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首席魔王の召喚獣は最弱の種族  作者: 成れの果て
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決着

突然様子が変わったアルトに薄ら寒いものを感じたが身体は動き出している。駆け寄った勢いをそのまま刀に乗せて袈裟斬りにし、アルトの横を駆け抜けた。手応えは感じたが今の一撃で仕留めることは出来なかったと察したツバキはすぐに後ろを振り返る。


「はああああ!!!いいです!いいですよ!!やはりあなたは最高ですぅ!!」


ツバキの目に映るのは自らの体を抱きしめてクネクネと身悶えするアルトの姿だった。そしてゆっくりとこちらを向いたその顔は先程よりも更に紅く染まっており、口の端からよだれを垂らしていた。


「効いていないのか!?手応えはあったはずだ!」


「もちろん効いてますよ〜。この身を切り裂かれる感覚は溜まりません!」


レクスに買い与えられた制服は肩口から脇腹まで切断されており、アルトの身体にはたしかに斬られた傷が残っている。しかし、痛がる訳でも怒りを露わにする素振りも見せず、頬に手を当てて恍惚の表情でこちらを見つめているのだ。


「おぞましい魔物だな、貴様は!」


「そんな言葉はいりません!もっと私を昂らせてください!」


そう言うと再び腕を広げてこちらを待ち構えた。まるで離れ離れの子供に再会できた母親のようにこちらを愛おしげに見つめるその眼は、むしろツバキを焦らせる。


「戯言をほざくな!」


刀を握り直すと、アルト目掛けて走り出す。今回は何者にも邪魔をされないため最短距離を進み、目の前の頭がおかしいとしか思えない魔物を切り刻み、その身体を刺し貫いた。その度に上がるのは悲鳴や怒号ではなく嬌声なのがツバキの精神を攻撃し、苛立ちを産んだ。


「はぁはぁ、貴様、なぜまだ立っていられるのだ……」


どれだけ攻撃しても余裕な態度を崩さないアルトに対して、刀を杖代わりに地面に突き刺し、片膝を着いて息を荒らげている。


斬れば斬るほど傷は浅くなり、突けば突くほど押し返される感覚を覚えた。それだけで不気味だというのに刃に身を晒される度に上がるアルトの声はすでに理解不能であった。


「ツバキさん、もう終わりですか?」


ツバキのそばに寄り、目線を合わせるように膝を折るアルト。その声にはまだ遊び足りないと拗ねる子供のような気配を感じる。


「貴様を倒すにはこちらの攻撃力が足りていない……私では貴様を倒せない……」


悔しそうに口の端を噛み、項垂れながらもその拳を強く握っていた。その様子を見て諦めたのかアルトは立ち上がり、数歩下がった。


「仕方ないですね。ここまで来れたのはあなたが初めてですが、思っていたより楽しかったですよ。また遊びましょうね!」


無邪気に目を輝かせ、笑顔でそう言うアルトの右手には、いつの間にか炎の槍が握られていた。


「ハッ!二度と戦いたくないものだな。名はアルトだったか。その名を私は決して忘れないぞ。」


「ありがとうございます!それではツバキさん。さようなら。」


ツバキの皮肉を理解していないのか嬉しそうに頷くアルトに力が抜けてしまうツバキ。彼女が最後にこのダンジョンで見たものはご機嫌な少女の見た目をしたスライムの笑顔と、視界を蹂躙する真っ赤な炎だった。

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