制服
「何をするにも、まずはお前の服を用意するのが先だ。それまで俺の服で我慢しろ。」
スライムとはいえ今は人型なのだ。裸の女性を連れ歩いたら更に問題になるのは間違いない。
「かしこまりました!私の服はどこで買うおつもりですか?」
「制服なら学園内で簡単に手に入るからそれでいいだろう。」
「ご主人様とお揃いというものですね!素晴らしいです!」
あんなに非人道的な扱いを受けたというのにこんなに懐いているのが不思議でたまらないレクス。しかし考えても答えは出ないだろうし都合が悪い訳では無いため言及しなかった。私服をアルトに着させ制服を購入しに購買まで向かう。
「ご主人様、なにやら注目されてるようですね。」
「みんなアルトを見てるんだろう。」
「そうなのですか?」
不思議そうに小首を傾げるアルト。 外見だけで言えば学園一といっても過言では無いだろう。そんな美少女が歩いていれば男女問わず見蕩れてしまうのは仕方ないことだが、隣にいるのがレクスだから尚更注目を集めてしまう。良くも悪くも彼の話題が尽きることは無さそうだ。
「ほら、着いたぞ。買ってやるから試着室で着替えてこい。」
「ありがとうございます!では少々お待ちくださいね!」
女子用の制服を買うことに謎の羞恥心に襲われたが無事手に入れることが出来た。あとはアルトが着替えるのを待つだけだと思っていたが、
「おう!レクス!元気そうでよかったぞ!」
「イグニか。召喚の間以来だな。」
「大丈夫だったのか?召喚してから心ここに在らずって感じに見えたから心配してたんだぞ。」
「ああ、問題ない。もう立ち直ったから大丈夫だよ。ありがとうな。」
スライムを召喚したレクスを蔑むことはせず、むしろ気落ちしていたレクスを素直に心配していた様子に少し驚いた。誰にも分け隔てなく接することが出来る部分は尊敬に値する。そう思うといつの間にか感謝の言葉が出ていた。
「それで、買い物をしているようには見えないがレクスはここで何をしているんだ?」
「ご主人様!お待たせしました!」
イグニに説明しようと口を開いた瞬間、試着室から制服に着替えたアルトが出てきた。
「その子は……なるほどレクスの召喚獣か。」
「分かるのか?」
「当たり前だろう。魔力の流れがヒトとも魔族とも違う。だがレクスが召喚したのはスライムだろう?なんで女の子の姿になってるんだ?レクスの趣味か?」
「ふざけるな。名付けをしたらこうなったんだよ。理屈までは俺にもわからん。」
人の趣味をなんだと思ってるのかと憤りそうになったが、魔力の流れを読み取っただけでアルトの正体を見破ったイグニの実力の高さを改めて認識させられた。
「ご主人様?この方は?」
「この大きいのはイグニ。イグニ、この水色の髪はアルトだ。」
「アルトっていうのか!よろしくな!」
「こちらこそよろしくお願いしますね!」
「そうだレクス!明日は遂に召喚に成功した生徒にダンジョンについての本格的な講義が始まるから機会があれば俺の召喚獣も紹介するからな!」
「そうか明日か。楽しみにしているよ。じゃあ俺たちの用事は済んだし部屋に戻るぞ。またな。」
「おう!」
レクスの言葉に続いてお辞儀をしてついて行くアルト。二人を見送るイグニは誰に聞かせる訳でもなく、つい独り言を零した。
「人型のスライムか。やっぱりただの雑魚を召喚するわけないよな。」
自らも尊敬する部分が多いレクスの落ち込み具合は心配していたがそんなものは既にどこかに消えていた。そして彼が創るダンジョンはどのようなものになるのか、先の未来が楽しみで仕方なかった。
「あれ、俺は購買まで何しに来たんだっけ?」




