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俺ミニドランゴンに転生す! ~小さな女の子に拾われて旅をします~  作者: 海老川ピコ


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第3話 商人の影と旅立ち

 村での生活は、なんだかんだでハマっちまう魅力があった。

 森に囲まれた小さな集落、木造の家々、朝のパンの香り、夕方の子供たちの笑い声。

 エルちゃんの家――村外れのツタ絡まる小屋――で過ごす日々は、前世の新宿ワンルームとは比べ物にならないくらい穏やかだ。

 まあ、8歳の女の子とミニドラゴンの共同生活って、冷静に考えたらシュールすぎるけどな。


 俺、カウル、別名「ピニャ」は、エルちゃんと一緒に村のアイドル的な存在になってた。

 彼女のキラキラ笑顔と、俺のキラキラ鱗のコンボは無敵だ。

 広場での「キラキラショー」はすっかり名物で、俺が「ピニャ!」と鳴きながら宙返りすると、子供たちはキャーキャー、大人は銅貨をチャリンと投げてくれる。

 サラリーマン時代にゃ、こんな喝采なかったぞ! と内心ドヤ顔つつ、なんで俺、こんなアイドルドラゴンやってんだ……と複雑な気分だ。


  ◇


 最近、俺の新役目が増えた。エルちゃんのキノコ採りを手伝うことだ。

 彼女は村人にキノコを配るのが日課で、森の奥まで籠持って出かける。

 で、俺の出番。キラキラ鱗のミニドラゴン、ただの飾りじゃないぜ。


「カウル、今日もキノコ探し、頼んだよ!」


 エルちゃんがニコニコで俺を肩に乗せる。

 森の木漏れ日が、彼女の金髪ツインテールをキラキラさせて、まるで絵本の主人公みたいだ。


「ピニャ!」


 俺は翼をバタバタさせて低空飛行。

 地面スレスレを滑るように飛ぶと、苔むした木の根元や、倒木の陰に隠れたキノコがバッチリ見える。茶色い大きなキノコ、赤いタマゴタケのようなおいしいキノコ、ふわふわのシメジっぽい奴。

 赤いベニテングダケみたいなキノコもある。毒キノコだけど、薬の材料になるので薬師のおばあさんがほしがるのだ。

 俺、目がいいんだな、これ!


「ピニャ! エルちゃん、あそこ!」


 ハート型の尻尾で指すと、エルちゃんがスキップで駆け寄る。


「わあ! カウル、すごい! こんな大きいポルチーニ、初めて見た!」


 彼女がキノコを籠に詰め、俺の頭をナデナデ。

 お、おお、役に立てた!

 内心でガッツポーズだ。

 サラリーマン時代、クライアントに「佐藤君、助かったよ」なんて言われたことなかったぞ。

 キノコ採りでMVP気分、悪くない!


 そんな日が続き、俺はキノコハンターとしての自信をつけてた。

 エルちゃんが「カウル、森のヒーローだね!」なんて言うもんだから、いや、ヒーローってほどじゃ……でも、ちょっとカッコいい? と調子に乗ってた。

 ピニャ鳴きも、なんか誇らしげになってきたぜ。


  ◇


 村での日々は、キノコ採りとキラキラショーで賑やかだった。

 エルちゃんの手料理も絶品で、ハーブスープやベリージャムのパン、たまに猟師のおっちゃんがくれる鹿肉のグリル。

 ドラゴンなのにグルメ路線でいいのか? とツッコミつつ、食後の暖炉前でエルちゃんと雑談するのが、なんか幸せだった。

 でも、エルちゃんの謎めいた雰囲気は相変わらずだ。

 8歳の見た目なのに、妙にしっかりしてるし、遠くを見る時の目が少し寂しそう。

 両親の話は「遠くで忙しい」と笑うけど、なんか隠してる気がする。

 夜、彼女が星空を見上げて呟く言葉――「いつか、会えるかな……」みたいな――が、頭に引っかかる。

 おい、8歳でそんなセリフ、ヘビーすぎだろ! でも、ドラゴンの俺が詮索するのもな。

 そんな平和な日々、ずっと続くと思ってた。バカだったな、俺。


  ◇


 その日、広場でいつものキラキラショーをやってた。

 俺が「ピニャ!」と鳴きながら二回転宙返りをキメ、子供たちが「キャー! ピニャ、すごい!」と拍手喝采。

 銅貨がチャリンと落ちる音に、よし、今日も稼いだぜ! とサラリーマン魂がニヤリ。

 エルちゃんが銅貨を拾い集め、俺を抱き上げる。


「カウル、今日もスターだね!」

「ピニャ!」


 スター、ねえ……まあ、悪くない響きか とドヤ顔してたら、ガラの悪い声が響いた。


「ほう、噂のミニドラゴンか。こいつ、高く売れるぜ」


 振り返ると、革のコートに金の鎖をジャラジャラつけた、蛇みたいな目つきの男が立ってた。

 商人の格好だけど、胡散臭さ全開。

 後ろには、ゴロツキっぽい手下が二人、ニヤニヤしながら俺を値踏みしてる。

 おい、俺、展示品じゃねえぞ!


「珍獣好きの貴族が、喉から手が出るだろうよ。いくらだ、ガキ?」


 エルちゃんが俺をぎゅっと抱きしめ、商人を睨んだ。

 8歳の女の子とは思えない鋭い目だ。


「カウルは売らないよ! カウルは私の家族なんだから!」

「ガキが生意気言うな。渡せよ、さもないと……」


 商人が手を伸ばした瞬間、ドスッと重い音が響いた。

 猟師のおっちゃんが、斧を地面に突き立てて現れた。

 髭面に筋肉ムキムキ、迫力満点だ。


「てめえ、よそ者がエルちゃんに何しようってんだ!」


 おっちゃんの声に、手下がビクッと後ずさる。

 市場で別の商人が「ミニドラゴンを狙う怪しい奴がいる」と耳打ちしてくれたらしい。村人の結束、すげえな!

 商人は舌打ちしつつ、ニヤリと笑った。


「へっ、いいさ。だがな、俺の後ろにはでかい組織がついてる。ドラゴン、諦めねえぞ」


 おっちゃんがエルちゃんに目配せした。


「エルちゃん、カウルを連れて逃げな! こいつ、ヤバい連中と繋がってる!」


 エルちゃんの瞳が、キッと引き締まった。

 彼女は一瞬、村の広場を見回し、まるで別れを惜しむように微笑んだ。

 おい、8歳でそんな大人な表情、マジかよ!


「カウル! 村を出よう!」

「ピニャ!?」


 ちょっと待て、急に旅!?

 俺、戦闘力ゼロ、スキルはキラキラショーとキノコハントだけだぞ!

 エルちゃんは籠にリンゴ、パン、キノコを詰め、俺を肩に乗せて小屋を飛び出した。

 後ろで、商人がゴロツキに叫んでた。


「追いかけろ! あのドラゴン、絶対手に入れるぞ!」


  ◇


 森の小道を駆け抜ける。

 エルちゃんのツインテールが風に揺れ、彼女の小さな背中がやけに頼もしい。

 俺は彼女の肩でバタバタ翼を動かし、バランスを取る。


「ピニャ!(エルちゃん、どこ行くんだよ!?)」

「交易都市ルミエラ! 遠いけど、そこでカウルを守れるよ!」

「ピニャ!?」


 ルミエラ!? 聞いたことねえ! ていうか、8歳の女の子とミニドラゴンの二人旅、正気かよ!?

 俺の内心はツッコミで大パニックだ。

 サラリーマン時代、こんな急な出張なかったぞ!

 せめて旅のマニュアルくれ!

 でも、エルちゃんの真剣な目は本気だった。

 彼女は立ち止まり、俺を手に乗せて、静かに言った。


「カウル、ごめんね。巻き込んじゃって。でも、絶対守るから、一緒に来て!」

「ピニャ……」


 おい、こんな真っ直ぐな目で見られたら、断れねえだろ!

 俺はハート型の尻尾を振って、気合を入れた。


「ピニャ!(行くぜ、エルちゃん!)」


 彼女の顔がパッと明るくなり、俺を抱きしめた。


「やった! カウル、最高の友達だよ!」


 森の奥へ進む中、俺はチラッと後ろを振り返った。

 商人の気配はまだ遠いけど、なんかヤバい組織の影がチラつく。

 ただの珍獣商じゃねえな、こいつら……エルちゃんの小さな手が、俺の鱗をそっと撫でる。

 まあ、いい。ピニャ魂、見せてやるぜ!

 こうして、俺たちの二人旅が始まった。

 ルミエラってどんな街だ?

 俺のキラキラショー、通用するのか?

 内心ビビりつつ、エルちゃんの笑顔に引っ張られ、俺は新しい冒険に飛び込んだ。



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