来訪
Dランクに上がったレクスのダンジョンはピリンキで最も注目を集めていた。誕生して僅か三日でランクアップを達成し、同じDランクの冒険者達が挑んでいたが一向に最深部に到達する者はいなかった。
「あのダンジョンは俺達の手には負えないぜ。」
「そもそも道中のスライムが厄介すぎるわよね。」
「こりゃCに上がるのも時間の問題だろうな。」
仮設されていた受付は既に立派な建物に変わり、酒場も併設されたため冒険者の溜まり場のようになっていた。
「すまない、その話を詳しく聞かせて貰えないだろうか。」
冒険者達は声のする方へ視線を向けると、ピリンキでは見慣れない東洋風の羽織りを纏う見知らぬ少女がそこにいた。艶がある長い黒髪を一つに結び、その腰に一振りの刀を差している姿は見るものを惹きつける魅力があった。
「あのダンジョンを知らないってことは、お嬢ちゃん他の町から来たのかい?」
「そうだ。風の噂で三日でランクアップしたダンジョンがあると聞いてこの街に来たのだが、それがどこか分からなくてな。」
「挑戦するつもりならやめといた方がいいぜ。Dランク認定されてるけどありゃあCか、もしかしたらB相当の難易度だぜ。」
「構わない。私はCランク冒険者だ。話を聞かせてくれ。」
「なんだ、それを早く言ってくれよ。まあ座んな。」
冒険者はダンジョンについて説明するために少女に座るよう勧めた。立ったまま聞くには少し長いと判断したからだ。少女が椅子を引き摺ってくると話を続ける。
「いいか?すぐそこにある洞窟が噂のダンジョンの入口だ。中にはスライムがわんさか出てくるがそれだけじゃねえ。やつらは魔法を操るスライムだ。それも炎と水、それに風と土を使ってきやがる。以前はベビースライムだったがランクアップしてからはベビーは姿を消した。所詮スライムって侮った連中は全員中に入って入口に送還される始末さ。」
「魔法を無力化する装備は誰も持っていなかったのか?」
「もちろん一つ二つの属性の対処はしてただろうが四属性となると駆け出し冒険者にはちと荷が重いってやつさ。」
話を聞いてなるほど、と頷く少女。冒険者たちに礼を言うと立ち上がり、洞窟まで足を向ける。
「助かった。その程度なら私にとって余裕だ。B相当と言っていたがそれは過大評価だったと証明してきてやろう。」
そう言い残して洞窟の闇の中へ消えていった。取り残された冒険者たちは顔を見合わせたが、また無謀なやつが現れたもんだと苦笑いし、彼女の攻略を水晶の映像越しに見守ることしかできなかった。




