異世界268日目 12月24日(火) ①さくら保育園のクリスマスパーティ
「じんぐるべ~る、じんぐるべ~る、鈴が~鳴るぅ~♪」
ご機嫌に歌を口ずさみながらサラちゃんが座って頭を左右に動かしているのだが……なんだ、この可愛らしい姿は。おっさん胸キュンしちゃうじゃないか。
アメリアちゃんとソフィちゃんも今日は朝からテンションが高く、部屋の飾りつけなどをはしゃぎながら行っている。なにせ今日は待ちに待ったさくら保育園のクリスマスパーティなのでみんなノリノリだ。
森で遭難するわ、狼さんに襲われて死にかけたりもしたが、なんとか元気にクリスマスイブを迎える事が出来た……。
神様、感謝いたします! 主に上司さんと一応ルーミィにも!
「レインせんせ~!『くりすますつり~』はこっちに置くんだよ~!」
「は~い、ここでいいですか? アメリアちゃん」
アメリアちゃんが尻尾をふりふりしながらレインを誘導している。その手にツリーが持たれており、メイン会場となる遊戯室の真ん中に移動させるみたいだ。しかし、レインは姿勢良くツリーを持っているのだが超お胸ちゃんが前に出過ぎている為、ツリーが接触事故を起こしている……。
「和也先生、手が止まってるね? 今日は一人お外で食事する?」
今日も雪がチラついていますし、積雪も結構あるのでちょっと外は厳しいかな~って。昨日から十分雪には埋もれてるので暖かいお部屋で食べたいです……。
「さ、さあ、みんな! こっちにおいで~クッキーを作るよ!」
しっかりお仕事しないと! このままでは本当に外でシングルクリスマスパーティをする羽目になりかねない。
とはいうものの、料理やクッキーの下準備は既に出来ており、イリアさんも手伝ってくれたおかげでケーキも完成している。今日は朝四時半に起きて段取りしたので流石にちょっと眠いのだが。
イリアさんか……昨日の夜のあのギャップ、正直キュンときたなあ……。
「カズヤ様、園児達がお待ちですよ? どうされましたか?」
完全に不信感を持った目でこちらを見られている。碧色の瞳がいつもより輝いているように見えるんですけど。レインも最近目ざとくなって来ましたね。
やはり十六歳になると違いますね、よりルーミィに近くなっていますよ?
「い、いえ! じゃあみんな、キッチンに行こうね~! しっかりお手て洗うんだよ~」
『は~い!』
園児達にはすでに作ってあるスライムクッキーの生地で好きな形を作ってもらう事にしている。もちろん、お土産分も忘れてはいない。今回のスライムクッキーはクリスマスデコレーションをする予定だ。
きっと親御さんも大喜びするだろう。もちろん、お便り帳には例の定型文を添えてある。『保育園の備品、お土産は一族の秘宝等にしないで下さい』と。
ただ、アメリアちゃんの話を聞くと徐々に保育園グッズの展示が増えてきているらしい。もちろん全部では無いらしいが、お土産の類は確実に一つは保管しているそうだ……まあ、親バカとしての領域をギリギリだが出ていないし、あの広い家ならもういいかな? なんて思い始めている。
「それではここはルーミィ先生とレイン先生にお任せしますね。私は料理の仕上げに取り掛かりますので」
「うん! 任せて! で、出来るだけ早くね!」
「私もケーキが楽しみです~!」
この二人、園児達よりも食欲に従順だ……よだれ、クッキーに練り込まないでね?
≪≪≪
鳥肉の焼ける香ばしい匂いに調理している本人でさえ食欲をそそられる。その傍らでは揚げ物が油の中で踊っており、野菜の旨味が溢れ出たコンソメスープがコトコトと小気味の良い音を立てている。
先程刻んでおいた色鮮やかな野菜を皿に盛り合わせ、ドレッシングをふりかける。見た目、香り、味、どれをとってもパーフェクトだ。
「……カズヤ先生……クッキー出来た」
ソフィちゃんの小さな手にはホワイトチョコでデコレーションされたクッキーが乗っていた。
「お、上手に出来たね、かわいいお花のクッキーじゃないか」
やはりこの世界のドラゴンさんは器用なのだろう。ルーミィには流石に及ばないものの、素晴らしい出来栄えだ。完全に五歳の子が作れる代物じゃない。確実になにかしらの賞は取れると思う。
「……そのお花はカズヤ先生にあげる分……頑張って作った」
よし、これは牧場に持って行って賢者様に永久保存の魔法をかけてもらう事が確定した。
「どうしたの~? ソフィ、お顔赤いよ~?」
ソフィちゃんの背に隠れていたのか、ひょこっと銀色のケモミミが飛び出してソフィちゃんの症状を教えてくれたのだが……こ、これって!?
「カ、カズヤ先生……子供には手を出さないとおっしゃられていたのに……」
レイン……その『信じていたのに裏切られました』的なお顔はやめましょうか。しかし、ソフィちゃんが少しおませちゃんになって来ているような気がする……。
まずい、まずいぞ!? 女の子ってこんな年ごろから恋愛上手とかになっていくの? 既におっさんよりもアプローチ力は上だし……。
ルーミィもレインも最初の頃に比べてぐいぐい来るようになったし。ルーミィなんてお酒の力を借りてた頃ぐらいの事がデフォになってるぐらいだ。
こ、これが女の子の成長か……しかしまあ、こんなおっさんの何処がいいんだろうか……。
「レイン先生、なんでもありませんので大丈夫です。さあ、それではお料理も出来ましたので始めましょうか。さくら保育園のクリスマスパーティを!」
次々と運ばれる料理に園児達と先生方から歓声が上がる。尚、ルーミィとレインには園児達が食事中にこぼしてしまったり、喉に詰まらせたりしないように園児達と一緒にテーブルに座ってくれている。
……という解釈でいいんだよね? 一見するとおっさんが一人で段取りしているようにも見えるけど、しっかり二人は先生の役割を果たしてくれているんですよね? 信じていいですね?
みんな料理を楽しみにしてくれているので構わないんですけどね……。
「さあ、お待ちかねのクリスマスケーキですよ!」
真っ白なホールケーキが登場すると、再び歓声が上がった。園児達は力作のケーキを見て目を輝かせている。その後ろでルーミィは口元を拭っていたのを俺は見逃さなかった……。
「さあ、皆さん、いただきましょう! 今日はいっぱいおしゃべりしながら楽しみましょう!」
開始の合図と共に園児達も先生も楽し気に食事と会話を楽しんでくれている。さくら保育園の遊戯室も賑やかになったものだ。そんな和気あいあいと楽しむ和やかな風景に混ざり込むのもいいが、眺めるのもまた一興かと思い手を止めて周囲を見渡した。
口の周りにこれでもかという程に生クリームが付いているアメリアちゃん。この子は基本、口の周りに付いちゃうな。別に犬食いしてる訳では無いんだけど。
その横で揚げ物を小さな口でパクついているのはソフィちゃんだ。この子は唐揚げが大好きだからなあ。しかし相変わらず可愛いらしい食べ方だ。
サラちゃんは鳥の照り焼きにかぶりついて幸せそうな顔をしている……この子エルフだよね? 食べ方がとってもワイルドで外見と一致しないんですけど。しかも野菜には一切手を触れていない。ちゃんと食べないとダメだよ?
ルーミィとレインはケーキに夢中になって一心不乱に食を進めている……園児達をしっかり見てね? もう完全にゲスト扱いになってるからさ……。
「カズヤせんせ~もいっしょにたべよ~!」
「……美味しいお料理……冷めちゃう」
「はい! カズヤ先生の分だよ~」
まさか園児達に気を使われるとは……でもねサラちゃん。カズヤ先生の分をお皿によそってくれるのはとっても嬉しいんだけど、全部野菜だね? 偏食してると大きくなれないよ?
まあ、大きくなってるみたいだけだどさ……。




