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俺ミニドランゴンに転生す! ~小さな女の子に拾われて旅をします~  作者: 海老川ピコ


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19/21

第19話 北の町エナルザード

 北の氷原ノルディスでの激闘から数日後、俺たちトリオは吹雪を抜けて、ようやく人の気配がする集落にたどり着いた。

 北の町エナルザード――雪に覆われた石造りの家々が並び、煙突から白い煙が立ち上る、まるで絵本に出てくるような静かな町だ。


「カウル! ここ、あったかいお店がいっぱいありそう! アレナお姉さん、早く休もうね!」


 エルちゃんが金髪ツインテールを雪で少し白くしながら、俺を肩に乗せてスキップ気味に歩く。

 8歳の元気さは相変わらずだけど、俺の目には少し心配そうな色が見えた。

 アレナは左肩を押さえ、顔を少し青ざめさせながらも、クールに微笑んだ。


「……すまない。少し、休ませてもらう」


 ガルドの黒い氷の槍で深く抉られた傷。

 幸い、ブリザルドが別れ際にくれた高級な癒しのポーションが残っていた。

 町の宿屋「氷炎亭」の暖かい部屋で、アレナはベッドに横になり、俺とエルちゃんが交代で看病した。


「ピニャ!(アレナ、頑張れよ……お前がいないと、この旅、成り立たねえんだぞ)」


 ポーションを飲ませ、傷口に塗り、温かい布で冷やしたり温めたり。

 一晩中、エルちゃんがアレナの手を握りながら「大丈夫だよ」と繰り返す姿を見て、俺の胸が熱くなった。

 サラリーマン時代、こんな仲間思いの看病なんて、ドラマでしか見たことなかったぜ……。

 翌朝、アレナの傷は驚くほど綺麗に塞がっていた。

 ポーションの効果は本物だ。

 彼女はベッドから起き上がり、いつものクールな笑みを浮かべた。


「助かった……本当に、お前たちには何度助けられたかわからないな」

「ピニャ!(当然だろ! 俺たち家族だぜ!)」


  ◇


 アレナの療養で、俺たちはエナルザードに数日滞在することになった。

 その間に、俺は自分の体に変化を感じていた。

 盟約の鍵の力か、氷炎の輝きを覚醒させた影響か……少し大きくなったんだ。


「ピニャ……?(お、おい! 俺、手のひらサイズじゃなくなってる!? 今や猫サイズくらい!?)」


 宿屋の銅鏡の前でクルッと回ってみる。

 キラキラのエメラルド鱗はより輝きを増し、翼も少し逞しく、ハート型の尻尾もふっくら。

 内心で大ドヤ顔だ。


「カウル、大きくなった! かっこいい! もっとピニャショーできるね!」


 エルちゃんが俺を抱き上げてくるくる回す。

 重くなった俺を軽々と持ち上げる8歳の腕力、相変わらず規格外だ……。

 療養中のご褒美として、町の料理を堪能しまくった。

 エナルザード名物のジャガイモとトマトの煮込みシチュー。

 ホクホクのジャガイモに、甘酸っぱいトマトのソースが染み込んで、温かいスープが体を芯から温めてくれる。


「ピニャ!(うまい! このシチュー、前世のビーフシチュー超えてるんじゃねえか!? ドラゴンなのに野菜メインで満足してる俺、成長したな……)」


 さらに名物のスノーバードの串焼き。

 雪原に生息する白い鳥を香草と一緒に焼き上げたものだ。

 皮はパリッと香ばしく、身はジューシーで、ほのかに甘い脂が口いっぱいに広がる。


「ピニャァ!(鳥、最高! 海の魚、南国の焼き魚に続いて、北の鳥も制覇! 俺、完全にグルメドラゴンだわ!)」


 アレナも串焼きを頰張りながら、珍しく目を細めて笑った。


「ピニャ、食べてる顔が幸せそうだな」

「ピニャ!(当たり前だろ! こんな旨いもん、毎日食いたい!)」


  ◇


 滞在中、町をゆっくり見学した。

 中央の市場では、毛皮のコートや氷結晶のアクセサリー、干し肉やジャガイモが山積み。

 俺のキラキラ鱗を見て、商人たちが「珍しいミニドラゴンだ!」と集まってくるので、自然と小さなピニャショーが始まってしまった。


「ピニャ!」


 軽く宙返りして雪の上にハートを描くと、子供たちから拍手喝采。

 銅貨と干し魚のお礼を山ほどもらった。

 サラリーマン魂が疼くぜ……この町、商売繁盛だな!

 そして、町のシンボルである巨大な教会の大聖堂。

 雪で白く輝く石造りの建物で、ステンドグラスに古代ドラゴンと人間の盟約が描かれている。

 エルちゃんが手を合わせて祈り、アレナが静かに目を閉じる姿を見て、俺もなんとなく前足を合わせた。


「ピニャ……(俺、こんなところで祈ってるなんて……転生して本当にいろんな経験してるな)」


 アレナの傷もすっかり癒え、みんなの体力が回復した頃――市場の酒場で耳寄りな噂を聞いた。


「南の町ドーラクアで、黒いローブの連中がまた暴れてるらしいぜ。黒鱗団の残党だとか……」


 俺たちの耳がピクッと反応した。

 エルちゃんが拳を握り、アレナが目を鋭くする。


「まだ残ってたか……」

「ピニャ!(あのガルドを倒したのに、まだ終わってねえのかよ! しつこい組織だな!)」


 滞在もいいけど、放っておけない。

 俺は少し大きくなった翼をバタバタさせ、気合を入れた。


「ピニャ!(よし、南へ向かうぜ! 残党、ぶっ飛ばしてやる!)」


 エナルザードの雪景色に別れを告げ、俺たちトリオは再び旅立った。

 ジャガイモの温かさとスノーバードの旨味を胸に、ドーラクアでの新たな戦いへ――。

 ピニャ魂、まだまだ燃え尽きねえぜ!



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