第5話 アレナ、謎の旅人
ルミエラの喧騒を後にして、俺たち――8歳の女の子エルちゃん、キラキラ鱗のミニドラゴンである俺、カウル(別名「ピニャ」)、そして謎の女剣士アレナ――は、星見の森へ向かう旅に出た。
石畳の街道を抜け、草原を突っ切り、森の入り口にたどり着いた時、俺は内心で叫んだ。
おい、こんな本格的な冒険、俺のスペックで大丈夫かよ!?
星見の森は、ルミエラから半日ほど馬車で移動した場所にある。
巨大な樹々が空を覆い、木漏れ日が地面にまだら模様を描く。
鳥のさえずりと、遠くで響く獣の唸り声。
めっちゃファンタジーじゃん!
でも、俺、戦闘力ゼロ、スキルはキラキラショーとキノコハントだけだぞ!
エルちゃんは籠を手に、スキップしながら森の小道を進む。
彼女の金髪ツインテールが、木漏れ日でキラキラ輝いてる。
「カウル、アレナお姉さん、星見の森って魔法の場所なんだって! 何かすごいこと起きるかな!」
「ピニャ!(何か起きるって、危険な匂いしかしねえ!)」
アレナはクールに剣の柄を握り、微笑んだ。
「エルちゃん、期待しすぎだ。森はキレイだが、魔物も出る。気を引き締めな」
おい、魔物!?
それ、俺の出番じゃねえよな!?
俺はエルちゃんの肩でバタバタ翼を動かし、周囲を警戒。
だが、俺のキラキラ鱗が陽光を反射して、まるで歩くディスコボールだ。
くそっ、目立ちすぎだろ、この鱗!
こうして、俺たちの星見の森冒険が始まった。
◇
森の小道は、苔むした石と根っこが絡み合う、RPGっぽい雰囲気満点の場所だ。
エルちゃんはキノコやハーブを見つけては籠に詰め、時々「これ、ルミエラで売れるかな?」と商魂を発揮。
8歳でこのビジネスセンス、恐ろしい子!
アレナは先頭で歩き、鋭い目で周囲をスキャン。
彼女の革の軽鎧と剣が、戦士のオーラ全開だ。
ある朝、川沿いの休憩ポイントで、アレナが剣の腕を披露してくれた。
エルちゃんが「アレナお姉さん、強いの見せて!」とせがむと、彼女はニヤリと笑い、近くの木に吊るしたリンゴを標的にした。
「見とけよ、エルちゃん。カウルもだ」
アレナが剣を抜く。シュッ! という音と共に、刃が空を切り、リンゴが真っ二つ。
しかも、木の枝一本傷つけず、ピンポイントでリンゴだけを斬った。
おお、マジか! 異世界の剣豪じゃん! エルちゃんが拍手喝采、俺も思わずピニャ鳴き。
「ピニャ!(すげえ!)」
「アレナお姉さん、めっちゃカッコいい! 絶対、強い味方だよね!」
アレナは剣を鞘に収め、クールに笑った。
「まあ、こんなもんだ。森で何かあっても、守ってやるよ」
おい、頼もしいじゃん! でも、俺、戦力外だよな?
内心ビビりつつ、アレナの自信にちょっと安心した。
だが、彼女の目が一瞬、遠くを見るように曇った。
またあの悲しげな目だ……何、隠してんだよ?
◇
森の奥に進むにつれ、俺のキラキラ鱗がマジで問題になってきた。
昼間は陽光を反射して、まるでレーザーショー。
夜は星光でピカピカ光る。
おい、俺、天然の目印じゃん!
ある夜、キャンプの焚き火を囲んでると、エルちゃんが笑いながら言った。
「カウル、キラキラすぎて、森の動物が寄ってくるよ! 見て、ウサギ!」
確かに、ふわふわのウサギやリスが、俺の鱗の光に釣られてチラチラ近づいてくる。
かわいいけど、俺、餌付けマシンじゃねえぞ!
アレナがクスッと笑い、焚き火に薪をくべた。
「ピニャ!(目立つのやめたい!)」
「カウル、仕方ないよ。キラキラはカウルの魅力だもん!」
エルちゃんの無邪気な笑顔に、魅力って……恥ずかしいんだよ!
とツッコミつつ、ちょっと嬉しくなる。
サラリーマン時代、こんな脚光浴びたことなかったからな。
でも、アレナの視線が気になった。
彼女は俺の鱗を見ながら、ふと呟いた。
「その光、目立つけど……何か特別な力、隠れてる気がするな」
「ピニャ?」
特別な力? 俺、ただの飾りドラゴンだぞ!
だが、アレナの目は本気だった。
こいつ、なんか知ってんのか?
彼女の過去の傷っぽい雰囲気と、鋭い観察力。
絶対、ただの旅人じゃねえよな……
◇
数日後、森の奥で事件が起きた。
エルちゃんがハーブを採ってる間、俺が低空飛行でキノコチェックしてたら、木陰から怪しい影が動いた。
ん? 何だ、あれ? 目を凝らすと、ゴブリンだ!
緑の肌、ギザギザの歯、棍棒持ったチンピラみたいな奴が三人、こっちをニヤニヤ見てる。
おい、マジか! 魔物キター!
「ピニャ!(エルちゃん、ヤバいぞ!)」
俺が鳴くと、エルちゃんが振り返り、アレナが即座に剣を構えた。
「エルちゃん、カウル、後ろに下がれ!」
ゴブリンが「グヘヘ!」と叫びながら突進してきた。
うわ、キモい! 俺はエルちゃんの肩にしがみつき、ビビりまくり。
アレナが一歩踏み出し、剣を閃かせた。
シュン! シュン! 二匹のゴブリンが一瞬で倒れ、地面に転がる。
速え! 強すぎだろ!
だが、最後のゴブリンが棍棒を振り上げ、エルちゃんに向かってきた。
「ピニャ!(エルちゃん!)」
「ピニャ!?」
やべえ! 俺の体が勝手に動いた。
エルちゃんを守るため、俺はゴブリンに向かって飛び、口から小さな火の玉を吐いた。
え、俺、炎吐けるの!?
ボフッと炎がゴブリンを直撃し、そいつは「グギャ!」と叫んで逃げ出した。
「ピニャ!(やったぜ!)」
エルちゃんが目をキラキラさせて叫んだ。
「カウル、すごい! 炎吐いた! めっちゃカッコいい!」
お、おお! 俺、ちょっとカッコいい? 内心ドヤ顔だったが、アレナがニヤリと笑った。
「へえ、ピニャ、ただのキラキラじゃないな。やるじゃん」
ただのピニャ言うな!
でも、初めての炎に俺自身ビックリだ。
サラリーマン時代、こんなスキルなかったぞ!
◇
その夜、焚き火を囲んで、アレナがゴブリンの話を始めた。
「星見の森は、魔物が出るけど、さっきのはただの雑魚。もっとヤバいのが潜んでるかもしれない」
ヤバいのが!?
もう勘弁してくれ!
エルちゃんは目を輝かせ、拳を握った。
「アレナお姉さん、カウルがいるから大丈夫! 星見の森で、もっとすごい冒険しよう!」
「ピニャ!(無鉄砲すぎだろ!)」
アレナがクスッと笑い、俺を見た。
「カウル、お前の炎、普通じゃない。エルちゃんの言う通り、冒険はまだ始まったばかりだ」
彼女の目が、また悲しげに曇った。
おい、絶対何か隠してるだろ!
俺はハート型の尻尾を振って気合を入れた。
「ピニャ!(まあ、行くしかねえか!)」
星見の森の奥深く、何が待ってるのか。
エルちゃんの無鉄砲な冒険心、アレナの謎めいた過去、俺のピニャ魂。
このトリオ、どうなるんだ!?




