月虹の夜
フィーネとワイバーンが接触した日の夜。
アリストは白い輪を伴うこの世界ではイーアフと呼ばれる月を眺めながらフィーネから聞いた話を思い返していた。
何か引っかかるものを感じながら。
……あれはそもそもファーブたちが言い出し、私がフィーネの同行を提案したもの。
……フィーネが言い出したものではない。
……さらに、船を借りだしたのはファーブ。
……乗員の確保が出来ない場合はアグリニオンに行くという策をフィーネに授けたのも、アドニア嬢に大海賊とのトラブルにならぬよう仲介を依頼するように言ったのも私。
……おかしなところはない。
……ですが、フィーネの、ワイバーンに対する対応は見事すぎます。
……そうなることを知っていた……。
……というより、それを望んでいたかのようです。
……私がグワラニーとやったような茶番。
……すなわち、フィーネとワイバーンが申し合わせていたということはありえるだろうか。
……いや。
……それはないと言っていいでしょう。
……となれば、やはり偶然訪れた機会をフィーネが有効に使ったということになりますが、その場合、彼女の目的は何か?
……まさか、そのサングラスとやらの情報を手に入れて、欲しくなったということはないでしょうから、考えられるのは個人的にワイバーンと繋がりを持ちたかったということでしょうか。
……ですが、それこそどのような目的で?ということになります。
……いずれにしても、そのサングラスの受け取りに出向いたときにバレデラス・ワイバーンが現れればわかることです。
……もうひとつ解せないのは、ワイバーンの動きです。
……フィーネが私の代理人と言ったことに対する反応です。
……王都にまで張り巡らせてあるという情報網。
……当然グワラニーの動きだって知っているはず。
……そして、それが自分たちの金銀貿易の優位性を脅かすものであることだったわかっているはず。
……ワイバーン本人が気づかなくても、フィーネのいう有能な取り巻きから助言があるはず。
……そこにもってきて、魔族軍と戦っているブリターニャの有力者の代理人との邂逅。
……協調関係まではいかなくても友諠を結ぶくらいはあってもいいはずなのだが、それすら一切口にしなかったという。
……これはフィーネの後ろに控えていた三人の言葉もあるので確実。
……その程度も気づかぬようでは、フィーネの言葉どおりたいした男ではないということになりますが、そうでなかった場合、どのようなことが考えられるのか、一度じっくり検討すべきかもしれませんね。




