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異世界267日目 12月23日(月) ⑤最高のクッション


「ふわあ……」


 目が覚め、あくびをひとつした。どうやら結構な時間眠ってしまっていたらしい。窓を見るとすっかり夕暮れを通り越し、ほとんど夜になってしまっていた。

 しかし、体の調子はすこぶるいい。あの聖水の効果は絶大だな。それにこのソファーのクッションも気持ちいいからリラックス出来……ん? クッション何て使ってたっけ?


「お、お目覚めでしょうか……カズヤ様……」


 体の態勢が変わらぬよう両腕で俺の体を優しく支えてくれており、見上げたその顔は恥ずかしさを我慢している事が伺える。まあ、当然だろう体はレインの体にもたれかかり、俺の顔は胸に埋もれてる訳だから……。


 乳枕!? ね、ねえ! 起こそ!? そういう時はすぐに起こそうよ!?


「す、すみません! む、胸に!」


 すかさず体を起こし超お胸ちゃんと即刻別れを告げた。な、なんて事をしてしまったんだ……相手はこの異世界のお姫様だぞ!? 


「あ……いえ、気持ち良さそうにお眠りでしたので、お、起こせなくて。で、でも私も幸せでしたのでご心配には及びません……はふぅ……」


「いや、あの流石に胸に顔を押し当てるのは――」


「へえ……和也、そんな事してたの?」


 あ、起こしちゃいましたか……寝起きドッキリですね。え、この至近距離でいきな――ぎゃあ!! 痛い!! 引っ掻かないで! か、顔はやめて! 狼さんですら顔は許してくれたよ!?


「このド変態っ!!」


「ぎいいやぁぁあ!!!!!」


 渾身の一撃が顔面を切り裂いた……またもやルーミィに引っ掻かれた……床で転げ回るおっさんの姿を見てレインもおろおろしてるじゃないですか……。

 うう、またしてもおっさんの顔が傷だらけなってしまった…。


「カズヤ、ウィンターフェス用の食材と衣装を持って来たぞ。というか何故床に転がってるんだ?」


 ああ、その声はイリアさんですか。もうすっかり良くなったんですね。聖水の効果もあるかと思いますが素晴らしい回復力ですね。

 ですが最早チャイムどころか普通にリビングにまで入ってくるんですね。


 痛みをこらえてなんとか起き上がり、イリアさんの方を向くと相当機嫌が悪い事が見て取れた。完全に目が座ってる……。


「あ、ありがとうございます。もう体調は宜しいのですか?」


「ああ。だが、まずはその血まみれのボロボロの服の説明をしてもらおうか? 顔の傷も相当酷いじゃないか」


 しまった……あまりの睡魔に負けて着替える事もせずに……ですが怪我は今朝全回復したんですよ、顔の傷は今先程ルーミィに付けられたんですぅ……。


「は、はい。でもその前に随分と汚れてしまっているのでお風呂に――」


「今すぐにだ」


 こ、怖い……。ルーミィとレインもすかさずソファーから離れ、手を取りあってこちらに憐みの目を向けている……お願い、助けて……折角助かった命が消えちゃう……。



≪≪≪



「なんでそんな危険な事をしたんだ!? いや、あたしのせいか……くっ!」


 事の一部始終をイリアさんに次げるとますます機嫌が悪くなってしまった……怒りの矛先を何処に向けたらいいのか分からなくなっているようである。


「いいんですよ、みんな無事だった訳ですし。さあ、明日は園のクリスマスと終業式がありますからね。昼間さぼってしまった分、今日は徹夜覚悟で料理を作りますよ! クリスマスケーキもね!」


「何を言ってるの! さっきまであんなに血を流していたのに!」


「そ、そうだぞ! 顔の傷はまだ治ってないじゃないか!? でもさっきの話じゃ傷は治したんじゃなかったのか?」


 あ、これはさっきルーミィに付けられたんです。酷い話です……。


「カ、カズヤ様、傷を治させてもらえませんか?」


 あ、そうっだった。レインも回復魔法が使えるようになったんだっけ。それにあの時、もしレインがいなければ俺は死んでいただろう……考えるだけでも恐ろしいな。


「そ、そうですね。これからお風呂に入るので染みてしまいますからお願い出来ますでしょうか? ちょっと服が汚れていますが……」


「は、はい! 大丈夫です! そ、それでは……」


 いきなり上着を脱いで中に着ているシャツのボタンを顔を赤らめながら手をかけた……何してるのこのお姫様は?


「待て、レイン。なぜ服を脱ぐんだ? 回復魔法とは服を脱がないと発動出来ないものなのか?」


「ちょっとお待ち下さいね。レイン、とりあず服は着ておきましょう。そして怪我の治療は構いませんから私がお風呂に入っている間にイリアさんにご説明してあげて下さい」


 もう切り傷の痛みぐらい我慢しよう……狼さんに襲われた痛みに比べれば、こんなのいくらだって我慢出来る。




「痛てて……でもさっぱりしたぁ」


 傷の痛みを感じながらも汗と血にまみれた体を綺麗に洗い流し、とてもフレッシュなおっさんになった。尚、残念ながら、服は全て廃棄だ。後でもう一度コートをオーダーしなければ。


 リビングに戻るとこたつに入って盛り上がっている三人が居た。イリアさんは初だと思いますが、それ暖かいでしょ?


「あ、カズヤ様! お怪我をお治し致しますね!」


 こたつの方に近づくと、さっそうとレインが立ち上がった。ちゃんと説明してくれたかな?


「しかし、ルーミィは狂暴だな。あたしが知る限りでカズヤの顔面が傷だらけになるのは三回目だぞ?」


「ううぅぅ……だって和也がぁ……」


 そこは大体俺のせいなので許して上げて欲しいが、それと同時に手加減もお願いしたいところである。せめてビンタとかにして欲しい。


「そ、それではカズヤ様、失礼します……」


 レインが柔らかいものを二つ押し付けて来た……やっぱり回復魔法ってくっつかないとダメなんですね……サラちゃんにしてもらう回復魔法と違って恥ずかしさが半端じゃ無い。もはや卑猥な領域だ……。

 しかも前から抱きつくんですね。俺の薄れ行く記憶の片隅では確か後ろからくっついていてくれた気がするのですが……まあ、サラちゃんも前からくっついてきますが。


「あ、あれ……お、おかしいです、先程はこれで出来たのですが、も、もう少し強く抱きしめさせて頂きますね……」


 ああ、ダメ! そんなにむにゅむにゅしないで!? おっさんも男の子だから! マイ・サン起きちゃうから! 接触しちゃう! 落ち着け、マイ・サン! お前はまだ寝てるんだ! 起きるな! いいから寝てろ!!


「あの時はもっと強く抱きしめていたかも……もっとくっついてみます! ん……カズヤ様と……こんなに……は、恥ずかしいですけど、なんだか心地良くなって……こ、このままずっと……」


 おうふ……レイン、なんかうっとりしてません? それになんか小さな声で関係無い事をおっしゃっていませんでしたか? まさか確信犯じゃないよね?


 マイ・サン……今しばらく、お願いだから落ち着いてくれ!! 今ここで接触してお前の存在を誇張させようものなら、ルーミィとイリアさんにお前の存在がバレて……引きちぎられるぞ!?


 ……自分で言って少し寒くなった。おかけで落ち着いたけど。


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