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異世界268日目 12月24日(火) ⑧ルーミィ、まさかの死体蹴りされる


 正座させられたり、怒られたりしながらも無事爺やさんにゲート前まで送ってもらい、再び園に戻って来た。さあ、最後はサラちゃんだ。


「それではサラちゃんのお宅へ向いましょう」


 返事が無い……振り返るとなにやらサンタガール達は輪になって揉めているようだ。何してるの? 時間、無いんですけど……。


「……先に行きますよ」


 言葉を残し先にゲートに入ると碧色の光に視界が包まれた。


 光が収まると目の前にはログハウスがあり、窓からが暖色の光が漏れている。アメリアちゃんとソフィちゃんの土地と同じくここにも雪は無い様だ。みなさんとても過ごしやすい場所に住居を構えていらっしゃいますね。

 いや、ソフィちゃんの住んでいる所だけは違うか……。


「さてと、ご自宅に伺い――あれ? まだみんな来ないし……何をしてるんだか……」


 しばらくゲートを眺めていたが一向に光る気配が無い。どうしたんだろうか、まだ園の方で揉めているのかな? イリアさん、寒いだろうに。仕方無い、もう一度園に戻って――


「やあ! カズヤせんせ!!」


「うわあっ!?」


 いきなり大声をかけられたので、声を出して驚いてしまった。こんな事をするのはあの人しかいない。


「ちょっとレイバーさん! びっくりするじゃないですか!」


 暗がりなので女性と言われても何の疑いも無い容姿がランタンの明かりに浮かんだ。まったく、この人は。


「はは、ごめんごめん。ちょっと遅いから保育園の方に行ってたんだ。なんか女性陣が揉めてたよ?」


 まだやってるんですね……もういいや、先にプレゼント渡しちゃおう。待っていたらイブでは無くクリスマスに突入してしまう。


「そうでしたか。すみません、サラちゃんを待たせちゃって」


「大丈夫だよ、美味しいケーキを食べていたところだしね。それに今日は客人も来ているからサラも退屈はしていないと思うよ?」


 誰……って世界記憶さんの二つ名を持つ方の所にきさくに来れる人なんて限られてる。きっとあの方達だろう。


 レイバーさんと並び、ご自宅へ案内され、お邪魔させて頂いたのだが、そこで想定外の光景を目にした。


「うわあ~! 本物のサンタさん来てくれたあ~!」


 元気な声を出して駆け寄ってきたのはサラちゃんなのだが、その光景に二度見した後、俺の目線はサラちゃんを通り越し奥の人物に向いた。


「御苦労様じゃのう、サンタさんや」


「今日は私達もお邪魔させて頂いているんですよ」


「ようこそ~、いらしゃいませ~」


 魔王夫妻、若いverと超絶お胸の持ち主のマオさんを発見。だがこれは想定通りのメンツであり、おじいさん達の姿に驚いた訳ではない。見た目が若いのに言葉使いが古風なのも前回の伝説の樹を取りに行く時の冒険で慣れている。もちろんそれも問題じゃない。問題なのは……。


「えっと、どうしてみなさん、そんな恰好しておられるのでしょうか……の?」


 危うく素で話してしまうところだった……だって……全員サンタコスしてるんだもん! え、何!? ダメじゃん、俺、完全に食われてるじゃん!


 しかも、しかもだ! おじいさんは構わない。俺と同じ感じのザ・サンタクロースだ。だが、おばあさん、マオさん、サラちゃん、貴女達はダメだ! それ、イリアさんが作った服、つまりうちの先生達が来ている服と同じデザインじゃん! 

 しかも露出全開verときたもんだ、マオさん! マジで事故おきますから! それにサラちゃん! 君にはそんな服はまだ早いから!

 しかしどうしてサンタコスの事を知って……ま、まさか!?


 咄嗟に後ろを振り返りレイバーさんを見た。もう完全に悪戯小僧の顔をしている……。しかもいつのまにかサンタクロースの衣装に着替えてるし……なんだここは、サンタクロースの家なのか?


『どうだい、今のサラも可愛らしいけど、大きくなると妻のマオみたいになるんだよ? ビフォーアフターだよ~。ダイナマイトバディだよ~』


 ぐああ、脳内に直接語りかけられて……ってちょっとぉ! 変な事しないで下さい! 何て事してくるんですか!?


「サンタさんの衣装ってとっても可愛いですねえ~。でもちょっとこの季節には寒いかしら~。でも魔法で調整すれば問題無いですね~」


 マオさんが自分の服を確かめるような仕草を! くっ! 見てはいけない! とっても問題ありますぅ! いろいろな物が見えてしまいますぅ!

 そ、そうだ、あれはメデューサだ! そう思いこもう! 一度見入ってしまったら石になってしまうんだ! 見てはいけない、見てはいけない、見ては――


『見てもいいんだよ~サラはあんな風になるんだよ~お買い得物件だよ~メデューサじゃないから石にはならないよ~』


 ちょっとお! 心まで読まないでレイバーさん! そんな事も出来ちゃうの!?


「わぁぁ……サンタさんだぁ……」


 サラちゃんが純粋無垢な目でこちらを見ている!? い、いかん、レイバーさんと遊んでいる場合では無い!


『酷いなあ~こっちは真剣だよ~?』


 嘘ばっかり……完全に楽しんでるでしょ? まったく……。


「今日はさくら保育園の先生達に頼まれてね、いつもいい子にしているサラちゃんにクリスマスプレゼントを持って来たんじゃよ」


 その言葉に飛び跳ねて喜び、こけた。安定のワンサイクルだ。


「だ、大丈夫かの? はい、これがプレゼントじゃよ。気を付けるんじゃよ、ふぉっふぉっふぉ」


 元気に起き上がったサラちゃんにプレゼントを手渡した。とっても喜んでくれているようだ。やっぱり何度見てもクリスマスプレゼントを渡す瞬間の子供の顔ってたまら――


「わ~い! 綺麗な箱もらった~!」


 いや、中身ね? 中身を見ようね? こんな真っ赤で派手な服着たおじいさんが夜にふらっと現れて、子供にただの箱を配ってたらただの変質者だからね。少なくとも俺ならばドン引きする。


「サ、サラちゃん、箱は入れ物で中身があるからの、開けてみてくれるかい?」


「そうなんだぁ~、でもサラ、この箱も大好きだよ~!」


 くうう、眩しい笑顔だ。だが、天然にも程がある……そんなに箱が欲しかったのか? 何か整理したい物でもあるのだろうか……。

 そんな大事な箱に施されたラッピングをジングルベルの歌を歌いながら紐を解いてる。園でもいつも歌ってくれており、大変気に入っている歌みたいだけどその歌の消費期限は明日までだからね?


「かっわいい~! アメリアとソフィとサラだぁ~!」


 三人の人形を持って抱きしめて走っている。サラちゃんも喜んでくれてたようだ。でもそんなに走っちゃまたこけ……たね。


「いてて……えへへ、サンタさん、ありがと~!」


 ああ、その笑顔に癒されます。疲れも吹っ飛びます。でも可愛らしいパンツが見えてますから早くスカート直そうね? ルーミィとか居たらどやされてたよ……。


『見たね~パンツ、見たね~』


 もういいですってば、レイバーさん……。確かに見ちゃいましたけど。


「良かったのう、サラちゃん。本物のサンタさんに会えて」


「いつもいい子にしてますものねえ」


 こ、このくだりは……そ、そうか!? サンタクロースの信ぴょう性を上げる為にあえてみんなサンタコスをしてもらったのか!? くうぅ、やはりレイバーさんは策士だな。完璧な作戦じゃないか!


『いやあ、そんなに褒められると僕、照れちゃいますよ~』


 あの……内緒の話をするには便利は便利なんですけど、普通に喋ってもらえますでしょうか? さっきから脳内会話しかしてませんよ?


「それでは引き続きご友人とご家族で楽しんで下され、良いクリス――」


「サンタクロースさん! ごめんね! 遅れちゃ……った……」


 ルーミィが勢い良く飛びこんで来たと思ったら、力無く床に座りこんだ。その目には既に光は失われていた。

 とりあえず人様の家だからノックはしようね。勝手に入ってきたら不法侵入になるからね? それはそれとして、ルーミィの視線の前に集まるのは露出全開の女性陣。特にマオさんの方を向いているような……同じ服でも着る人が変わればこうも変わってしまう現実を突き付けられたのだろう。


「うう、寒い――ルーミィ、どうしたんだ!?」


「ルーミィ様! いかがなされました!?」


「あらあら、ルーミィちゃん、大丈夫~?」


「どうされましたかルーミィ先生~、疲れが出ちゃいました~?」


 ルーミィを囲む豊満サンタガール達……やめてあげて! 原因は貴女達のボディだから! おばあさんも結構グラマラスだし、そんな人達に囲まれるなんもはや死体蹴りですからね?


「ううぅ……い、いやあ~ぁ!!」


 起き上がって走って出て行っちゃった……あ、ゲートの光が。


「お、お騒がせしました! それではメリークリスマス! お邪魔しました!」


「ばいば~い! サンタさ~ん!」


 セクシーミニサンタガールのサラちゃんに手を振り、親御さんと魔王夫妻に会釈してダッシュでゲートの方に向かった。もう、忙し過ぎないか、このクリスマスイブ!


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