14話 さよなら
それから元気は何度もテーターに電話をかけたが繋がることは無かった。僕と愛の携帯からもかけたし、公衆電話からも試したが彼女は出なかった。ひょっとしたらテーターは自分のために兄を説得している最中に殺されてしまったのではないかと、元気は夜な夜な泣いていた。
僕らはテーターが心配で一睡も出来ぬまま最終日の朝を迎えた。元気も愛も寝不足で酷い顔になっていたが笑うことなど出来なかったし、テーターの無事を確認できるまでは食欲もなかった。他の参加者達に酷い顔だと笑われたりしたが言い返したりする気も起きなかった。
僕らはお別れ会を開いてもらったが、元気は今は無理だと言って参加しなかった。僕と愛は参加したが、喜ぶフリをしているのが苦痛だった。苦痛な時間というのは長く感じられるものだが、そんな長い時間が経ってもテーターは戻っては来なかった。
お別れ会を終えて、部屋の片づけをした僕らは空港へ向かった。帰りの飛行機の時間までは2時間以上あった。他のみんなはお土産を買いに広い空港の中へ散らばっていった。
「結局会えなかったな」と元気は不満を漏らした。
「お別れも言えてないからな」と僕は同調した。
「オレ、将来サッカーで有名になってアメリカにイベントとかで来たときにでもプロポーズしようとか思ってたんだぜ」と元気は言った。
「It would be a good if me at that time」と聞き覚えのある声がした。
「テーター!!!!!!」と元気は一目散に彼女の下へ走った。
僕らもつられて立ち上がった。
テーターの横には覆面の男が2人いた。片方は車椅子に座って何かをいじっていて、もう片方はその車椅子を押していた。そして、テーターは横の男に何かを指差していた。彼女の視線の方向にいたのは元気ではなく僕だった。彼女の口元がなにやら少し動いた。「I'm sorry」と言っているように見えた。どうしてだろう、謝るなら僕より先に元気に謝るべきではないだろうか……
横から愛の声がした。何を言っているのかよく聞こえない。今テーターとの再会以上に大事なことがあるのか?と少し苛立ちまで覚えた。そういえばさっきから時間がゆっくりに感じる。元気は随分前にテーターの元へ走ったはずだが、まだ辿り着いていないようだし、愛はまだ何かを叫んでいる。僕は少し視線をずらして愛が叫ぶほどのものが何かを探ってみた。テーターの横に立っている、覆面の男が銃を構えていた。ああ、そういうことか。僕はテーターのごめんの意味、そしてこれから自分に何が起こるか全てを察し、その運命を受け入れた。
「さよなら、愛」
「バァン!!!」と相馬一生は撃たれた。彼は朦朧とした意識の中で、まだ生きたかったと強く想った。
そして彼は歩み始める。彼が辿るべきであった本当の道へと。




