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異世界268日目 12月24日(火) ⑥ロールさん、爆進!


 ソフィちゃんのゲートをくぐると、地面に石畳が見えた。暗がりでこの光景を見るとほんと永遠に続いてるかのような錯覚に陥るな……。

 既に三人は爺やさんと挨拶を交わしているところであった。やはりこの地域も雪は積もっていないようである。


「いらっしゃいませ、カズヤ様。そちらがサンタクロース様のご衣裳でございますか」


 爺やさんの持つランタンの光がサンタ&サンタガールを照らしている。ちなみに中に入っている光は炎では無い様だ。あれはオータムフェスでナーシャさんが使っていた光源と似ている。

 魔法ですね、でもわざわざランタンの中に入れて風情を演出している訳ですか。発想がとてもおシャンティです。


「すみません、お待たせしてしまいましたか?」


「いえ、私も先程着いたばかりでございます」


 そうは言ってくれてるけどきっと待たせちゃったんだろうな……ルーミィとレインに話している時間もあった訳だし。


「それではソフィお嬢様がお待ちですのでどうぞお乗り下さいませ」


 爺やさんが赤く輝くと巨躯のドラゴンが目の前に現れた。ソフィちゃんのお家は遠いからね。爺やさんに送ってもらわないと年が変わっちゃう。


 今回はイリアさんが居るので爺やさんの顔を踏む必要は無い。ルーミィをお姫様抱っこしてひとっ飛びで……あ、ジャンプするときにパンツ見えた。


「カ・ズ・ヤ・様!?」


「ひっ!」


 レインが腰に手を当てて限りなくゼロ距離で俺を睨んきたぁ! 視界には碧と黒の瞳しか入ってこない上、何気に近いんですけど!? 当たりますってば!


「ん? どうしたんだ?」


「イリア様、カズヤ様をお願いいたします。私は助走をつければあの高さなら飛べますので」


 そう言うと少し下がり、掛け声とともに見事に爺やさんの頭に上に着地した。異世界のってお姫様すげ~。


「なんかレイン怒ってたが、なにかあったのか?」


 貴女のスカートの短さが原因です。パンツですよ、パンツ! その真っ白なやつのせいです! 暗闇の中のであんまり見えませんでしたけど。


 全員が頭上に乗ると爺やさんはゆっくりと舞い上がると同時に、呼吸が出来るように例の魔法もしっかりとかけてくれた。これがないと着いた途端酸欠で死ぬ。

 上から目線になるので決して口には出さないが、超優秀です! 流石は執事界のレジェンド! 仮に白銀狼さんがエスコートしてくれていたら確実に『うっかり』で同じ事をしてくれるだろう。




「な、なんと壮観な……こ、これがソフィちゃんのご自宅でございますか……」


 爺やさんの遊覧飛行でパレス上空を漂っている所、レインから感嘆の声がこぼれた。流石のレインもソフィちゃんのお宅、通称パレスを見て驚愕の表情を浮かべている。まあ、そういう俺も何回見てもこの白色に統一された芸術的建物には驚かされるもんな。

 それに夜に伺うのは初めてで、白を基調とした建物に暖色の明かりが灯り、日中とはまた違った神秘さを感じる。

 夜のライトアップは温かみ溢れる感じだな……なんか和んじゃう。


「お、おい……このレッドドラゴン、以前会った古龍と大差無い潜在能力を感じるんだが……」


 イリアさんの神妙な面持ちで問いかけて来た。まあ、執事界のレジェンドとも呼ばれていますからね。それに執事さんが強いのは白銀狼さんの所も一緒である。今更驚いていても仕方が無い。


「わぁ~、夜のソフィちゃんのお家って神秘的なのに家庭的な温かみもある感じになってるね! あ、あそこに居るのロールさんじゃない?」


 ルーミィはすっかり慣れたのか至って通常運行である。当初はレッドドラゴンに乗っただけで震えていたのに。適応性が高いのもルーミィの良い所ではあるな。


「それでは着陸いたします。揺れる恐れがありますのでご注意下さいませ」


 尚、揺れなど微塵も感じなかった。以前ソフィちゃんの背に乗せてもらったが、正直航空技術はその比では無い。まさに神がかってるな……あ、神よりも上の存在でしたね。


「いらっしゃ~い! サンタクロースさん! 今日は遠い所に来てくれてありがとうございますぅ! さあ、狭い所ですが中へどうぞ~! それにしても可愛らしい服ですねえ~! 色合いもレッドドラゴンっぽいですし、私も一着欲しい~! でも私に似合うかしら、皆さんお若いですもんね。でも露出も高いから旦那もきっと……うふふ! ソフィがお姉ちゃんになるかも! あ、そうなったらまたさくら保育園に入園させなくちゃ!」


 出会った途端に繰り出されたマシンガントークが止まらない。テンションアゲアゲのロールさん……完全に浮かれておりおますね。それに玄関の前で待っていてくれたんですね。

 後、ソフィちゃんの妹さんをご所望ですか……ご夫婦仲がよろしいようで。


「奥様、ご歓談はパレス内にてごゆっくりと。旦那様とソフィお嬢様も待ちですゆえ」


 ぺこりと頭を下げ、ごもっともな事を代弁してくれた。爺やさん、貴方のおかげでレッドドラゴンさん一族は支えられているのではないでしょうか。




 人用通路からパレス内部に招かれ、レッドドラゴンさん曰く狭い所に案内されている。ぶっちゃけこの応接室も広過ぎるんですけどね……。


 応接室の扉が開かれると、一番手前の席で待っていてくれているバストラさんとソフィちゃんが居た。 


「……先生達、可愛い服着てる」


 どうやらルーミィ達のサンタコスが気になるようだ。レッドドラゴンだけに赤色が好きなのだろうか。まあ、ブラックドラゴンなのに白色が好きな変わった人も知っているが。


「よくぞ参られた、歓迎いたす」


 バストラさんから言葉が投げられた。その姿は威風堂々、まさにこの言葉が似合う方だ。


「……爺やの友達? でもレッドドラゴンでは無い……カズヤ先生?」


 俺の方を見て首を傾げている。バレてる!? この完璧な変装で!? どうして!? まだ何もミスを冒してないよ!?


「いいえ、ソフィお嬢様。この方は私の知人にあたるサンタクロースと呼ばれるご老人にございます。彼は世界中の幼き子供にプレゼントを配るというお仕事をされており、今宵はお嬢様の元に来る為にさくら保育園の先生方と参られた次第にございます」


 爺やさん……いい! すごくいい! 完璧じゃ無いですか! お便り帳にサンタクロースの仕組みを書いておいたんだけど、ちゃんと爺やさんも見てくれてるんですね。


「ふぉっふぉっふぉ、カズヤ先生は保育園残ってスライム料理を作っておったぞ? じゃが、カズヤ先生からもお願いされたのじゃ。さくら保育園のみんなはいい子じゃからのう」


 そう言いながら袋からプレゼントを取り出そうとしていた所、衝撃的な言葉を言い放った。


「……カズヤ先生は将来の旦那様、ソフィが大きくなったら番になる人」


 いや、あの……みんなこっちを見ないで。俺はサンタクロースだからさ。カズヤ先生じゃないからね?


「ソフィよ」


 おお! バストラさんが珍しくロールさんよりも早く会話参戦した! 上手い事言って下さいよ!


「父に任しておけ。この世の全ドラゴンを集結させた式を用意しよう。そして今ここで我が古龍の肩書きをソフィに託そうぞ」


 託さないで! ダメですから五歳の子供が古龍を襲名しちゃあ!


「旦那様、古龍の名は重く常に危険と隣り合わせにございます。ソフィお嬢様をお思いになられるのであれば、成龍となり歳月、そして然るべき力を備えるその日まで旦那様が持ち続ける事がソフィお嬢様にとって幸せかと存じます」


「そうであるか。それがソフィの為になるというのであれば、今しばらく古龍の名を背負おうぞ」


 爺やさん、貴方は神です……。いや、元々レッドドラゴン自体が神以上の存在でしたね。後、その勢いで番の件もなんとかして頂けませんでしょうか? 


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