異世界269日目 12月25日(水) ②ウィンターフェス ~真冬なのに真夏~
今日も変わらずに雪がチラつく空模様である。この辺りは思っていた以上に豪雪地帯のようだ。だが、眼前に迫るイベント広場には大勢の村の方が集まり活気に満ちている。
軽く氷点下にはなっているだろうが、俺はサンタクロースの衣装にイリアさんから貰った新しいコートを着込んでおり、中々に暖かい。
ルーミィとレインもコート姿だが、中にサンタガールコスを通常の服の上から着こんでいる分多少は防寒効果があるとは思う。布面積は極小である為、それ程の効果は期待出来無いが気休め程度にはなっているかと思う。
「むう、イリアさんからのプレゼントはコートかぁ……」
「確かにイリア様ならではのプレゼントでございますね」
村に向かう道中ずっとこんな感じでブツブツと言ってる。しかし困った、俺は二人にもクリスマスプレゼントを用意していない。神力使っちゃダメかな?
「お! カズヤ、こっちだこっち!」
伝説の樹の方から我らが村長のクレイドが手を振って呼んでいる。近くにはしっかり特設会場も立てられているみたいだ。まあ、あれはクレイドの舞台みたいなものだけど……アイスバーンになってないだろうか。
「この樹の下がカズヤ達のブースだ。ここは雪も積もらないし、暖かいからな!」
確かに伝説の樹の下は何故かほんのり暖かい。というよりもコートを二着分着ている俺にとっては暑いぐらいだ。一枚脱いでサンタ衣装になっておくか。
「わあ、派手な服着てるね! それってこの飾りの服と一緒なんだあ!」
サンタクロースの衣装が披露したところで、クレイドの横にいたフラムさんから声が上がった。こちらは可愛らしいピンクのロリロリコートだ。しかもまあ、腕なんか組んじゃって。大変仲がよろしそうで。
「はい、これがサンタクロースなのですよ。さあ、料理を並べて準備しま――」
ふと目線を前に戻すと健康的な肌を惜しげも無く晒し出し、女性として隠さなければならない箇所を、必要最低限にとどめた布地をまとった女性が目に入った。
ミニスカ、オフショルのサンタガール、おへそもばっちり丸出しのイリアさんが両腕を抱えながらこちらに歩いて来ている。
昨日見たサンタガールのコスの露出がパワーアップしており、肩まで全開で晒している。
今、冬ですよ? 二着目も用意してたんですか……一体何を考えているのだろうか。
流石に奇行とも言える姿にクレイドやフラムさんはもちろん、ルーミィにレイン、村の方に至るまで驚きの表情を浮かべている。
俺、初めてイリアさんに対して驚いている村の方を見たかも。
「な、何してるんですか!? 風邪を引く――どころじゃなくて本気で凍傷にでもなったらどうするんですか!?」
「だ、大丈夫だだだ……」
完全に大丈夫では無い。震えて歯をカタカタ鳴らしてるじゃないですか……。
≪≪≪
「ふうぅ……この衣装はこの時期にはやっぱ辛いな……考えた奴の気が知れないよ、まったく」
とりあえず俺にはサンタさんの衣装があるのでコートを貸してあげた。俺の思い過ごしであればいいのだが、まさかこれを狙ってきたんじゃないでしょうね?
それと口には出しませんが、それは俺のセリフです。正気を疑っているのはこっちです。
「イリアさん! 何を考えているんですか!? それにまた和也の服を着て! 早く雑貨店に戻って自分の服に着替えて下さい!」
「そうです! それに前はちゃんと閉めて下さい! またお風邪を引かれますよ!」
先日のイリアさんの件は風邪という事にしてある。雑貨店も休みになってしまっていた為、村の方も心配していたのだ。ただ、村の方に『魔菌で死にかけてました』とは言えない為この処置を施す事にしたのだ。
「何を言ってるんだ!? 折角の記念すべき第一回目のウィンターフェスなのにこの格好をしないでどうする! ほ、ほら、カズヤと並ぶとお似合いだろ? まるでカップルみたいに……」
やめて……折角のクリスマスが血に染まりますので……。
「そ、それなら私だって!」
「ええ、負けません!」
二人がコートを脱ぎサンタコスを晒し対抗意識を燃やし出したのだが……そういうのやめにしません? それにさっき二人とも風邪を引くからどうのこうのおっしゃってましたよね? コートは着てても構わないんですよ? 俺は暑かったから脱いだだけで。
流石にイリアさんのような肌色は無いが、新たに静と動のサンタガールが二名加わる事となった。まあ、小胸ちゃんと超お胸ちゃんの事であるが。
「ま、まぶしい! なんだ、女神様が三人も居るぞ!」
「イ、イリアさん、今日もまた美しい……」
「こ、これが異世界のフェスなのか!? な、なんて破廉――素晴らしい!!」
「え、園児ちゃん達は居ないのか……」
ほら、ざわついた。村の方の声に突っ込み所が多過ぎるが、元の世界のクリスマスに誤解を生じないようクレイドにはしっかり説明してもらわないとな……一部大人のお祭りと勘違いしている方も居るようだし。
それに、毎回園児達を心待ちにしてる人が居る……結構危ない人なのかも知れない……。
「よおし! みんな、寒い中待たせたなぁ! 今年からカズヤの世界のクリスマスってやつを取り入れたウィンターフェスがこの村の新たなイベントに加わったぞ! この樹の飾りも残念ながら今日で見納めだ! だが、充分見ただろ! これからは毎年やるぜ! なに? 寒い? そんなもの気合でなんとかしていこうぜ!」
恒例のアレが始まったが、一言だけ忠告しておこう。寒さは気合で何とかなるものではない。俺、二日前に遭難してるのでその辺りの事は身に染みて知ってます。焚火が無かったら凍え死んでたかも知れないし、それにあの時はルーミィも居たから……。
「うん?」
目が合った。とっても恥ずかしいが二人で温め合っていたから凍死しなかったのだ。しかしよくよく考えれば一晩中ルーミィを抱きしめて温もりを感じていた訳だもんな……。
今年一番の大事件として認定しておこう……。
その後もクレイドの演説は続き、しっかりとクリスマスの内容、そしてサンタクロースの事を伝えてくれていた。尚、クレイドのプレゼン能力は想像を超えていた。とっても分かりやすくこの寒空の下、大変情熱的な説明を行ってくれた。
本当にどこでそんな技術身に付けたのだろうか。
「……と、言う訳だ! そして最後になるが、俺はこの樹の下でフラムにプロポーズした! 結果はオッケーだったぞ! はい、拍手ぅ~!」
うん、知ってる。それ、俺が仕向けたやつだから……落ち着け、俺の中の悪魔よ……この前納得した所じゃないか。
「もう! 恥ずかしいってば! この馬鹿ぁ!」
何処からか取り出した銀トレイがクレイドの顎にアッパーカット気味に炸裂し、豪快にぶっ倒れた。
……あれ? 村長、動かないよ? イリアさんの手刀みたいになってない? もしかして打ちどころが悪かった? 地面、多分凍ってるもんね……。




