燃える森を見つめて
「ふん、魔王レクス。やはり噂はデタラメだったようだな。」
今のところ魔王ガリムの戦略は見事にハマっており、アルトとスライム達をレクスのダンジョン前まで追い詰めることに成功していた。
「学園首席の期待の新人なんて呼ばれてたみたいだが、スライムなんか召喚した時点で底が知れている。」
ガリムはレクスに勝った後のことを想像した。レクスがピリンキに来てから彼のダンジョンばかりが持て囃されていたが、衆目の前で勝利を掴めば注目されるのは自分に変わると確信していた。そしてその未来はすぐそこにある。
「あ?なんでレクスが外にいる?降伏のつもりか?」
ガリムはゴブリンロードの視界を共有してダンジョンの前に立つレクスとそれを中に入れようとするアルトを見つけた。しかし、降伏するような態度には全く見えず不審に思っていた。
「まさか!?ゴブリンロード!!全員今すぐ全力でダンジョンまで戻れ!」
「魔王レクスが命じる。全てを飲み込み全てを灰燼に帰せ。炎渦」
アルトは改めて主の偉大さを思い知った。以前特訓と称して炎の上級魔法をその身に受けた時は一つの炎の渦を発言させたレクスだったが、今目の前には五つの炎の渦が広がっている。
「よし、これで散歩しやすくなるな。」
レクスは何かを成し遂げたような達成感すら見せず、こちら側からゆっくり森を焼き払っていた。木々はなぎ倒され、背が高かった草と同時に落ちた枝葉はその存在を残すために灰となって舞っていた。
「ご主人様、あの時は本当に手加減していたのですね……」
「当たり前だろう。それよりスライムを召喚しろ。散々煮え湯を飲まされたんだ。次はこちらの番だぞ。」
不敵に笑う目の前の主に対し畏敬の年を抱き、その指示に従う。先程まで焦っていたことが馬鹿らしくなってくるほどレクスの魔法は圧倒的だった。
「これでゴブリンロードも焼けていたら儲けものなんだけどな。」
「レクス様の魔法が発動する直前に全力で後退していたのでまだ生きているかと。」
「そうか。ゴブリンロードはアルトが仕留めろ。俺の守護獣が獣風情に負けるわけが無いからな。」
何気ない一言だったが、それはアルトの胸に重く響いた。ここまで負け続きなのに自分の勝利を疑わないその姿勢に熱いものが込み上げてくる。
「魔王レクス様。あなたに仕える守護獣として必ず勝利をお約束致します。」
「当たり前だろう。こんなところで負けるわけが無い。学園首席は伊達じゃないからな。」
レクスはダンジョンの中に戻った。何も指示はなかったが残りは任せるつもりだと察したアルトはスライムを召喚し、期待に応えるため燃えていく森を見ていた。




