12話 真実
滞在2週間目に入った。残り滞在期間は一週間だ。卒業式近くになると今まで話したことない人ととも仲良くしちゃう現象が起こるが似たように今まで話したことのない人たちとの会話が増えた。その要因は時間の問題もあるが、僕ら4人の中から一人が欠けてしまったからだろう。テーターが10日目以降来ていないのだ。それと元気が名前に似合わず元気でなくなってしまっている。ここに因果関係があるのは明白だ。ただ、元気に聞いてもテーターに関しては教えてくれなかった。「あいつはオレのために頑張ってくれてる」とただそれだけ。
僕と愛はそんな二人が心配で自分たちのことなど後回しになってしまっていた。もっと仲を深めようという目的もあって参加したにも関わらず手をつなぐ以外は全然だ。2人でいる時間は長いにもかかわらず……
そして滞在20日目、残るは明日となった日の昼のことだ。僕と愛は2人でカフェテリアにて食事を取っていたところ、テーターの名前を2人の男の会話から聞いた。僕と愛は悪いとは思いながらも聞き耳を立てた。聞いているとテーターが兄の仇と付き合っているとのことだった。テーターが付き合ってるのは元気じゃないのかという疑問が僕ら2人に真っ先に浮かび上がった。
続きを聞いていると、テーターの兄がまだ18歳にしてアメリカの年代別代表だけに留まらずA代表にまで選ばれているほどの超天才司令塔のジーニーであり、アメリカサッカー界の希望の星と称されているらしいのだが、その兄を再起不能の大ケガである下半身不随に追いやったのが元気なのだという。ただ、彼らの話を聞く限りだと元気はファールで兄を倒したのは事実だが、下半身不随の原因となる脊髄損傷にはそれだけではなるはずもなく、後ろからアメリカの選手に押されて踏んでしまった結果だという。
「ねえ、ひょっとしてだけどテーターが居ないのってその所為かな?」と愛が小声で言った。まさかとは思うが、そのまさかだった場合はこの2人の証言がとても重要になると思う。
「後でそれとなく元気に聞いてみようか」と僕は言った。愛は無言で頷いた。
僕らが食事を終えてゴミを捨てに行こうとしていたところ、元気が1人食事にやってきた。僕と愛は腹が一杯であったがもう一度注文の列に並んで元気と合流した。流石になにも買わないのは申し訳ないのでコーヒーを一杯頼んだ。
「なあ、元気」と僕は元気に話しかける。「なんだよ?」とぶっきらぼうに元気は返してきた。
「お前が一番心に残ってる試合っていつの試合だ?」と僕は聞いてみた。愛は無言でナイスと親指を立てている。
「そうだな、オレの代表デビュー戦でブラジルと戦って無失点に抑えて引き分けに出来た試合かな、あの試合は緊張もしてたはずだし、全然動けないかなって思ってたのにピッチの上から自分を操作してるみたいに動けたんだ。ゾーンってやつに入ってたのかも」
「その試合はニュースにもなってたよね!!凄いなって思って見てたよ!!」と愛は褒めたたえる。元気は少し恥ずかしそうにして喜んでいた。
「じゃあ、悪い意味で心に残ってる試合は?」と僕は思い切って聞いてみた。
「そうだな、やっぱお前らには話すか。オレが日本代表としてアメリカ代表と戦った時さ、相手にテーターの兄貴のジーニーがいて、大ケガさせちまったんだわ……」
やっぱり!と僕と愛は顔を合わせた。
「さっき男子2人が話してたんだけど、その試合を見てて元気のことを後ろから押した奴を見たって言ってたんだ」
「なんだって!!!!誰だ、誰だよそいつは!!」と元気は机をバンと叩いて立ち上がった。
「アメリカの20番の控え選手、さっき調べたけど、元は10番つけてジーニーと同じ司令塔だったけどジーニーの台頭で背番号もポジションも奪われたって奴だよ」
「20番……アウクトゥってやつか!!」と元気はピンときた様子だった。「今すぐテーターに知らせないと!!!」と元気はテーターに電話をかけた。
「……くそっ、どうして出ないんだよテーター……!!」
そういえば、テーターっていうのはドイツ語で犯人って意味だったりします




