水
自室で魔法を教えるのはさすがに危険と判断したレクスはスライムを抱えて学園のグラウンドまで足を運んだ。途中ですれ違う生徒達には落胆と失望した目で見られることはあったが以前のように話しかけられることは無くなっていた。
「よし、ここなら部屋より広いし初級の魔法なら使っても危険は無いな。しかし魔法を使うスライムなんて聞いたことがないけど得意な属性とかあるのか?」
世間一般の常識だとスライムは跳ねてぶつかってくる程度の攻撃手段しか持たないため戦闘力は子犬並だ。
「体は液体みたいなもんだし水魔法でも見せてみるか。」
初級魔法程度は詠唱しなくても発動できるレクスだがスライムのためにゆっくり魔力を練って全て説明しようとしていた。しかし、
「おいおい、誰かと思えばスライムを召喚した首席のレクス様じゃないですか〜。スライムに魔法なんか見せても何もできやしませんって。なあ?」
「やめてやれよ、最弱の魔物を召喚したショックで首席様はご乱心なされてるんだよ。そっとしといてやれよ。ハッハッハ!」
レクスの人気を妬んでいた生徒たちが嘲笑いにやって来た。今までの学園ではありえないことだが今のレクスを庇う人物はごく僅かとなっていた。
「誰だお前たちは?悪いが未だに召喚も成功させていないやつらに言われたところでな。俺の中でお前らの価値はこのスライム以下だ。邪魔だからさっさとどこかへ行ってくれ。」
ここまで明確に悪意を見せつけられればレクスも本音に加えて相手を揶揄することに躊躇いが無くなっていた。
「スライム以下だと!?ふざけやがって!お互いダンジョンを創造した時を楽しみにしていろ!」
「さて、うるさい野次馬もいなくなったし再開とするか。だがあそこまで言われたらただ魔法が使えるだけじゃ面白くないな。お前には無詠唱魔法を習得してもらうぞ!しっかり着いてこいよ!」
スライムにも感知できるようにゆっくりと体の中にある魔力を練るレクス。そしてイメージするのは目の前のスライムと同じ大きさの球体。右腕を前に突き出し、下から掴み支えるように手のひらを上に向けるとそこには水の球が発生していた。
「いいか?これがウォーターボールだ。本当はこいつを弾き飛ばして攻撃するんだがまずはここまでやってみろ。」
これが学園に入学したばかりの生徒相手なら文句を言われてもしょうがないほど乱暴で省略された魔法の実演だが、魔物は生来、魔力の操作と感知に優れている。それを見越しての無駄を省いた説明だ。
しばらくスライムを眺めていると、微かだが体の中を魔力が動いているのが確認できた。しかし、魔力を水に変換するのに苦労していた。
「水って概念がわからないのか?なら俺のウォーターボールを受けさせてみるか。」
その言葉が聞こえた瞬間、スライムがギョッとしたように体を縮めて身構えた。
「安心しろ。めちゃくちゃ手加減してやるから。それ行くぞ!ウォーターボール!」
碌に魔力を練らず殺傷性もない水をフワッとスライムの上から落とした。それはそれで高等技術が必要なのだが効果はあった。スライムもウォーターボールの発現に成功していたのだ。
「こんなに早く覚えるなんて!まさかうちの子天才なのか?よし、ステータスオープン!」
魔法を覚えた途端に手のひらを返すレクスだがこの場にそれを指摘する者はいない。そしてスライムは予想外の成長もしていた。
種族:スライム 名前:無し
体力:D
筋力:E
知性:C
魔力:D
敏捷:E
能力:伸縮 消化 初級水魔法 水属性耐性(小)
「あんな弱いウォーターボールで耐性まで獲得するなんて……これならほんとに最強の一角には手が届くぞ!」
そう、レクスには苦手な属性の魔法が無い。つまり全ての属性に対して耐性を得ることが理論上可能なのだ。最弱のスライムだが、学園首席のレクスに育てられ続ければ最強になることも可能かもしれない。
「楽しくなってきたな。俺の魔法でお前を強くしてやれるぞ!安心しろ、ちゃんと手加減はするからさ。」
ご機嫌なレクスとは逆に、これから手加減されるとはいえ攻撃を受ける立場のスライム。敏捷がもっと高ければ逃げることもできただろうに。レクスの魔の手から逃れることはできなかった。
かっこいい魔法の詠唱ですか?
思いついてますよ?
はい




