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異世界268日目 12月24日(火) ⑦爺やさんは出来るドラゴン


「はい、ソフィちゃん。クリスマスプレゼントじゃよ。メリークリスマス!」


 爺やさんのおかげで脱線しかけた話が戻って来たのでこじれない内に早々にプレゼントをソフィちゃんに手渡した。

 しかし、おかしいな。あのロールさんが先程から一切話に噛んでこない。一体何を――あ、なんかイリアさんと意気投合してる感じが。きっと衣装について話してるんだろうな。ロールさんもイリアさんと同じぐらいグラマラスだし。


「……ありがとう。開けてみてもいい?」


「もちろんじゃとも。気に入ってくれるかのう?」


 手に持ったプレゼントのラッピングを丁寧にほどいていく姿が目についた。この辺りは性格が出るな。アメリアちゃんに至っては破り散らかしてたもんな……その脇でフレーズが即片付けてたけど。


「可愛い!」


 お、ソフィちゃんのストレート感情表現頂きました! 園児達のデフォルメ人形をまとめて抱いて真紅の目を輝かせている。


「ありがとう、サンタクロースさん!」


 ふ、まさかのワンツーとは。和也サンタはもうメロメロですぅ~!


「ん!? 和也、だらしない顔しないの!」


「そうですよ! カズヤ様!」


『……』


 広い応接室に無言のなんとも言えない空気が漂った。いや、厳密に言えば向こうでイリアさんとロールさんが楽しげに話をしているが。


「……カズヤ先生?」


 なんで!? なんで普通に呼んじゃうの? 今のは完全にバレたじゃん! 二人を見ると『あっ』という表情を浮かべながら目線をあさっての方に向け、頬をポリポリしてる。頼みますよ……サンタガールさん達。


「ソフィお嬢様、ルーミィ先生とレイン先生はきっとカズヤ先生のように優しい笑顔をしているサンタクロース様をつい間違えて声をかけてしまったのでしょう。そうでございますよね?」


「う、うん! そうなんだ。間違えちゃった! あはは」


「カズヤ様のような笑顔をなさっておりましたのでつい!」


「……サンタクロースさんもカズヤ先生と似てる……だからソフィ好き……また来て欲しい」


 これは後で爺やさんには何か別の形でお礼をせねばならないな。この件は借りにさせて下さい。


「何をやってるんだ、ルーミィにレイン。ほら、次はサラの所に行くんだろ?」


「まあ、可愛らしいお人形さん! 良かったわね、ソフィの宝物が出来たわね!」


 どうやら二人の方も話に一区切りついたようでこちらにやって来た。そう、あと一軒あるんだ。早くしないと日付が変わってしまう。


「ふぉっふぉっふぉ。それじゃあ次はサラちゃんの所に行かなければならないので、私はそろそろ行かせてもらうとするかの。それでは皆さん、良いクリスマスを!」


 古龍夫妻に挨拶をして爺やさんにパレスの玄関口まで送ってもらい、再びドラゴン化した爺やさんの頭に乗せてもらった。

 尚、行きのイリアさんのパンツ丸見え事件をレインに指摘され、今度は俺が一番最初に乗せてもらったのだが……。


「じゃあルーミィを連れてくるよ」


 爺やさんの頭上からから飛び立つイリアさん。その際少し上空に飛んで降りて行ったのだが、その時もまたパンツが見えた。これ、後でも先でも同じじゃん。必ず見える仕様になって――


「カズヤ様……」


 ふわりと宙を舞い、クラウチングスタートのような態勢で着地したレインが顔をこちらに向けて来た。その目はまるで獲物を狩るハンターの目であった。お姫様がそんなお顔をなされてはいけません。これは不可抗力です。


「うん? どうしたのレイン?」


「カズヤ様がまたイリア様のパンツを見ておりました!」


 速攻でチクった!? 


 イリアさんにお姫様抱っこされたままのルーミィの表情が一気に曇った……いや、あの……美女と美少女のお姫様抱っこって絵面的に最高ですね。はは……。


「カ、カズヤ、そ、そんなにあたしの事を……でもカズヤになら……構わない……いっそのことパンツの下も見せて――」


「そこになおりなさい、寿さん、イリアさん」


 やめてぇ! ここは爺やさんの頭の上なんですよ! というかイリアさん、さっきから一線超え過ぎです。保育園のイベントなんですよ!? 大人のイベントじゃないんですから!


 結局無の境地に至ったルーミィにより、俺とイリアさんは正座する羽目になった。史上初ではないかと思う。レッドドラゴンの頭上で正座させられる人間は。


 そんな最中、爺やさんが話しかけてきた。


「どうやら、ソフィお嬢様は最初からお気付きのようでございましたね」


「えっ?」


 嘘? じゃあ、この茶番劇に付き合ってくれていたって訳? 


「こんなに完璧な変装でも分かっちゃうんだ」


「確かに、これで気付かれてしまうとなると、どうしようもありませんね」


 なんか仕方無いよね。的な感じで二人共お話されてますが、貴女達は普通に俺の事名前で呼んでたじゃないですか。


「あの子、とっても優しい子だな」


 イリアさんの方を見るととても暖かな目をしていた。ソフィちゃんは何度もイリアさんには会ってはいるが、それでも性格までをしっかり見抜くとは。しかもその包容力のある笑顔。


「ちょっと! なんでそんなにイリアさんばっかり見てるの! 目隠しするよ!?」


「私からも何度もお伝えしておりますよ!」


「ふふ、焼くなよ二人とも……なあカズヤ?」


 二人して正座させられているのになにやら同意を求めて来た。どうしてそうなっちゃうんですか? それにイリアさん、今は正座中ですよ!? 挑発的な態度はお控え下さい! 


「カズヤ先生はどなた様からも慕われておりますな。旦那様達の他にも白銀狼様、世界記憶様までからも好かれる人物など私は存じ上げません。偉大なお方にございます。それと将来が、大変でございますね、ほっほっほ」


 もう、爺やさんまで……しかも『楽しみ』じゃなくて『大変』というのがなんとも。まあ、知り合いが原則、神様もしくは神様以上の方が多いのは認めますが。


「ちょっと、和也! 反省してるの!? ほんとに今日はイリアさんばっかり見てるよ!?」


「はい! しかもお顔や体も! あ、あげくパンツまで!」


「ちょ、ちょっと二人共!? ここは爺やさんの頭の上ですよ!? 場所をわきまえてですね――」


「ああ、幸せだな……なあ、カズヤ……」


「イリアさん!? もうさっきから!」


「お気になさらないで下さい、私も賑やかなのは嫌では御座いませんので。それにしてもカズヤ先生はおモテになられますな」


「爺やさんまで!? モテませんよ! 俺はただのおっさんなんですから!」


「うん、そうだね。その上、ド変態でドスケベだもんね」


 酷い……その後も散々爺やさんの頭上で賑やかな話声がクリスマスイブの夜空に響いていた。


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