イタズラの行方
今回はハロウィン特別版なので本編には関係ありません。
12時に予約投稿するつもりですが、本編の続きもいつも通り19時に投稿する予定です。
「ご主人様、トリックオアトリート!」
「トリックオアトリート?新しい魔法でも覚えたのか?」
「確かに魔法のような言葉ですね!なんでも、これを言われた人は相手にお菓子をあげなければいけないみたいです!」
アルトの魔力の流れは何も変わっておらず、魔法では無いと判断したレクス。それでも相手に特定の行動を強制させるとはらなかなか凶悪な言葉だなと思った。
「それで、俺はいつになったらお菓子をあげたくなるんだ?」
「えっと、お菓子くれないんですか?」
「今は何も持ってないからあげられないぞ。」
「それなら仕方ないですね。イタズラさせて頂きます!」
言い終わる前に体のバネを利用してレクスに飛びかかった。両手で抱きしめる形で捕まえようとするが三歩下がったレクスの足元に墜落した。
「もういいか?」
「いえ、まだまだこれからです!」
召喚獣が主を捕まえてイタズラしようとする不思議な図が繰り広げられて数十分が経過したが一向に戦果を上げられずにいた。
「もう!どうして逃げるんですか!」
「お前に捕まるとろくなことがなさそうだからな。」
「ちょっとイタズラさせて頂くだけです!」
「普通に嫌だが?」
自分よりも素早い相手に近接格闘を挑まなければならない時の訓練になると思い付き合っていたが、なかなか捕まらないレクスに対してアルトはいじけてやる気を無くしてしまった。
「終わりか?なら俺を捕まえられなかった罰として俺が戻ってくるまで部屋で待機だ。」
「そんなぁ……」
「じゃあな。」
捨てられた子犬のような瞳で主の背中を見送るアルト。その様子に一切関心を持たないまま本当に部屋を出ていくレクスに、気分がどんどん落ち込んでいくのを実感していた。
「少しはしゃぎすぎてしまいました……」
なんでも今日はハロウィンという普段よりも少し特別な一日だというのだ。街では子供たちが大人からお菓子を貰うために練り歩くと聞いて自分もハロウィンにあやかろうとした結果がこれだ。
「ご主人様に嫌われたらどうすればいいのでしょう……」
「なんだ、こんなことで嫌いになるわけないだろう。ここ最近の俺を見る冷たい視線に気づいてないのか?」
弱気になり独り言をこぼしたタイミングで主が帰ってきた。ただでさえ戦闘能力が低いのに弱音を吐いている所を見られて更に暗くなりそうになっていたが、
「ほら、購買で買ったものだから特別いいものではないが、今回はこれで我慢してくれ。」
その言葉に顔を上げるとクッキーの入った包みを持つレクスがいた。
「えっ……わざわざ買いに行ってくれたのですか?」
「今日はハロウィンっていう日らしいじゃないか。イタズラはさせなかったんだからお菓子を渡さないとな。」
珍しくニヤリと悪戯に微笑むレクスとは反対に頭が混乱するアルト。その様子を楽しんだレクスはクッキーを1枚取り出し、戸惑うアルトの口に押し込んだ。
「美味いか?」
「ふぁい。美味しいです!」
香ばしい小麦とバターの香りが口の中に広がり、咀嚼すればサクサクとした食感を楽しめた。飲み込んでしまえば先程までの暗い気持ちは一瞬で晴れていた。
「毎日ハロウィンならいいですね!」
「お菓子を用意する側はたまったもんじゃないな。」
いつもの調子で明るい笑顔を見せるアルトの口元にはクッキーの屑が付いていた。そんなアルトを見て知らぬ間に頬が緩むレクスだった。
たまにはこういうのも悪くないよね
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