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43話 世界を騙すフェイクニュース配信、準備完了

毎週火金の19時に定時更新中!

 次の日、私は例によって神田明神へのお使いを命じられた。あんまり日中のお使いが続くようだとまたおスズあたりに疎まれて遠藤家内の立場が悪くなりかねないが、こればかりは仕方ない。

 なんせ本番の4月29日は明後日なんだ。それまでにできる限りの検証を進めていかなければいけない。

 なので外出分、戻ってからの仕事を積極的にこなすことでカバーしよう。


 ということで、まずは神田明神でダンジョン生成の検証だ。

 まずは社務所内で土蔵と同様にダンジョンが作れるかを実験。これは見事成功。室内はもちろん、建物全体のおおよそのイメージさえあれば社務所全体も難なく作り出せた。

 

「ま、ここまではいいとして、本番はここからだよね」


 続けてやるのは、建物の「外」の生成。

 社務所から2メートルくらいのエリア全体をダンジョン化してみる。

 手順としてはこうだ。

 まず、ダンジョンとして生成する範囲がわかるよう、建物を囲うように土の上に線を引く。

 じゃないとイメージができないからね。

 で、一応全体をぐるっと回ってイメージを作っておく。

 その上で、線の上がちょうど境界になるようダンジョンを作り出す。


「生成!」


 もはやお馴染みの掛け声をかけて数秒。

 実験に付き合っている志乃がポツリと言う。


「変化があったようには見えませんね」

「…少なくとも、ダンジョンの外から見えちゃってるのは確かですね」


 志乃が今立っているのは線を引いた領域の外側だ。そこから見えると言うことは、少なくとも線を引いた程度ではダンジョンがこの世界から独立できていないのは確かだ。


「生成は出来ているのですね?」

「感触的にはちゃんと成功してますよ。見てもわかんないですけど」


 そういうと、志乃は線の内側に入り込んでくると、その中の地面に軽く線を引いた。


「ダンジョンを一度お消しください」


 言われるまま消すと、瞬間、地面に引かれている線が忽然と消えた。


「これが消えると言うことは、私がつけた跡はダンジョン側のものでこちらの世界のものでないと言えそうですね」


 お、なるほど。考えたな。ダンジョンの中でのことはこの世界に影響を与えない以上、この検証方法で問題なさそうだね。


「では、建物の周りに結界をはりますので少々お待ちください」


 志乃はそう言うと、竹とか縄とかを持ち寄ってきて、建物を囲い始める。四方に竹を立ててその間になんか神社っぽい紙のついた縄でぐるりと取り囲んでいく。あれ、しめ縄ってことなのかな?

 志乃は今までどちらかと言うと物騒な印象しかなかったのでこんな神聖な儀式的なものを準備している姿はなんか意外だった。

 だからつい声をかけてしまった。


「…あんた、こういうのもできるんですね。てっきり組織の坊主的な奴らに任せるのかと思ってました」

「……生まれは卑しいですがこれでも神田明神の関係者ですよ。それに私は奥様に長年仕えてきたのですから、結界の真似事程度であればなんでもありません」


 志乃はそっけなく答えるだけで作業の手を緩めもしない。神妙な態度を取ってはいるが、どこか距離を置こうとする空気をなんとなく感じる。

 ま、私と志乃が仲良しこよしなんて、あり得ないんだけどね。今回もただ利害の一致による共闘なだけだし。

 こいつ、ふじが態度を変えたら速攻で裏切ってくるんだろうなぁ。

 意外な一面を見た程度で気を緩めちゃダメだな。

 

 そんなことを思っているうちに志乃の作業は終わったようだ。志乃は結界の外側に出ると声をかけた。


「それではもう一度。…これでしくじれば元の木阿弥です。心してくださいませ」


 言われなくてもわかってらい。私はじっと結界を見つめ、精神を研ぎ澄ます。

 思い浮かべるのは初めて亡者に襲われた時にぶつかった地下鉄内の見えない壁。何もないように見えてもそこに明確に存在する断絶のイメージ。


「生成!」


 すると私のうちから溢れ出る何かが、しめ縄のところで一瞬淀むように押し留められるのを感じた。


「ぬ、お、りゃー!」


 その見えない何かに沿うようにして、溢れ出たものを上の方に持ち上げる。それがちょうど建物のてっぺんでぶつかり合うようにイメージしてーー


「…お見事」


 志乃がそうポツリと呟くことで、私は自分の成功を実感した。


「いよおおおし!!空間ごとダンジョン化、成!功!」


 これで作戦の絶対条件はクリアだ。

 跡はこれを広げていくだけ!

 やるぞー!!




*




 その後私はひたすらダンジョンを広げる練習を繰り返した。

 目標はサッカーコート三面分。そこまではいかなくとも、最低限半分くらいまでは覆いたいところだ。


「神田明神の敷地は三千坪。そこまで広げられれば、広さとしては十分でしょう」


 坪って言われても正直ピンとこない。

 チョチョイと調べたらどうやらサッカーコート1.8面分くらいらしい。

 お、公園の半分程度。それなら目安としてちょうどいいね。


 サクッとクリアしてしまいますか。



 と、意気込んだわけですが…。

 結果結構苦戦しました。


 生成による負荷は広くなったところで別に大したことはないんだけどね。コンビニ作るより楽。

 でもイメージがちゃんと出来ないんだよね。

 広くなればなるほど端っこのところがいい加減になってダンジョンがほころびる。途端にモロ見えになるわけです。


 しかも、広くなるにつれ、しめ縄が張れなくなってくるんだよね。


「これだけ広いと流石に縄が撓んでしまいますか…。仕方ありません。別の方式に切り替えましょう」


 志乃はそういうと、さっきの竹にしめ縄をぐるぐると巻き付けると、それを敷地の四隅に立てた。

 さらに、竹でできた小さな鳥居のようなものを用意するとそれを敷地の境界線に立てる。


「これは鳥居の見立てです。これをあなたの作るダンジョンの入り口だと思ってください。この鳥居の内側が結界です」


 なるほど。扉がない空間において無理やり扉をイメージすることでダンジョン領域をイメージするわけね。


「さらに、境界線の合間合間に盛り塩を用意しましょう。それを結ぶようにしてダンジョンを生成するよう心がけてください」


 そう言って塩の山を作ってくれたわけなんだけど、これでイメージを作るのがまー難しい。

 盛り塩を結ぶ線と線がきちんと繋がらなかったり歪んだりするとすぐにダンジョンはほころびる。

 これを広げていくと、端っこまで届かないところも出てくる始末で、なかなか安定してダンジョンを作ることができなかった。


 最後は力技。

 隅々まで意識ができるよう、私が敷地の境界線を走り回って、自分が見えないしめ縄を持って張り巡らせるイメージで何周も何周もさせられた。冴子さんのお迎えの時間ギリギリというところでようやく敷地丸ごとダンジョンを作れたのだった。

 まさかここまで神社の中走り回らされるとは…。

 修行の名目がなかったらすっかりおかしな女になるところだったよ。


 ひー、つら…。




*




「それは…、大変だったのね。それでも、神田明神全体を異界として作り出せたのは流石だわ」


 夜、対策会議の報告で、冴子さんはそういって私を励ましてくれた。

 ううう。癒されるぅ…。今日の実験のラスらへんでは、志乃が絶妙にいやなプレッシャーかけ続けてきてたからほんと救われる思いだよ。


「賭けだったが何とかものになったか。ならば、君のダンジョンに亡者を閉じ込めることを前提にして当日の計画を組んでいこうか」


 亮介は偉そうにそういうと、自分の手帳を広げた。


「4月29日、本所被服廠跡地、今は仮納骨堂が立てられすぐ近くで慰霊堂の建築が進んでいるこの地に亡者が現れると記事にはある。自国の記載はないが、今まで実体のある亡者が出てきたのはいずれも21時前後。今回もおそらくはそれくらいの時間になるのではないかと思われる」

「しかし、なんでそんな時間なんですかね?お化けが出るならもっと深夜とかの方がそれっぽいのに」

「おそらく、君の亡者が現れる配信の時間の影響だろうね。どちらも大体その時間だったんじゃないかい?」


 いわれるとその通り。だいたい21時とか22時くらいだった。

 視聴者は亡者のイメージが強く残っているから、それに引きずられていると言わけね。


「ただし、もちろんそれよりも早まることも可能性はあるし、何よりダンジョン生成に時間がかかる可能性もある。遅くとも19時には君たちには現地に来てもらいたいところだが…」

「19時…。それは少しつらいわね…」

「たしかに。ちょうど遠藤家では晩御飯の片づけが終わったあたり?私は完全仕事時間だし、冴子さんもさすがにこの時間に家を出ようとしたら止められそうだね」


 そう悩む私たちを前に、志乃はあっさりと行った。


「それは私共の方で解決します。奥様に考えがあるようで、静江さんにうまく働きかけましょう」


 うわ。出た、黒幕ふじの鶴の一声。

 しかし、そう何回も連発して大丈夫なもんかね?あの静江さんが、日中はともかく、冴子さんが家にいる時間帯に私を外にお使いに出すとも思えないし、冴子さんの外出なんて死んでも許さなそうなんだけどなあ。

 そんな私の懸念がわかったのだろう、志乃は私の方を見てふっと笑うと。


「大丈夫ですよ。静江さんとの付き合いは貴女よりよほど長いのです。些事は私共に任せて、マレビト様はその後のことをお考え下さい。

 そもそも、ダンジョンに亡者たちを閉じ込めたところで、新聞記事の内容が現実化するなどという馬鹿げた現象は解決するわけではないのです。どうやってそれを収めるつもりなのかの方が、よほど気になります」


 言下に、お前の策は大丈夫なのかと聞いてくる志乃。

 ふんだ。こっちだって抜かりないよ。

 だてに配信者やってるわけじゃない。視聴者の反応を計算することに関してはプロなんだ。


「配信の筋書きはもう用意してますよ」


 私は昨日のうちに神田明神で書き込んだ簡単な脚本を広げてみせた。

 

「情報物理学についてのとんちき解説を亮介さんに、現地協力員の怪しい術師を志乃さんに、そして満を持して登場するヒロイン役が、もちろん冴子さん!私はナレーターを務めながらイメージの刷り込みをやっていきます」

「ほう?どんな?」

「亡者たちが出没するのは、帝都そのものではない。帝都と重なり合う異世界の、ダンジョンだって」


 亡者のなにが問題かって、彼らがこの時代に「実在する存在として」出現していることだ。

 だからこそ、誰もが見えるような状態になってしまって、下手すれば実際の被害が発生する状態になってしまっている。


 しかし。その発生場所が、「帝都じゃなかったとしたら?」

 例えば、誰も触れることのない、ダンジョンの中。

 これなら、この時代の人はダンジョンの中になんて入れないわけだし、被害も目撃も発生しようがない。


 それなら仮に今後も亡者が発生し続けるとしても、私たちはもぐらたたきのように亡者に対処していかなくたって、帝都は安泰というわけだ。


「もちろん、リアルかつインチキ臭く配信する方針も変わりません。それによって、多くの人は今までの配信はでたらめだと思ってくれるでしょうから、それだけで亡者の発生は抑えられるはずです。今言ったのは、それでも信じる人たち対策って感じですね」

「――ふうむ。なるほど。『新聞記事通りに亡者が発生する』という思い込みにルールを一つ足すわけだね。そして、僕はそれに合うような解説をして見せればいいと。

 ――フフフフフ。素晴らしい、任せてもらおうじゃないか」

「話が早くて助かります。志乃さんには、そのダンジョンに入り込める専門家的なポジションを演じてもらうことになります」

「…なかなか難しいですね。どのようなふるまいをすればいいかイメージが付きませんが」

「大丈夫です。セリフはこっちで考えます。私が考えた通りのことを言ってくれるだけで、インチキ術師っぽくなりますよ!」

「お、恐れ入ります」


 志乃は少し顔をひくつかせたが、反対の声は挙げなかった。

 事ここに至って、私の案以外に策がないのだろうね。へへーん。ここで、恥ずかしいセリフいっぱい言わせてこれまでの留飲下げてやろっと。


「わたくしからもいいかしら」


 そこで冴子さんが声を上げた。


「亡者を閉じ込めた後、彼らを祓うところまで未来の人たちに見てもらう必要があるのよね?」

「うん。ずっと出っ放しってのは具合が悪いからね。ちゃんと祓えば消えるんだって思ってもらうためにも、動画の取れ高的にも、冴子さんのアクションシーンは欲しいところかな」

「それならば、そのための武器をどうすればいいかしら。――わたくしの小太刀は、お母様に取り上げられてしまっているのよね…」

「あ…」


 そういえばそうだったね。

 うげー。なんでこう次から次と厄介な課題が出てくるかね。


「…代わりのものを私共の方で用意いたしましょうか?」

「わたくしの感覚なのだけど、それでは難しいでしょうね。――わたくしがあの亡者たちを祓えたのはあの小太刀によるところが大きいと思っているの。理由を聞かれると説明するのが難しいのだけれど…」

「いえ、お嬢様がそうおっしゃる以上、その直感は正しいのでしょう。……弱りましたね。流石に静江さんに小太刀をお嬢様に渡すよう説得するのは難しいです」


 志乃はそういって考え込んでいる。

 ふーむ。どうしたものかな。多分、動画のインパクト的に冴子さんが戦うシーンは絶対だと思うんだよね。そうじゃなきゃ、怪しげに解説をするだけのじみーな動画になっちゃう。

 私もちょっと考えようかな。


 要は静江さんに気づかれないように刀を取り返さなければいけないんだよね。

――ん?静江さんに気づかれないってことは


「ダンジョンでいけちゃんじゃん?」


 割とすんなり答えは出た。そうだよ。私この時代のものもダンジョンで作れるんじゃん。

 昨日なんてテンションだけで遠藤家丸ごとダンジョン化したわけだし。


 私はそう思って一度オフィスビルを消すと、


「生成」


 再度、遠藤家のダンジョン化を行った。


「ふむ?今度は僕と志乃くんも招待してくれた感じかな。しかし、こうしてみると、何一つ変わりがないように見えるね。そもそも、土蔵の外の空間ごと、ダンジョンになっているのかい?」

「はい。空間のダンジョン化は、さんざん練習しましたからね。結界の代わりに敷地のブロックを意識して作ってみたんですけど多分うまくいってます」

「ふむ。確かに、土地区画そのものがある意味で現代的な結界のようなものだからね」

「でも、この状態では、わたくしたち、土蔵に閉じ込められたまま、外に出られなくはなくって?」

「んー。そこはちょいと、考えていることがあってね」


 私は試しに土蔵の扉の前に立つと、目をつぶり、脳内のイメージを修正する。



 そこには、扉なんてないって。


 瞬間



「きゃ!」

「な、なんと!」

「まさか!扉が消えてしまいました…!」


 皆の驚き声で私の試みは成功したことを知る。 


「こ、これはもしかして」

「そうだよ、冴子さん。あの競馬場でやってみせた、そこにあるものを消去するイメージ。何でも経験しておくものだねー」

「で、でも、あの時は貴女にかなり負荷をかけていたじゃない。大丈夫なの?」

「ん。確かにちょっと頭が重くなっているかも。やっぱり現実と違う状態にすると負荷はかかるんだね。でも大丈夫。もともとダンジョン生成の負荷が未来の建物よりよっぽど軽いもん。これくらいへーきへーき」


 そう答える私に、冴子さんも志乃も、亮介までぽかんとした顔を浮かべている。


「……これが、マレビトの力ですか…」

「…つくづく、とんでもないな」


 そう凍り付く二人を放っておいて、私は冴子さんの手を取った。

 

「さ。行こうか、冴子さん。静江さんはどこに小太刀をしまい込んでいると思う?」

「――そうね。あまり時間をかけると貴女の負荷が増してしまうわ。二階の納戸に行きましょう。大切なものはきっとそこにしまっているはずよ」


 冴子さんは二人と違い、すっと切り替えて誰もいない遠藤家の中に入っていった。

 それでこそ冴子さん。私の大事な相棒だ。


 

 無人の遠藤家は不気味なほどに静まり返っていた。

 そして、真っ暗。この時代の暗闇って、本気で何も見えないんだよね。

 私たちはスマホであたりを照らしながらそのまま二階に上がる。


「納戸も鍵がかかっているのよ。……これもお願いできるかしら。この錠前の部分だけでいいわ」


 冴子さんはそういって納戸に取り付けられている無骨な南京錠を指示した。

 ちっちゃいのはありがたいな。私は、目をつぶってやはりイメージする。そんな南京錠で、私たちの行く手を阻めると思うなよ。ハイ消去。


「…む。ちっちゃいものでも、連続して使うと加速度的に頭が痛くなるね、これ」

「急いで探してしまいましょう。きっと、桐箪笥の中に入っていると思うわ。陽菜さんはそちらから探してもらえるかしら?」

「了解」


 私たちはそこから納戸の中で探し物を開始した。

 そこにあるのは、まさに遠藤家の宝物、って感じのものばっかりだ。見たこともないくらい高そうな着物とか、七色に輝く飾りつけのついた鏡台とか、なんだか古臭いかんじの帳面とか…。


「あ」


 桐箪笥を探している冴子さんがそういって声を上げた。


「何か見つかった?」

「……この振袖や化粧箱、茶道の道具まで…。おそらくだけれどわたくしの結婚のための結納品だわ。これほどいいものを用意してくれていたのね…」


 そうつぶやく冴子さんの瞳がわずかに揺れる。

 …冴子さんの結婚、かあ。もう準備しているんだね、そういうもの。

 きっと、内心複雑なんだろうな。自分が決めたわけでない生き方を強要され、戦う場を奪われることに憤っていた冴子さん。

 でも、その期待から、目を背けられないのも、冴子さんなんだ。


「――あったわ。わたくしの小太刀」


 冴子さんは、結納品があったという箪笥の中から、きれいな袋に包まれた細長いものを取り出した。

 冴子さんがするするとその袋を解いていくと、中から美しい拵えの小太刀が姿を現す。


「……大切にしまわれていたわ。お母様はきっと、わたくしが嫁に行くときに守り刀として返してくださるおつもりだったのね」


 冴子さんはそっと小太刀を抜いた。スマホのライトのもとで静かで艶やかな刃文がきらきらと光る。

 冴子さんはそれをしばらく見つめたのち、刃を鞘に戻し、刀を大切そうに胸に押し当てる。

 

「お母様。きっとわたくしは、遠藤家のためにも務めを果たしてみせます」


 誰にも聞かれずともそう誓う冴子さん。

 その瞳に浮かぶ強い光をみて、改めて理解する。

 大切な刀を取り上げられても。武道の時間を奪われても。

 やはり冴子さんにとって遠藤家はどこまでも大切なものなんだ。


――わかったよ。冴子さん


 冴子さんがそう誓うのならば、私も心に浮かんだちょっとした寂しさを呑み込もう。

 冴子さんが遠藤家を大切にしたいなら、それを守るのが、冴子さんの戦友としての役割だ


「頑張ろうね。冴子さん」

「もちろんよ。今度こそ、あの亡者たちを祓って見せるわ」


 私たちは互いにそう誓い合うと、一緒にうなずいた。




*




 これにて、段取りの打ち合わせは完了。

 あとは各々が自身の役割を果たすだけだ。



 私は、最後にもう一つだけ、私にしかできない大事な役割を実行する。

 配信の告知だ。


『皆さん、お待たせしました。IPOの活動再開です!

 今回のフィールドは本所の廃墟。明後日4月29日の昭和の日、関東大震災の亡霊たちが当時最大の被害の現場、横綱町公園付近に現れる?!

 新聞期の記載をもとに、その日その時間に生ライブ!歴史の真実を激写します!』


 各種SNSやコミュニティにばらまくと、お仕事完了。


 あとは明後日までこちらの時代でやるべきことをやるだけだ。


「見ててね。2028年。私たちのこの世界で、最高のショーを見せてあげるよ」

お読みいただきありがとうございました。

はい。ダンジョンハック能力の利用法でした。この時代のもの限定だったら、かなりやりたい放題ですね。これ、サバイバル時代に見つけてたら悪用してただろうなあ…。

相棒ができてよかったね、陽菜…。

次回、下準備もいよいよ大詰めです。


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