名付け
スライムと言えど召喚された魔物には感情がある。レクスの暴力的な特訓は結果を残していたが受け入れ難いものであった。ペーパーナイフで身体を切られたかと思ったら彼の手で何度か小突かれ、針で刺された。しかし、その過程で耐性を身につけていくうちに心境に変化が訪れた。耐性を身につけてからは痛みが少なくなる。主は本気で自分を強くなれるように努めている。そう思い彼の行動を理解していくうちに自分のためにする行い全てに愛を感じるようになった。
種族:スライム 名前:無し
体力:C
筋力:E
知性:C
魔力:C
敏捷:E
能力:伸縮 消化 初級水魔法 水属性耐性(小)
初級炎魔法 炎属性耐性(小)
初級土魔法 土属性耐性(小)
初級風魔法 風属性耐性(小)
物理耐性(小)
いつの間にか体力が一つランクアップし、強くなる喜びを感じた。主のおかげで強くなれる。痛みのおかげで強くなれる。そう思うと主の特訓に付き合うのが楽しいとさえ思うようになっていた。
「最強には程遠いが少しはマシになってきたな。」
魔法と物理に対する耐性を全て習得して、見られるステータスになっていたが、一つ忘れていることに気がついた。
「そういえばまだ名付けをしてなかったな。というかできるのか?ある程度の絆が無ければ効果が無いらしいけど。」
ダンジョンのマスターになる召喚者とダンジョンを守護する召喚獣は互いを認め合うことによってより強くなれる。名付けはそのための儀式なのだが、あまりにも低いステータスにすっかり失念していた。
「ずっとスライム、なんて呼ぶのもきまりが悪いしな。よし、お前の名前はアルトだ!」
スライムに名付けを施した直後、スライム改めアルトの身体が光り輝いた。またか、と思いながら眩しさに目を瞑ったレクス。まぶた越しに光が弱くなり収まったと思って目を開けるとそこにはスライムの姿は無かった。
「えっと、君は誰だ?ここにいたスライムをどこにやったんだ?」
「酷いですねご主人様。私はあなたのアルトですよ!」
彼女の言葉に耳を疑った。スライムに名付けを施したのは覚えているが目の前の少女に名付けた覚えは無い。そんなことより、
「君がアルトかどうかは置いといて、とりあえず何か着てくれるとありがたいんだが……」
「服?私は魔物ですから身体を見られてもなんとも思いませんよ?」
「俺が気にするから何か着ろ!とりあえずこれでも羽織っておけ!」
制服のブレザーを脱ぎアルトに押し付けた。子首を傾げながらブレザーを受け取るアルト。その仕草に淡い水色の髪が肩の上で揺れる。あまりの可憐さに目線が首から下へ行かなかったのがレクスにとって幸か不幸かはわからない。
「仮に君がアルトなんだとしたらどうして人型になったんだ?」
「それは人型の方が何かと便利かと思いまして。ご主人様のお世話をするにも意思の疎通をするのもこの姿が一番適しています。スライムを抱えているより可愛い女の子を連れて歩く方がご主人様も気分が良くないですか?」
確かに一理ある。なによりスライムを抱えて歩くだけでバカにしたような視線を送ってくる輩に対して今では軽い怒りさえ覚える。アルトの気遣いは素直にありがたい。
「なるほど、お前の言う通りだな。ありがとう。」
「はい!喜んで頂けたみたいでよかったです!ご主人様の名付けのおかげで思考がクリアになりましたから!」
「そうか、名付けでステータスも上がるのか。確認させてくれ。ステータスオープン!」
種族:スライム 名前:アルト
体力:C
筋力:D
知性:A
魔力:C
敏捷:D
能力:伸縮 消化 初級水魔法 水属性耐性(小)
初級炎魔法 炎属性耐性(小)
初級土魔法 土属性耐性(小)
初級風魔法 風属性耐性(小)
物理耐性(小)
名前を得てレクスとの繋がりが強くなったおかげで知性が特に上昇していた。ここまでの気遣いができるのはこのおかげだろう。
「かなり頭は回るようになったみたいだが戦闘面はあまり上がらなかったか。いや贅沢を言うのはよくないな。」
「でしたら私の願いを一つ聞いて頂けますか?」
「いいぞ。お前が名前を得た記念に叶えられることなら聞いてやろう。」
「ありがとうございます!それでは早速ですが、強くなるために私に魔法をぶつけたり切ったり刺したりして欲しいです!」
満面の笑みでそんなことを言うアルト。育て方を間違えたのではないかと反省するレクスはそんなアルトに苦笑を浮かべることしか出来なかった。
ロング派ショート派論争が巻き起こる昨今
個人的には肩に毛先が触れるくらいの長さが好きです
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