勇者のぼやき
アリストがロバウたちからグワラニーの情報を引き出した勇者一行がミュランジ城を訪れたあの日、勇者たち三人の若者が見舞われた悲しい話をしよう。
「くそっ。またこれか」
ミュランジ城の一室に入った途端、勇者というこの世界で一番有名な肩書を持つその若い男が負の感情が大量に込められた言葉を吐き出す。
「とりあえずアリストはいい。だが、フィーネと俺たちの差はあれだけあるのは絶対におかしいだろう」
その男ファーブが不機嫌な理由。
それは言うまでもなく待遇の格差。
もちろん第一王子と名乗り、それを証明するものを所持していた以上、アリストがそれにふさわしい待遇を受けることについてはファーブも納得している。
だが、フィーネがアリストと同格というのはどう考えてもおかしい。
いや。
フィーネがアリストと同じもてなしを受けるのであれば、自分たちもそれと同じ待遇であるべきだというもの。
そう。
フィーネに対しては、まずアリストと同室でよいかを尋ね、それを断られると、ほぼ同じクラスの部屋を用意したフランベーニュ側だったが、アリストの従者となっている彼らには使用人用の小さな部屋に三人を押し込んだのである。
「だから、俺はフランベーニュ人が嫌いなのだ」
「いや。悪いのはやはりアリストだ」
ファーブが吐き出したトドメの憤慨を引き取ったのはブランだった。
「一応フランベーニュの奴らは俺たちの処遇についてアリストに尋ねたのだ。だから、あの時アリストが自分と同格にすればいいと言えば、こんな小部屋に三人で寝ることはなかったのだ」
「それなのに、アリストの馬鹿が彼らにふさわしい部屋で結構などというものだから……」
「そうだな。だが、アリターナやノルディアよりはうまいものを食えたうえに、とりあえずそれなりのベッドで寝られるのだ。よしとしようではないか」
達観したように彼の兄はそう言うとベッドで横になる。
だが、彼とて完全に満足していたわけではなかった。
「だが、今後のこともある。俺たちの待遇改善のためにもそれなりの服を用意するようアリストに要求すべきではあると思う」
「おう」
「そうだな。そもそも俺たちには肝心の服がない。つまり、この服だ」
「俺たちだってこの小汚い格好をした奴が来たら使用人用の部屋に押し込めるだろうからな」
「たしかに。やはり身なりは大事だ。せめて執事見習いくらいに見える程度のものは欲しいな」
「ああ」




