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異世界269日目 12月25日(水) ③ウィンターフェス ~ルーミィからのプレゼントとお返し~


 さくら保育園の特設ブースである伝説の樹の下は前もって告知しておいた通り、子供や女性を優先的にプレゼントとしてケーキとクッキーを配る予定としている。既に長蛇の列となっているが、楽しみにしてくれているようであり、華やかな声が聞こえる。


「はい、どうぞ~。落とさないようにね~」


「メリークリスマスです。どうぞ~」


「食べたらしっかり歯を磨けよ?」


 そんな中、カップケーキとデコクッキーのセットを配っているのは三人のサンタガールである。なんかアイドルの握手会みたくなっているな。


「イリアおね~ちゃん、ありがとう!」

「ルーミィお姉ちゃん、可愛いね!」

「いつもありがとうね、レインさん」


 お礼の声が絶え間なく聞こえてくる。この村には女性も子供も沢山居る。数々のイベントに参加したおかげでさくら保育園の知名度はグングン上がっている。おそらく村の方で名前はもちろんの事、保育園の仕組みを知らない方は居ないだろう。


 正直、来年度からこの村の子供も預かりたいぐらいなのだが、いかんせん、俺が不安定な状態である事は変わらず、村の方には事業を始めたばかりで軌道に乗せてから。と伝えてある。

 こちら都合によるものだが、その分、このようなイベントは積極的に参加して村の方とは交流を深めておきたいと考えている。


 俺が消えてしまうかも知れないのは村の方は知らないのだから……。


「和也……なんか悲しい顔してるよ……」


 いつの間にかルーミィが横に並んでおり、声をかけられた。ちょっと呆けてしまっていたようだ。

 周りを見渡すとどうやら女性や子供の分は行き渡ったようであり、残った分は男性のみ参加のクレイド主催のジャンケン大会で雌雄を決するようだ。メイン会場の方は男共の雄たけびで大いに盛り上がっている様子が見て取れる。

 先程フラムさんにのされていたが、いつの間にかクレイドも復活していたようで一安心だ。


 それにしてもまた物思いに更けてしまっていたな……何が何でも消滅は回避しないとな。


「……ちょっと早いけど、行こ! 私とデートしに!」


 コートを片手に満面の笑みでサンタクロースの手を引かれて走り出したのだが、もう二人のサンタガールは目を細めてこっちを見ている……何故に俺を見るんですか、フライングしたルーミィの方を見て下さいよ……。

 それにしてもまあ、みんな揃いも揃って大胆になったものだ……ルーミィなんて出会った当時は『彼氏なんかじゃありません!』って声高に訴えていたのに。


 今でも彼女とかじゃないけどね。というか女神様は彼女に出来無いでしょ……少なくともお相手は神様じゃないと成り立たないよね?



≪≪≪



 ルーミィに連れて来られたのは閑散とした村はずれである。別段景色が良い訳でも無く、何かスポットがある訳でも無いただただ静かな場所、でも確かここは……。


「ほんとはあの樹の下でお話したかったんだけど、人がいっぱいだったし今日は無理そうだったから。だからここに来たんだ。ねえ、覚えてる、この場所?」


 少し苦い顔をしながらの笑顔……そう、ここには一度来た事がある。サマーフェスの時にイリアさんと一緒に来た。ルーミィを探しに。


「……ルーミィがあの辺りから出てきましたね。びっくりしましたよ?」


 雪が覆いかぶっている草むらをゆっくりと指を差した。ちょっと懐かしいな。あの時はほんと心臓が飛び出るかと思ったもんな。


「びっくりしたのはこっちだよ! 隠れてたのに簡単に見つけられちゃうし、イリアさんと一緒に居るし、そのままキスまでしようとしてたんだよ!?」


 俺もびっくりしたんですよ……しかもあの後、イリアさんには『お膳立て』とか言われるし……人間不信にもなるところでしたから。


「あのルーミィ? 少しお聞きしても宜しいでしょうか? 実は――」


「あ、ちょっと待って! はい、これ、クリスマスプレゼントだよ!」


 ルーミィがコートのポケットから取り出したのは、紐で固く結ばれた可愛いらしい巾着のような袋であった。薄い桃色で見ているとほっとするような色合いだ。

 だけど……縫い目がガタガタだ。もしかして、あんなに針仕事を嫌がっていたのに頑張って作ってくれたのか!? 


「こ、これは?」


「ふふ、お守りだよ! 中身は和也がどうしようも無いピンチの時に開けてみて。きっと解決出来るから! 凄いアイテムなんだからね! 神界でも二つと無い代物だよ?」


 そんな貴重な物がこんなファンシーな袋に入ってるんですね……これはいいのかな? 上司さん、神界の貴重アイテムが持ち出されてますよ?


「でもそんな凄いアイテムなら、遭難した時や狼さんに襲われた時に使えば良かったのでは……」


「そ、そんなレベルで使ったらダメだよ!? もっと大変な時じゃないと開けちゃダメだからね!」


 そんなレベルって言われても……この前の窮地を超えるとなると……俺、確実に死んじゃいますよ? まあ、お守りは中身を見たら効果が無くなるって聞いた事もある。つまり開けるなって事ですね。


「分かりました、ありがとうございます。肌身離さず持たせてもらいますね」


 ルーミィからクリスマスプレゼントを受け取ると、サンタクロースの衣装のポケットにしまっておいた。何かとてつもなくご利益のあるお守りを貰った気がする。なんといっても女神様直送だもんな。これで命の危険が減ってくれればいいんだが……。


「あのですね、ルーミィ、私からのプレゼントはまた後日用意させて頂くと言う事で宜しいでしょうか? ちょっとバタバタしてまして、まだ用意出来て無くて……」


「え~、やだぁ! 今欲しい~!」


 口元が明らかににニヤついている……おっさん、嫌な予感がするんだ。絶対に物じゃなくて恥ずかしい事をさせる気でしょ? パワハラダメ、絶対ダメ!


「じゃあね……今だけ……敬語無しで普通にお喋りして! それが私へのプレゼントでいいから!」


「ムリです」


 即答した。何度も言いますが、だいたいそんな事が出来るんでしたらとっくにですね……うん? ルーミィがしゃがみ込んだ。何してるの? 冷えてお腹痛くなった?


「……ヒック……和也の意地悪、私のお願い聞いてくれないんだ……ヒック……」


 ちょっと! 泣いてるの!? そんな事されちゃ困りますよ! 意地悪って言われてもですね! ああ~、もうっ! そんなのズルいですよ!?


「分かりました! やります! やりますから泣かないで――」


「ほんと!? やったあ~!!」


 いきなり立ち上がるや否や満面の笑みを浮かべている、涙なんて1mlも零れていない。


「飾らない和也の言葉が私だけ聞ける~! うふっ!」


 ……嘘泣き……だと。おっさんはそんな女神様に育てた覚えはありませんよ!? そんな技、何処で覚えてきたんですか!?


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