可能性
「それにしてもなんでほんの少しの攻撃で耐性が着いたんだろうな?」
属性への耐性は種族ごとに持ち合わせているかアイテムや魔法の効果で付与するものだ。本来手加減した魔法攻撃を一度受けただけで得られるようなものでは無い。
「弱いからこそ適応するために進化の流れが早いのか?だとしたら攻撃魔法を覚えたのも頷けるか……いや馬鹿げた仮説だな。」
レクスの仮説が正しくても進化の流れが早すぎる。もしこれが事実なら世界初スライムに支配されているはずだろう。そうでは無い現状ではやはり仮説の域を出なかった。
「うっ、あそこにいるのはミリアとフェンリルか。面倒だし部屋に戻るか。嫌味を言うのはいいが言われるのは気分が良くないしな。」
グラウンドの端から歩いてくるミリアとフェンリル。そしてそれらの周りを数人の生徒が話しながら歩いていた。
「はあ……惨めだ……」
なぜ自分が逃げなければならないのか。頭では認められなくても本能的に負けをまとめてしまっていた。フェンリルとスライムでは核の差が違う。今のままでは到底追いつけない。
「購買でバーガーでも買って部屋に帰るか。」
スライムを抱えながら購買で買い物をするが、以前とは違う注目をされている。さすがに平然を装っているが内心ではまだ慣れない視線に心が折れかける。
何事もなく部屋で食事を終えバーガーの包み紙をゴミ箱に捨てるとめずらしくスライムが自ら動き出した。
「ん?あっ、お前も食べたかったのか?すまん。スライムは食事が必要なのか。」
レクスの言葉を否定するかのようにゴミ箱の包み紙を彼の前まで持ってきた。すると自らの体内に吸収していき、そのまま溶かしていった。
「そうか!それだ!ステータスオープン!」
種族:スライム 名前:無し
体力:D
筋力:E
知性:C
魔力:D
敏捷:E
能力:伸縮 消化 初級水魔法 水属性耐性(小)
「今の紙は消化によって吸収された。ということはお前魔法を受けてそれを吸収して消化したから魔法を覚えたのか!?」
スライムが縦に揺れる。おそらく肯定だろう。そう判断したレクスの行動は早かった。スライムを両手で抱えて何も言わずに初級炎魔法を唱えたのだ。
「ファイアーボール!大丈夫だぞ〜怖くない怖くない。」
ファイアーボールを空中に固定し、スライムにダメージが入らないように距離を開けながら炙り出したのである。誰が見ても弱いものいじめをしている光景だが本人は至って真面目だ。スライムが炎から逃げようともがくが両手にも魔力を流すことで炎の熱を遮断し、スライムを逃がさず掴めている。
「さあ、これで炎耐性とファイアーボールを覚えられれば全て立証されるぞ!ステータスオープン!」
種族:スライム 名前:無し
体力:D
筋力:E
知性:C
魔力:D
敏捷:E
能力:伸縮 消化 初級水魔法 水属性耐性(小)
初級炎魔法 炎属性耐性(小)
「きたああああああ!!!!!!!」
レクスの仮説が正しいことが証明された。これで魔法に関しては攻守共に優れた魔物に成長していくだろう。そう思ったレクスの行動は早かった。
「アースボール!ウィンドボール!ステータスオープン!よし、こんなもんか。」
種族:スライム 名前:無し
体力:D
筋力:E
知性:C
魔力:C
敏捷:E
能力:伸縮 消化 初級水魔法 水属性耐性(小)
初級炎魔法 炎属性耐性(小)
初級土魔法 土属性耐性(小)
初級風魔法 風属性耐性(小)
見事に魔法と属性を得ることに成功した。四属性を扱える世界最初のスライムになったと確信したレクス。しかしここで彼の好奇心はさらに掻き立てられた。
「魔法に強くなっても近付かれたらなにも出来ないままだな。」
土の塊をぶつけられ、風の球の中でグルグル回されたスライムをテーブルの上にそっと置く。ようやく解放されたと安心したスライムの身体の端をレクスはペーパーナイフで薄く切りつけた。
ギョッとして飛び上がったスライムと落ち着いてそれを見守るレクス。ステータスには切断耐性(小)が追加されていた。
「なるほど。物理耐性もこれで上げられるわけか。もしかしたらスライムは最弱なんかじゃなくてとんでもない大器晩成型の魔物なんじゃないか?」
無限の可能性を秘めているこの小さい魔物への見方を改めた。そこには及び腰になっていたレクスはもういない。スライムこそ最強の魔物になれると確信しているからだ。
「ごめんな。最初は驚くかもしれないけどお前が強くなるためなんだ。俺も心が痛いが一緒に乗り越えような!」
スライムは確信した。まだこの地獄は終わらないのだと。
種族:スライム 名前:無し
体力:D
筋力:E
知性:C
魔力:C
敏捷:E
能力:伸縮 消化 初級水魔法 水属性耐性(小)
初級炎魔法 炎属性耐性(小)
初級土魔法 土属性耐性(小)
初級風魔法 風属性耐性(小)
切断耐性(小)




