第7話 曲芸旅と美食の日々
星見の森を抜け、俺たち――8歳の女の子エルちゃん、キラキラ鱗のミニドラゴンである俺、カウル、別名「ピニャ」、そしてクールな女剣士アレナ――は、王都カルタルタスを目指して旅を続けた。
草原を突っ切り、小さな村々を巡る道のりは、まるでロードムービーだ。
青い空、風に揺れる麦畑、遠くに見える山脈。
マジでファンタジー世界、絵になるな!
でも、俺の内心はいつものツッコミで一杯だ。
戦闘力ほぼゼロ、スキルはキラキラショーとキノコハント、最近炎吐けるようになったけど、こんな長旅、俺のスペックで大丈夫かよ!?
エルちゃんは籠を手に、ツインテールをピョンピョン揺らしながらスキップ。
アレナは剣を腰に、鋭い目で周囲を警戒。
俺はエルちゃんの肩に乗っかって、キラキラ鱗が陽光でピカピカ。
くそっ、目立ちすぎだろ、この鱗! 隠密行動ゼロじゃん!
「カウル、王都ってどんなとこだろ! キラキラショーでスターになれるよね!」
エルちゃんのキラキラした瞳に、俺はハート型の尻尾を振る。
「ピニャ!(スターより安全な宿がいい!)」
アレナがニヤリと笑った。
「エルちゃん、スターもいいが、道中は魔物や盗賊が出る。気を抜くなよ」
「ピニャ!?(また魔物!? 俺、飾りドラゴンだぞ!)」
サラリーマン時代、こんな危険な出張なかったぞ! 内心ビビりつつ、俺たちの旅は賑やかに進む。
◇
王都への道は、村から村への旅だ。
どの村も木造の家々が並び、広場には井戸や市場があって、ルミエラの縮小版みたい。
エルちゃんのアイデアで、俺たちは各村でキラキラショーを開催。
またショーかよ! と思ったけど、彼女の「カウルなら絶対人気者!」って笑顔に押され、断れなかった。
最初の村、グレンヒルに着いた時、広場で早速ショーが始まった。エルちゃんが籠を置いて叫ぶ。
「みんなー! ピニャのキラキラショー、始まるよー!」
「ピニャ!?」
おい、告知なしで即開演!? でも、村の子供たちが集まり、大人も興味津々。
仕方ない、プロのピニャ魂、見せてやるぜ!
「ピニャ!」
俺は翼をバタバタさせて宙に浮き、クルッと三回転宙返り。
キラキラ鱗が陽光を反射して、虹みたいな光を広場に撒き散らす。
子供たちは「わあ!」「ピニャ、すごい!」と大はしゃぎ。
大人も笑顔で銅貨やパンを投げてくれる。
「エルちゃん、いい相棒だな!」
「そのドラゴン、見たことねえぞ!」
銅貨がチャリンと落ちる音に、俺のサラリーマン魂がニヤリ。
お、金! これでビール……いや、ドラゴンだから飲めねえ!
エルちゃんは貨幣とパンを拾い集め、俺を抱きしめた。
「カウルはスターだよ!」
「ピニャ……」
スター、ねえ……まあ、悪くないか、と内心ドヤ顔つつ、
前世じゃ表計算とにらめっこだったのに、なんでこんなパフォーマーやってんだよ、と複雑な気分だ。
グレンヒルの村人はお礼に、チーズタルトをドカンとくれた。
う、うまい! タルトのサクサク生地と、とろけるチーズのハーモニー。
前世のコンビニスイーツ、目じゃねえ!
エルちゃんが目を輝かせ、アレナも珍しくニヤリと頬を緩めた。
「カウル、このタルト、最高! ピニャ、もっとショーやろ!」
「ピニャ!(食うために働く、俺も立派なサラリーマンだな!)」
アレナがタルトをパクつきながら呟いた。
「この旅、美食ツアーになりそうだな」
おい、剣士がそんな緩いこと言ってていいのか!? でも、彼女の笑顔に、ちょっと安心した。
◇
次の村、ウィローブルでは、キラキラショーがさらにパワーアップ。
俺は新技「ピニャスパイラル」を披露。
螺旋状に宙を舞い、鱗の光でキラキラの渦を描く。
村人たちが「すげえ!」「まるで魔法だ!」と大盛り上がり。
報酬は銅貨と、肉シチューの大鍋!
マジか、肉! 牛肉とハーブが効いたシチューは、濃厚で体が温まる。
ドラゴンなのにグルメ魂、覚醒しちまった!
エルちゃんがスプーンを手に、シチューをガツガツ。
「カウルはスター! このシチュー、スターのご褒美だね!」
「ピニャ!(スターってより、食いしん坊ドラゴンだろ!)」
アレナがシチューをすすりながら、クールに笑った。
「ピニャ、お前、食欲だけは本物のドラゴンだな」
おい、食欲ディスんな!
でも、シチューを頬張るアレナの顔が、いつもより柔らかい。
こいつ、美食に弱いタイプか? 彼女のクールな護衛ぶりと、時々の緩い一面に、俺はちょっと親近感を覚えた。
村々を巡る旅は、キラキラショーと美食の連続だった。
ハニーブレッド、ベリーのタルト、グリルした魚、果実酒の香りがするケーキ。
サラリーマン時代、カップラーメンしか知らなかった俺が、こんなグルメライフ!
だが、俺のキラキラ鱗は相変わらず目立ちまくり。
ある村で、ショー中に野犬が俺の光に釣られて吠えまくった。
おい、俺、動物引き寄せマシンじゃねえぞ!
「ピニャ!(目立つのやめたい!)」
エルちゃんが笑いながらナデナデ。
「カウル、キラキラはスターの証! もっと輝いて!」
輝くって、俺、危険信号だろ! アレナがクスッと笑い、剣を軽く振った。
「ピニャ、目立つのは才能だ。だが、盗賊が来たら俺が片付ける」
頼もしいけど、俺を囮扱いすんな!
彼女の目が一瞬、遠くを見るように曇った。
またあの悲しげな目だ……何、隠してんだよ?
◇
旅の途中で、アレナの護衛スキルがガチで発揮された。
ある夜、森の近くでキャンプしてたら、盗賊っぽい三人の男が現れた。
革鎧に短剣、目つきがヤバい。
おい、強盗!? 俺の鱗、売られるパターン!?
「へっ、キラキラドラゴンだな。貴族に高く売れるぜ!」
エルちゃんが俺をぎゅっと抱きしめ、叫んだ。
「カウルは売らないよ! 家族なんだから!」
「ピニャ!(そうだ、家族だ!)」
アレナが一歩踏み出し、剣を抜いた。
「ガキとドラゴンに手を出す前に、私を倒してみろ」
シュン! シュン! アレナの剣が閃き、盗賊二人が一瞬で地面に倒れた。
最後の奴がビビって逃げ出す中、彼女が冷たく笑った。
「次はお前がこうなるぞ」
カッコよすぎだろ、アレナ! 俺はピニャ鳴きで応援。
「ピニャ!(やっちゃえ!)」
エルちゃんが目を輝かせ、拍手。
「アレナお姉さん、めっちゃ強い! カウルも負けないで!」
おい、俺に振るな!
俺、応援係だぞ!
だが、アレナの剣捌きに、俺もちょっと燃えてきた。
ピニャ魂、負けねえ!
◇
村々を巡り、美食とショーで盛り上がりながら、王都カルタルタスが近づいてきた。
ある村の宿で、エルちゃんが地図を広げ、目をキラキラさせた。
「カウル、王都でピニャのショー、もっとすごくなるよ! スターだ!」
「ピニャ!(スターより、平和なベッドがいい!)」
アレナが地図をチラ見し、ニヤリ。
「王都はでかいが、トラブルもでかい。ピニャ、準備しとけよ」
「ピニャ!?(トラブル!? 俺、巻き込まれ体質じゃねえ!)」
彼女の目がまた、ほんの一瞬、悲しげに曇った。
アレナ、お前、絶対何か背負ってるだろ?
バルンガ老エルフの「竜の秘密」って言葉が頭をよぎる。
俺の炎、ほんとに特別なのか?
内心ビビりつつ、エルちゃんの笑顔とアレナの護衛に引っ張られ、俺はハート型の尻尾を振った。
「ピニャ!(行くぜ、王都!)」
王都カルタルタス、どんな街だ?
俺のピニャ魂、どこまで通用する?
サラリーマン時代、こんなデカい舞台なかったぞ!




