19話 ダンジョン生成で、物理的にざまぁします
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絶体絶命の監禁状態。 この詰み盤面をひっくり返すための必達条件は以下の通りです
① 自由を奪う縄を解く ② 鍵のかかった密室から脱出する ③ 男たちからスマホを奪還する
④ ――クソ野郎どもに、特大の仕返しをブチ込む
ダンジョン生成能力の新しい使い方、とくとご覧ください!
ダンジョン生成能力は、しっかり思い浮かべさえすれば現代の位置情報に関係なく任意のモノを生み出せる。
それは、この詰み切った盤面をひっくり返す、何よりの情報だった。
私は手の中のボールペンを握りしめる。
「――ありがとね。冴子さん。やっぱりあなたは私の女神さまだよ」
冴子さんにあげるとき、名残を惜しむように触ったボールペンの感触がなければ、流石にこのボールペンを生み出すなんてことはできなかったかもしれない。
しかしだ。喜んでばかりはいられない。
まず、当たり前のことだが、このボールペンで縛られた手の縄を切るなんて絶対にできないというのが一つ。
能力の実証ができたことは本当に大きな一歩だが、私の拘束を解くためには他に仕えるものを生み出す以外にない。
そしてもう一つ。
「――くっ、頭痛が…」
私は思わずうめき声を出した。途端、手の中のボールペンが霧散する。
そう。
このダンジョン生成。2028年の位置情報を利用するのに比べて、比較にならないくらいに頭のリソースを使うということ。
これまでのダンジョンは、生成した後は特に意識してイメージし続けるなんてことはしてこなかった。
しかし今回の生成は違う。モノを出している間は常に頭がひどく圧迫される感覚になる。
出して数秒で頭痛が始まり、あっというまに我慢できないレベルにまで膨れ上がってしまった。
しかも、生成したものを消しても疲労感がひどい。体感、ダンジョンに1時間くらいこもりっぱなしだった時くらいの疲労感が頭にしこりとして残っている。
「…やばいな。下手したらすぐオーバーヒートだ」
乱用はできない。
無駄に実験を繰り返していたら、下手すると肝心の明日には全く能力が使えないなんて事態すらありえる。
「そうしたら、私は売り物一直線だよ…!」
だから、考える。
私が自由を手にするまでのプロセスを。
それを実現するために、私がこの短い間に、何を確かめ、何を生み出すべきかを。
まずは、なにより何ができるかを厳密に考えよう。出せるものは限られている。それをベースに策を練っていくしかない。
おそらく何もないところから出せるモノの最低条件は思い入れがることだ。単純に形状や重さを思い浮かべても結局ボールペンは出てこなかった。そのものにどれだけ私が熱量をもって情報をひねり出せるかがかなり重要そうだ。
「スマホとかできたらかなり楽なんだけどな…」
もしこれができるなら、あの男たちから無理にスマホを奪い返す必要もなくなる。むしろ、出し入れ自由で、充電要らずということを考えれば、いざというときにこれほど頼りになるものはないだろう。
しかし、その妄想を私は早々に却下する。多分無理だ。
だって、スマホの中身とか、私に思い浮かべられるわけないもん。
2028年の位置情報に頼らないでモノを生み出す場合、その細部はすべて私がイメージしないといけない。スマホでこれができるわけがない。
つまり、私が生み出せるのはイメージが鮮明であることに加えて、思い入れがあるもの、その構造が想像できるものに限られそうだ。
「…あ。あれなら多分出せるな」
思いついたのは私が普段持ち歩いている文房具の一つ、ペーパーナイフだ。
あれなら、何度も何度も触れていたからイメージは今でもすぐに思い浮かぶし、構造も単純。そして、思い入れは十分だ。
「なんせ、母さんの形見だもんね」
質入れの時対象外にしたのもそれが理由だ。
あ、形見がペーパーナイフとか、あんまりだと思ったでしょ。まあそう思われるのも当然だよね。ペーパーナイフなんて使いどころあんまりないうえに、結構古ぼけてて汚いやつだし。
でも仕方ないんだよ。くそ親父が母さんの持ち物は一切合切処分してしまったせいで、手元に残ったのは母さんの所持品はこれだけだったんだから。
それ以来、絶対に捨てさせないとほぼ肌身離さず持ち歩いているおかげで、イメージの鮮明さなら冴子さんのボールペン以上だ。
「それに、ボールペンよりはまだ使えそうかな?」
細いけどちゃんと金属製で、小刀っぽい見た目のペーパーナイフだ。すぐ折れてしまいそうなボールペンよりは丈夫だろうし、結び目にもさしやすい。そうすればきっと少しはほころびが作れそうな気がする。というか、多分それ以外に出せるモノはなさそうだし、これに賭けるしかないよね。
「他に私が思い入れのある、単純な作りの物…。うーーん…」
正直ぱっと思い浮かぶものがない。
ミニマリストを気取るわけじゃないけど、モノに執着はあんまりしない質なんだよなあ。文房具好きではあるけど、一個一個の思い入れはそこまでだし…。
そう頭をひねらせていて、ふと、思いついたものがあった。
「私の城…!!」
そう。考えれば、何よりも執着しているものがそれだ。
この世界でも、向こうの世界でも、これほどまでに手放したくないと思っているものは多分他にない。
「これならイメージはかなり鮮明にできる…!」
なんせ、生活の唯一の彩りなんだ。細かい部分まで鮮明に覚えている。天井のシミから壁の傷の場所、そこに置いてあるソファーについている埃だって想像できる。勿論、目に見えない電線とか、ガス管、水道管の位置なんかはわからないけど、どうせこの世界で作り出すダンジョンにインフラは存在しないんだ。そんなの再現しなくたって問題ない。
「……でも、大きさが桁違いだよね…」
たかがボールペンを出すだけで、あれだけ消耗したんだ。部屋一個分思い浮かべるなんて、私にできるんだろうか。
「でも、もし本当にこれができるなら、作戦は思いっきり広がる」
もし本当に、この場所に、任意の座標でアパートを生み出すことができるなら。その発想だけで、いくつもアイディアが浮かんでくる。
鍵のかかった部屋からの脱出。男たちからのスマホの奪取。
それもきっと不可能じゃない。
検証しなければいけないものはそれなりに多い。それを考えると、既に頭が痛くなりそうではあるんだけど、やるしかない。
「見せてあげるよ。私の城が、どんだけ最強か!」
*
そして次の日。
私が椅子に座ってぐったりとしているところでバタンと乱暴に扉が開いた。
「おう。約束通り見せてもらうぜ」
相変わらずの二人ずれ。兄貴分の方は、ちゃんと私のスマホを持ってきている。
「…ずいぶん早くない?まだ日が上がってそんなに経ってないと思うんだけど」
「悪いが予定が変わってな。余裕がなくなったんだよ。ーーその様子を見ると、随分必死に頑張ったみてえだな」
兄貴分が私の顔を見るなりそう言って笑った。
男の言う通り、私の顔は鼻血やら何やらですっかり汚れてしまっている。
「……だから言ったでしょうが。能力をちゃんと使えるようになるには三日かかるって…。それを一日でやれってんだから、無理するしかないじゃない」
私はかすれる声でそう言った。
まあ、嘘じゃない。本当に無理をした。ほとんど死ぬかと思うくらいに。その苦労の末に、私は今この椅子に座っている。
「じゃあ、その苦労の成果を見せてもらおうじゃねえか。ほれよ。約束の機械を持ってきてやったぜ。これでやって見せろ」
「……その前にこの縄ほどいてよ」
「それはできねえ。お前が指示した通りに俺が操作してやるから、それでやって見せやがれ」
「無理。あんたには操作できないようにできてるんだよ」
「つべこべ言うんじゃねえ。どうせ、なんかやりようがあるだろう?それを言え。でなけりゃ…」
そういうと兄貴分が弟分の方を顎でしゃくる。弟分は指を嫌らしく鳴らして見せた。
「……わかったよ。せめて、その機械を私に近づけて。じゃないと起動しないから」
「ふん。面倒くさい作りだぜ」
男がそう言って無造作にこっちに歩いてきたのを見計らって。
私は強く目をつむった。
「生成!」
変化は一瞬だった。
頭が瞬時に沸騰したように熱くなる。そこで目を開けば、見慣れた清澄白河のアパートがみえた。
「な!き、消えやがった!」
かすかに男の声が聞こえてくる。
そう。私は今一人、独立したアパートの空間に隔離された状態になっている。
ダンジョンの法則。扉が閉まっていれば外からは見えない。だからこそ、アパートの中に私一人だけたたずむ様子を思い浮かべれば、私だけがアパート内に入り、向こうから見れば私が急に消えたように見えているはずだ。
これを確かめるために本当に死ぬほど苦労した。アパートを作り出すだけで馬鹿みたいに時間がかかったというのに、更に疲労しきった頭のまま、身に着けた物だけアパート内に入るようイメージを練り直すのを繰り返した。
おかげて、掛け声一つで、イメージが瞬時にできるようになっている。
まあ、実は細部はかなり怪しいけど。壁がまるでノイズ交じりの映像のように揺らいでいる上に四隅の部分とかになんだかよくわからないうごめく靄が揺らいでいるしね。
おまけに既に目の前が真っ赤だし、音の聞こえ方まで変になっている。
だからこそ、もたもたしているわけにもいかない。私はそのまま立ち上がった。
勿論、縄は既にほどいてある。ペーパーナイフを結び目に差し込んでてこのように動かし、何とか縄を緩めることに成功したのだ。これにも本当に時間がかかった。
縄がほどけたのは、実は男たちが入ってくるギリギリ前だったりする。鼻血をちゃんと拭く余裕もなかったのはそのせいだ。
私は、そのまま急いでソファーの近くにいつも置いてある消火器を手に取った。
若い女一人、アパートの一階で暮らしているんだ。どうしたっていざというときのことはいつも考えていた。だから、消火器がある場所も、その使い方もばっちり身に沁み込んでいる。
私はそれを手に取り、男たちが騒いでいる声を頼りに位置取りを決めると
「解除」
明確にイメージするため再度そうつぶやいた。
瞬間、視界が切り替わる。アパートの風景は搔き消えて、元の倉庫の光景が現れる。
アパート内で移動した分座標がずれた状態――つまり、男の真ん前で。
「おりゃあああ!!!」
思いっきり振り上げた。
持っていた消火器がきれいに男の顎にぶち当たる。
「は?―――アガ!」
目を回して倒れたのは兄貴分のほうだった。急に私が消えたと思ったら、突然目の前に音もなく現れたのだ。流石に、裏家業の男でも対処はできなかったらしい。
「ふ、ふざけやがって、狐女があああ!!」
訳も分からないまま、弟分が吠える。
しかし、その時にはすでに、私のアクションは終了していた。つまり、消火器の噴出孔を男めがけて突き出して
「食らいやがれ!!」
至近距離で噴出して見せる。粉はもろに男の目に入った。
「ぎ、ぎゃあああああ!」
弟分はそう言って目を押さえる。定番、消火器目つぶしだ。
もちろんこれで終わらせてなんかやるもんか。
私は誓ったんだ。
絶対痛い目合わせてやるって。
「はい、ヒットぉ!」
今度は消火器を鐘つきのように突き出した。狙いは、そう、男の体の下の方にございますみんなご存じのあの場所だ。
「ぐ」
男はふっと真顔になった後、そのまま膝をついて沈み込んだ。
よし!制圧完了!
私は二人が即座に追ってこれない状態になったのを確認すると、兄貴分が落としたスマホを拾い上げる。これで、目標は二つ達成だ。
あとは最後、逃げ出すだけだ。
「ま――が、れ、このアマ……!」
弟分が、呻気ながらもそう叫ぶ。ただし明後日の方向に。ただでさえ目がつぶれているうえに、充満したピンク色の粉末が視界を真っ白に覆い尽くしているんだ。私の姿なんて見えやしないのだろう。 私は男を置き去りにして、私は扉――ではなく外から音のする壁側の方に駆け寄った。
「おたっしゃで―――生成!」
私はそういうと再び目をつぶる。頭がねじきれそうになるのを感じながら目を開くと、そこは再び私のアパートの中となる。
そこで私は―――前に数歩進む。
当然、アパートの中に先ほど見えていた壁なんて存在しない。向こうの世界では壁だった場所を超えてさらに数歩進んだあたりで、私は解除とそう唱えた。
突然視界が変わる。
目の前に広がるのは倉庫の壁ではなく、その外にある土臭いにおいのする狭い路地だった。
「おっしゃ!成功!」
私はそう小さく叫んで振り返る。私の後ろには先ほどまであった倉庫が見える。
そう。私はダンジョン生成を壁ぬけに利用したのだ。
ダンジョンの中で私が少し移動してその後解除した場合、元の世界では私が動いた分調整された位置に出現する。ちょうど、あの兄貴分の目の前に私が出現できたように。
これはその応用。壁の目の前でダンジョンを生成し、ちょっと移動した状態で解除すれば、あら不思議。私は壁の向こうで再度出現ができるというわけだ。
快哉を叫んだ途端、私はふらついた。
世界が何だか回って見える。地面についているはずの足が何だか遠くにある気すらする。
……本当に限界の限界だなこれ。
でも、ここでうかうかしていたら、いつあの男たちがおってくるかわかったもんじゃない。
私は最後の力をふり絞り、とにかくその場を後にした。
*
その後
「あーーー、死ぬ、ほんと死ぬ…」
私は、日本橋で見つけ出した隠し土蔵の中でひっくり返っていた。
ここまで逃げてこれたのは割と奇跡だ。
まず、倉庫のあった立地がよく見知った場所だったというのが本当に助かった。
「なんせアパートのすぐ近所だもんなぁ…。確かに川沿いの倉庫とか、時代的に便利なんだろうけどさ」
私のアパートのある清澄白河は隅田川のすぐ近くの立地のため、昔は川沿いに倉庫が並んでいたと聞いたことがある。
まさにその一角が男たちの隠れ家だったようだ。
おかげで隠れられそうな場所とかの土地勘があった。伊達にこの時代何度もここら辺を歩き回ってはいない。おかげで、人目につかないところで休み休み、なんとかここまで移動することができたのだ。
まあ、本当ならすぐにアパートに逃げ込みたいところだったけどね。
でも、今私はダンジョンのダの字も出すことができない状態にある。たぶん出そうと思った時点で血を吐くんじゃない?そんな感覚。
で、この土蔵まで必死の思いでたどり着きましたというわけ。
ちなみに、そのスマホは現在充電中。懸念していた通り充電切れになっていました。この隠し土蔵を第二の拠点として見つけ出して、充電器とかを隠し持っておかなければ、せっかく逃げ出したというのにやっぱり詰んでましたになるところだったよ。
「……それでも、生きてる」
転がりながら何とかそう呟いた。
途端、訳も分からず涙が止まらなくなった。
まるで初めてこの世界に放り込まれた時のようだ。涙腺が壊れてしまっているのか、流れるように涙が出続けている。
今度こそ、本当に詰んだと思った。
いや違う。実際一度詰んだんだ。
生き残れたのは、あの男たちが暴走をしたおかげで、敵が二人に絞れたからだ。あれが法師様だとか先生だとかの言いつけ通りにちゃんと組織的に動いていたならば、私の付け入る隙などなかっただろう。
それが何を意味するか。
私の、このサバイバル人生は、ほぼ完全に追い詰められているということだ。
「……なんせ、また無一文に戻ってるしね」
男たちの元から逃げ出すとき、スマホを奪取するのが精一杯で他の荷物を探す余裕なんてなかった。だから持っていた文房具一式やがま口は奪われたままだ。私を救ってくれた、あのペーパーナイフの本物も、もはや私の手には帰ってくることはないだろう。時計を売ったお金も、お菓子で儲けたお金も、これまで必死に積み上げてきたものは何もかも無くなった。
おまけに、お金を稼ぐ手立てもほぼほぼ封じられている。
就職は初めから無理。お宝探しも換金できないから挫折。そして未来の商品を売り捌く道すらも、ほぼ塞がれたと見ていいだろう。
一歩進んで二歩下がるという気分だよ。ほんと私にどうしろって言うんだろうね。
そうやって徹底的に軽んじられて、打ちのめされて。
クタクタの疲労感と無力感が通り過ぎた後、胸の内に残ったものがあった。
それは怒りだ。
この時代の、ありとあらゆるものに対しての、抑えられない激情。
盲目的に異端者を排斥するくせに、自分たちの都合のいい時だけ身勝手に要求し搾取する。それを当然と言う顔をして疑わない。
そんな奴らを相手に、お行儀良く生きていこうと思っていた自分が間違いだった。社会の方が私のことを軽んじるなら、私だって自重なんてしてあげない。
「そっちがその気なら、未来知識の悪用でもなんでもやってやるよ」
タイムトラベルのタブー、最後の手段として除外していた選択肢。
――博打での未来知識の活用だ。
ターゲットは競馬。新聞記事を見れば勝ち馬からオッズまで情報は入手可能だ。
私は充電中のスマホを開いて直近の競馬情報を確認してみる。次の競馬の予定だが、ちょうど明日、四月八日、日曜日だ。
こちとら、追われる身だ。派手に勝ちまくっていたらすぐに見つかってしまうだろう。かといって、あまり時間をおいていたら、次の競馬が開かれるまでに捕まってしまう可能性だってある。何せ私には逃走資金なんてないのだ。
だからこそ、明日がいきなり正念場ってわけだ。幸い、オッズの高い勝負が何回かある。これに勝てれば当分安心できるお金が手に入るだろう。
「ここで、今度こそ大金を稼いでやるよ…!」
何も持たない朝霧陽菜の、最初で最後の大勝負だ。
さて。
決心をしてから私がすることはなにか。それは、情報収集でも撮影立案でもなく――動画配信だった。
「――というわけで、生存報告でしたー。ほんと、さんざんだったよ…。あ、でも、あの時アイディアくれたみんなはありがとね。一般人に捕まるのが一番怖いから。
で。まあ、踏んだり蹴ったりだったわけですが、ここは心機一転気持ちを切り替えて、情報物理学に立ち返ります!今回取り扱うのは、明日行われる競馬の検証です!」
その一言で、コメントがいろいろ沸き返った。
やったれという言葉がほとんどだが、思いとどまれという言葉も結構ある。闇落ちとか言っているやつもいるよ。ほっとけ。
「だいじょーぶ!情報物理学研究所は健全です!これは、あくまで検証、検証なんで!偶発的要素が絡む事態でも、この世界は新聞通りに動いて見せるのか、実地で確かめてみるだけなので!暖かい目で見守ってねー。ではまた明日!目黒競馬場でお会いしましょう!またねー」
私はそう言って短めの動画の配信を切った。
こんな状況で、こんな真似、自分でもどうかしていると思うけどね。
でも、これで後に引けなくなった。
私は動画配信者という生き物だ。動画のためというのが一番力がわいてくる。その力を借りて、絶対明日は成功させる。これはそのための願掛けみたいなものなんだ。
「見ててね。2028年。そして、見てろよ。1928年。絶対、見返してやるんだから!」
私は薄暗い土蔵の天井に、そう強く言い放った。
コンクリートの天井が、なんだか笑った気がした。
お読みいただきありがとうございました。
はい。陽菜が(?)「闇落ち」いたしました。 本来は真面目なモラリストの彼女ですが、自分をここまで追い詰める1928年の社会に対して、ついに反逆を決意します。
……まあ、その勝負をするためには、割と高価いハードルがあるのですが、それはまた次の陽菜パートで。
次回、冴子パート。
いよいよ、志乃との正面対決です。男たちも恐れる志乃という謎の女。冴子は打ち勝つことができるのでしょうか。
陽菜と一緒に「はい、ヒットぉ!」と思っていただけましたら、ブックマークや下部の【☆☆☆☆☆】(評価)で応援いただけると、とても嬉しいです!




