賞賛と影
昨日更新できなくすみませんでした。
今作に続き、19時にもう1話投稿します!
「勝ちましたよー!ご主人様!褒めてください!!」
ダンジョンの奥、レクスが休んでいる部屋に戦闘が終わると一目散に駆けてきたアルトは興奮冷めやらぬ、といった状態で目を輝かせながら主に抱きついた。
「初陣にしてはなかなか良かったんじゃないか?あの冒険者の実力は高いだろうが、一撃で仕留められなかったのが彼女の敗因だろうな。」
斬撃や刺突を受けるたびにアルトは耐性を獲得し、ツバキは手も足も出なくなっていた。その結果、アルトは余力を残したまま勝利を掴むことに成功したのである。
「ご主人様、よかったらなにかご褒美が欲しいな〜なんて思ってるのですが……チラッ」
「そうだな、ずっとダンジョンに篭もりっぱなしだったから明日は街に出てみるか。」
「デートですね!楽しみにしておきます!ご主人様、ありがとうございます!!」
嬉しそうに部屋を飛び出して行ったアルトの背中を見送るレクスは、デートじゃないと否定するタイミングを失い、一人苦笑するのであった。
アルトに敗北し、地上に送還されたツバキは己の未熟さを痛感していた。たかがスライムと侮りがあったのは確かだが、あれほどまでに何も出来ないとは思っていなかったのだ。
「おい、嬢ちゃん!あんたすげーな!」
「守護者まで辿り着いたやつなんて初めて見たぞ!」
水晶越しにツバキを見守っていた人々が賞賛の言葉を口にする。洞窟の入口で黄昏ていたツバキは、いつの間にかできた人集りの中心で困惑したいた。
「何を言ってるんだ?わたしは負けたのだぞ。」
「いやいや、あんたこそ何言ってんだい!異例の速度でランクアップして、誰も知らないダンジョンの守護者と渡り合ったんだ!もっと胸を張らねーといけないぜ!」
たしかにツバキは敗れたが、街の住民からしてみればそんなことは些細なことだった。ツバキの戦う姿は他の冒険者に火をつけ、住人たちは心躍る戦闘シーンに大満足していた。
「あんたは負けたかもしれない。でも他の奴らは触発されて鍛錬に励むかダンジョンに潜りに行っちまったよ。あんたの勇姿はちゃんと俺たちが見届けたってことを忘れないでくれ。」
「そうか。意味が無いわけでは無かったのだな。」
ダンジョンに挑んで敗れたが、ここまで心が晴れているのは初めての経験だった。どこまでも澄んでいるような青空を見あげたツバキの顔はそんな空を写したかのように明るかった。
「魔王レクスか。新米の癖にいい気になりやがって。」
ツバキの周りの人集りの遠くでダンジョンの入口を睨む一人の魔王は誰に言うでもなく恨み言を残すとその場から消えていった。
これで一章完結ということで。
次回は二章突入!




