第20話 ドーラクアでの戦闘
北の町エナルザードを後にした俺たちトリオは、南へ南へと馬車を走らせ、数日後にドーラクアの町に到着した。
温暖な気候の交易町で、石畳の道に市場の賑わいが広がり、色とりどりの屋台が並ぶ。
北の雪景色から一転、爽やかな風が吹く平和そうな雰囲気だ。
「カウル、ピニャ! ここ、あったかいね! 果物がいっぱい! 早く見て回ろうよ!」
エルちゃんが金髪ツインテールを弾ませて俺の肩でスキップ。
8歳の元気さが全開だ。
アレナは剣の柄に手を置き、鋭い目で周囲を警戒しながらも、少しリラックスした表情を浮かべていた。
「黒鱗団の残党がいるという噂だが……表向きは普通の町だな。油断するなよ、ピニャ」
「ピニャ!(了解! でも、まずは腹ごしらえだろ?)」
俺は少し大きくなった体(今や猫サイズ超え)を軽く伸ばし、キラキラ鱗を陽光に輝かせた。
風のペンダントと黄金の首輪が、相変わらず目立つことこの上ない。
町に着いた初日、黒鱗団の気配はまったく感じられなかった。
市場を歩き回り、商人たちにさりげなく探りを入れると、みんな首を傾げるばかり。
「黒いローブの連中? 最近は見てねえな。隠れてるって噂はあるけど……」
俺たちは表向きは普通の旅人として町を見学することにした。
中央広場の噴水広場では、俺のキラキラショーが自然発生。
子供たちが集まってきて、軽い宙返りと炎の小玉で大ウケ。
「ピニャ!」
ハート型の尻尾でハートを描くと、銅貨と新鮮な果物が山盛り。
サラリーマン時代、プレゼンで喝采浴びたことなんて一度もなかったのに、異世界じゃスター待遇だぜ……。
アレナが果物の串焼きを頰張りながら呟いた。
「美味いな……でも、情報が欲しい。町はずれの酒場に行ってみよう」
エルちゃんはマンゴーみたいな甘い果物を頰張りながらニコニコ。
「カウル、ピニャショー最高! でも、悪い奴は許さないよ!」
◇
三日目、ようやく手がかりをつかんだ。
町はずれの古い酒場で、酔っ払いの商人から情報を聞き出した。
「隠れ家? ああ、森の奥の廃屋だ。夜になると黒いローブの奴らが出入りしてるってよ……気をつけな」
その夜、俺たちは月明かりの下、町はずれの森へ向かった。
風のペンダントが微かに光り、道を照らしてくれる。
廃屋は蔦に覆われた古い石造りの建物で、窓から微かな明かりが漏れていた。
「ピニャ……(ここだな。気配がする)」
アレナが剣を抜き、先頭に立つ。
エルちゃんが俺をぎゅっと抱き、風の盾を準備。
俺は口に炎を溜め、翼を静かに広げた。
「いくぞ……急襲だ!」
アレナが蹴破るように扉を蹴飛ばし、俺たちが雪崩れ込んだ。
「黒鱗団の残党ども! 出てこい!」
中には十数人のローブの男たちがいた。
テーブルに地図や魔道具が散らばり、明らかに何か企んでいる様子。
男たちが一斉に立ち上がり、魔法を構える。
「てめえら……! あのガルド様を倒した連中か!」
戦闘が始まった。
アレナが剣を閃かせて前衛を二人まとめて斬り倒す。
エルちゃんの風が敵の魔法を逸らす。
だが、数が多く、奥から魔術師が黒い弾を連発してくる。
「ピニャァァ!(くらえ、氷炎の輝き!)」
俺は少し大きくなった体を活かし、翼を広げて宙に浮いた。
風のペンダントと盟約の鍵の力が融合し、口から青と赤の輝く息吹を吐き出す。
氷炎の輝きが部屋を駆け巡り、敵の魔法陣を凍結させながら焼き払う。
三人の魔術師が一瞬で動けなくなり、悲鳴を上げて倒れた。
「すげえ……このミニドラゴン、化けたな!」
残りの連中が怯む隙に、アレナが突進。
俺も低空飛行で炎の小玉を連射し、敵を次々と制圧。
最後のボス格の男が黒い霧を纏って抵抗してきたが、俺の強化された炎の息吹で一気に吹き飛ばした。
「ぐわああっ!」
隠れ家はあっという間に制圧完了。
男たちは縄で縛られ、町の衛兵に引き渡す準備が整った。
「ピニャ!(よし、完勝! 俺、力ついた実感ヤバい! 前世じゃデスクワークだけだったのに……)」
エルちゃんが俺に飛びついてくる。
「カウル、かっこよかった! ピニャの炎、めっちゃ強くなったね!」
アレナが剣を収め、俺の頭を軽く撫でた。
「よくやった、ピニャ。お前がいなければ厳しかったぞ」
◇
隠れ家を調べると、黒鱗団の残党がまだ各地で小規模な活動を続けている証拠が出てきた。
しかし、この隠れ家を潰したことで、少なくともドーラクア周辺は一時的に平穏になるはずだ。
戦いの後、俺たちは町の食堂で遅い祝勝会。
特産のワイバーンステーキを注文した。
ドラゴンに近い飛竜の肉は、ジューシーで力強い味わい。
ハーブと岩塩で焼いたステーキは、口の中で溶けるように柔らかく、旨味が爆発した。
「ピニャ!(うまい!……待て、ワイバーンってドラゴンの仲間じゃねえか? 同族食いになってねえかこれ? むむむ、難しい問題だな……)」
でも、美味しさに負けてパクパク食べてしまった。
グルメドラゴン魂は罪深い。
エルちゃんがステーキを頰張りながら笑った。
「残党も倒せたし、カウルも強くなった! これで一件落着だね!」
アレナが珍しくグラスを掲げた。
「そうだな……次はエルミンの秘密をゆっくり聞くとするか」
俺はハート型の尻尾を振り、満足げにピニャ鳴きを響かせた。
「ピニャ!(そうだ! みんなでこれからも旅を続けようぜ!)」
ドーラクアの夜空に、俺のキラキラ鱗が小さく輝いていた。
黒鱗団の影はまだ完全に消えたわけじゃないけど、俺たちの絆は確実に強くなっている。
サラリーマンだった俺が、こんな英雄的な一日を過ごすなんて……転生してよかったかもな。
ピニャ魂、ますます加速中だ!




