです」
私は、ホラーの雰囲気が出ないよう、少し早口気味に解説を続ける。
動画が始まった以上、視聴者の意識はこの場所に集中する。新聞に書かれたことが実現すると信じる人たちによっていつおかしなものが飛び出してもおかしくないんだ。
早くフェーズを次に進める必要がある。
そう。やらせの開始だ。
「しかし、こうしてみていても、亡霊の姿は出てきませんね。新聞に書かれていたことと言っても、流石に亡霊が出るなんてガセだったのでしょうか…?おや?あそこに誰かいますよ?少し話しかけてみましょうか」
そう言って私が駆け寄る先にいるのは、派手な神職の格好をした志乃と、いつもの通りのパナマ帽に羽織に着物の男、亮介だ。
もちろん、打ち合わせ済みでそこにあらかじめ待機してもらっていたんだけどね。
「夜分にすみません。こんな時間にこんな場所で何をしているのですか?」
そう問いかける私に志乃は少し引き攣った表情でこたえる。
「わ、私たちはこの地に霊的な歪みが溜まっているのをみて、そ、その対処に参りました」
志乃はなれない格好と決められたセリフというのに戸惑っているのか、若干棒読み的にそう答える。
うん。上出来上出来。やらせ感が出てくれるのだから、むしろこういう反応を期待していたんだよ。
案の定、コメント欄は荒れ始めている。
『てんぱりすぎwwwもう少し演技できるやつ連れてこい』
『なんか、明らかに演出が変わってるんだけど。どうしちゃったんだ?』
『この女、前にヨルを捕まえようとしていなかったっけ?』
『だから、そういう設定ってことだろ?CGなんだっていい加減認めろって』
こういうコメントはYoutuberとして悔しい気持ちはあるけど、これなら亡者がほんとに出てくるって思いこむ人はかなり減りそうだ。よし、亮介、さらに追い打ちだ!
「僕はここで発生する現象の観測に来たんだ。おっと、詳しい話の前に自己紹介をしておこうかな。――やあ、未来の視聴者諸君。僕は遠藤亮介――情報物理学の提唱者だよ。よおく覚えておいてくれたまえ」
お?あれ?いかがわしさは満点だけど、自己紹介する流れはなかったぞ?それに、情報物理学の提唱者ってなんだよ。それ私だから!打ち合わせでは、現地の学者程度の予定だったのに。
「あ、あの、情報物理学は当チャンネルの――」
「ああ、奇遇にも記者君もその言葉を使っているようだね。だが、まるでその内容が分かっていない。だから、おおかた未来の新聞記事かなんかで、こんな場所に亡霊が出てくるなんて記事を見て、この場所に亡霊が出るなんて妄想しているのだろう?」
しかし、亮介は自分の役割を無視しきるつもりはないらしい。台本は完無視でも、大目的である『現実の帝都には亡者なんて出ない』という方向性は外さないようだ。いったん乗るしかなさそうかな。
「よくわかりましたね。その通りです。しかし、違うというのですか?確かに未来の新聞ではここで亡霊の行列を見たと記されています」
「それを否定はしないさ。それを目撃をした人はいるのだろう。だが、それは、僕たちが住む帝都そのものではない。もう一つ、別の世界がある」
「もう一つ別の世界?」
「そう。――この世界は一つじゃない」
おお。何と、うちのチャンネルのきめ文句を使ってくるとは。こいつにこの言葉教えてたっけ?
まあ、いかにもインチキ臭さ満載だし私は止めずに続けさせる。
「さて、まずは大前提のおさらいから行こうか。情報物理学は、情報こそが世界の根源であるという仮説に基づく。要するに、世界を作り出しているのは、情報ということだ。だからこそ、人々が思い描く情報も現実になりえるわけだね。そしてその現実になるか否かは、情報の「質」と「量」で決定される」
「は、はあ。なんか小難しい感じで言ってますが、要はそういうことですね」
「しかし、ここで無視してはいけない問題がある。ならば昔の人々が信じた理論はなぜ現実にならなかったかだ。例えば天動説。この世界の住人のほとんどが、地球は平らであり、世界の中心で、動いているのは天であると考えていた。なのに現実は違った。これはどうしてこうなる?人々が信じていた情報はどこに行ったんだ?」
「え?え?」
まじで小難しいこと言い始めたぞこいつ。
そういうことを言いだすと視聴者は離れていっちゃうよ?今の段階でチャンネルから抜け出されると、その後の視聴者の考えをコントロールできなくなる。チャンネルを見続けてもらいつつ、これが現実ではなくエンタメなんだと思ってもらうことこそが私たちのゴールだ。途中離脱は困る。
「あ、あのー、いきなり難しい話をされると、視聴者の皆さんは置いてけぼりになるのですが…」
「なあに、簡単な話だから安心しなさい。情報物理学により、情報があればそれは現実になる。しかしこの世界の現実はそうではない。ならば考えられるのは一つ。――それが現実となっている世界は別にある、ということだ」
そういうと、亮介はおもむろに懐からなんかの瓶のようなものを取り出してきた。
「イメージがわきやすいように、この瓶で説明しよう。これは泥水を放置してそのまま1日間置いておいたものだ。ほら、下の方に土がいくつもの層になってたまっているだろう。細かい粒子は上の方に、大きな粒子は下の方にたまっている」
「は、はあ、確かに小学校の時にこんな実験しましたね」
「この粒の一つ一つが情報だと思ってみなさい。情報は同じような質と量を持つもの同士が集まって層を作っている。より重要で確かな情報は下に、浮ついた情報は上に、という感じでね。この層こそが、情報が作り上げる『現実』だ。つまり情報物理学では、この世界は多層世界により成り立っているとの仮説が成り立つ」
そこで亮介はにやりと笑った。
「だからこそ――その証明と行こうじゃないか。なあ、そこの霊能力者さん」
「わ、私ですか?」
急に話を振られた志乃は明らかに戸惑っていた。…亮介のやつ、せめて志乃との打ち合わせくらいしとけよ。
「そうだとも。亡者たちが過去の被災者に対して僕たちが抱く無念や疚しさ、恐れなんていう、あやふやな情報で生み出されるのならば、彼らの存在はこの世界とは別の、いわば下位世界に吹き溜まっている。それが、この天長節の日、普段より多くの人がそれを思い浮かべることで情報の重さが増し、この世界に紛れ込んでしまっているというならば、向こうの世界に行ってその根源を断てばいい―――そうだったろう?」
「そ、そうです。その通りです」
志乃はそういわれて、自身に求められていることを理解したのだろう。
ここでようやく、台本が元の内容に戻ってきたからね。
「わ、私は霊力をつかって彼岸の世界にわたることができます。そちらにわたって歪みの原因を祓イに参りましょう」
志乃は、お祓いでつかう紙が細長くついたアレをばっさばっさと振り回すと、私が考えた出鱈目な祝詞を唱え始める。
よし。ここからが正念場。
この映像が『デタラメ』だと思わせるための、外連味たっぷりの演出の見せ所だ。事前の打ち合わせでも念入りに確認した部分である。
『しかし、どうやって、配信現場が異界だと演出するつもりだい?作戦では、初めから君が作ったダンジョンの中で配信を始めるのだろう?』
『たしかにそうね。万が一でも亡者がわたくしたちの世界に湧かないよう備えをするのは大切だけれども、初めからこの場所で撮影を始めて異世界であると未来の人たちにわかってもらえるかしら?』
『ふっふっふ。そこは任せて。私に考えがあるから――志乃さん、あなたには異世界に行くための適当な呪文を唱える役をやってもらいます。その演出に合わせて、私がダンジョンの中を変化させます』
『…適当に、というのが不服ではありますが、真実味を下げるためというのならばやむを得ないでしょう。しかし、ダンジョンの中を変化させるとは?』
『もしかして、貴女が土蔵の扉を消したようなことをやってみるつもりなの?』
『そう!まさにそれ!余計なものを消していくんだよ。期待してて―――いかにも漫画やアニメって感じの光景を作ってみせるからさ』
打ち合わせの通りに、私は撮影をつ続けながらイメージする。
ちまちまとものを消していっただけじゃ演出としては不足だろう。いかにも世界が塗り替わる。そういうイメージのために、私はあるものを消していった。
「…な!なんと、こう来たか…!」
亮介が驚きの声を上げる。志乃も目を見開きつつ、何とか祝詞もどきを続けてくれた。
亮介の目線の先、さっきまで見えていた公園の外に映る帝都の風景―――それがごっそりと消えて黒く塗りつぶされている。
そう。私は、『ダンジョンの外の風景』を消してみせたのだ。
私がダンジョンを作るとき、ダンジョンの端っこは透明の壁になってその先の様子が見えているのが通常だった。
しかし、ここはダンジョン――いわば独立した別世界なんだ。壁の外なんてものは、本来ない。私がつい、イメージしてしまっているから映っているだけだ。
だからそれを消す。
イメージするのは、漫画やアニメでおなじみの、あのご都合結界の黒い壁だ。真っ黒の壁で囲まれた隔離世界。どんなに派手な戦闘をしていても、外の世界には影響を与えないっていう、あれね。
昨日、冴子さんのおけいこの時間の実験でうまくいくか試してみたらちょうどいい感じにできたので、それを採用したというわけだ。
亮介や志乃にとって、それは初めて見る異様な世界だろう。
でも視聴者は知っている。そういう世界はファンタジーものでよく出てくるってことを。
だからこそ、この策を使った。
こうすれば、今までどんなに新聞通りの出来事が起きると言ってきたからって、それが本当の話だなんて思いはしないだろう!
このチャンネルは、純粋なエンターテイメントとだという、最高の演出になるはずだ。
『うおおお、すげい演出!演出凝ってる!』
『キャストは微妙なのに映像だけはほんと一級だよな。まじリアル』
『興覚めの一言。こういうのはやらないチャンネルだと信じてたのに』
『いいからお嬢様!お嬢様を!』
よしよしよし!狙い通りの反応いただきました!
この調子なら、もうこの世界に亡者がわいて出るなんて、心配しなくてよさそうだね。
あとは、亡者に扮した志乃の手下たちを冴子さんがやっつける映像を撮って締め!万が一本物がちらほら沸いた場合には、それに交じって退治してもらったら、これで今日のチャンネルは――
そんなことを考えていた時
空間が異様なまでにゆがむのが分かった。
「い、いけません!奴らが!奴らがやってきます!」
その異変の意味を瞬時に悟ったのは志乃だった。
え?え?ここまで演出したのに、亡者が出てくるの?
私はマイクを一瞬切ると、慌てて亮介に話しかけた。
「ど、どういうことですか、これ!」
「は、ははは、これは、ちょっと、やりすたかもしれないなぁ」
「や、やりすぎ?え、でも、これだけやったら、新聞の書いてある通り本当に亡者がわくなんて誰も考えませんよね?」
「考えないだろうね」
「なら!」
「その代わりに視聴者は、こう思ったんんじゃないか?新聞の記事とかは放っておいて、『この展開ならば、次の展開で亡者がたらふく出てくるに違いない』って」
………はい?
え?そんなのもあり?視聴者がリアルじゃないと思ってても、それが現実になるの???
「だからやりすぎたんだよ。君はそういうのがわいてもおかしくない空間を作り出してしまったのだろう?そして視聴者は、ここはそういう空間だと認識した。
思うに、君の世界の娯楽の内容か何かになぞらえて。そういう空間では、普通、何が起こるんだい?」
「え?そりゃもちろん、派手なバトルが―――」
その瞬間、私は自分の失策を理解した。
しかし時すでに遅し。
次の瞬間、目の前におびただしい数の亡者が現れた。
彼らの視線は、まるでモンスターのようなギラついた光を帯びて、それがすべて私たちに向けられていた。
お読みいただきありがとうございました。
いよいよ、天長節の配信本番です。
この話では、情報物理学における重要な法則が一つ明らかにされます。それぞれの情報が似通った重さというか密度を持ったもの同士互いに集まりあって世界を作り出すという、多層世界構造です。
この話はまた出てきますので、いまはふうんっていう程度にとらえておいてください。
さて、そんな理論全開でスタートした配信ですが、いきなり思い通りにいかない展開が待っています。
面白かったと思っていただけましたら、ブックマークや下部の【☆☆☆☆☆】(評価)で応援いただけると、とても嬉しいです!




