表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺ミニドランゴンに転生す! ~小さな女の子に拾われて旅をします~  作者: 海老川ピコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/21

第18話 北の氷原と盟約の真実

 天空都市アルカディアを後にした俺たちトリオは、風のペンダントと盟約の鍵の導きに従い、北の果てを目指した。

 雪と氷に覆われた大地――ノルディス。

 息を吐くだけで白く凍る極寒の地に降り立った瞬間、俺、カウル(通称ピニャ)は全身の鱗が震えた。


「うわっ、寒っ! ピニャ!(この冷え込み、ドラゴンでも死ぬんじゃねえか!?)」


 エルちゃんは厚手のマントをぐるぐる巻きにしながらも、キラキラした瞳で周りを見回す。


「カウル! 雪、キレイ! まるでおとぎ話の国だね!」


 アレナは革の軽鎧の上に毛皮の外套を羽織り、剣の柄を固く握っていた。

 彼女の黒髪に雪が積もり、表情がいつもより固い。


「……ここが、最後の場所だな。気をつけろ」


 風のペンダントが俺の首で青白く光り、道を示すように輝く。

 俺たちは吹雪の中を進み、巨大な氷の谷へと足を踏み入れた。


 谷の奥、巨大な氷の岩壁に囲まれた場所で、俺たちはそれと出会った。

 全身が透明な氷の鱗に覆われ、目が凍てつくような青い輝きを放つ巨大ドラゴン――ブリザルド。


「グオオオオ……」


 低く響く咆哮が谷全体を震わせ、地面が凍りつく。

 ただの威嚇じゃない。

 これは本気の殺気だ。


「ピニャぁ!?(でけえ! 海竜のお兄さんより遥かにヤバい!)」


 俺は反射的に炎を口に溜めた。

 ブリザルドの冷たい視線が俺を射抜く。

 その瞬間、風のペンダントと俺のエメラルド色の鱗が共鳴した。


「ピニャ……!」


 小さな炎の息を、俺はブリザルドに向かって吐いた。

 熱い炎が冷たい空気の中で輝き、氷のドラゴンの鼻先に優しく触れる。

 すると、ブリザルドの目がわずかに細まった。


「……お前は、炎の末裔か。小さき者よ」


 低く、しかしはっきりとした声が俺の頭の中に直接響いた。

 ドラゴン同士の会話――テレパシーみたいなもんか!


「ピニャ!(そうだ! 俺、カウル! 盟約の鍵を探してるんだ!)」


 ブリザルドはゆっくりと首を傾け、巨大な翼をわずかに広げた。

 周囲の吹雪が少しだけ弱まる。


「盟約の鍵……我が一族が守り続けたものだ。だが、闇の者たちが近づいている」


 その言葉が終わらないうちに、谷の奥から不気味な笑い声が響いた。


「ククク……ようやく揃ったな」


 黒いローブに身を包んだ男が、影のように現れた。

 顔の半分を覆う仮面、胸に巨大な黒鱗の紋章。

 その背後には、数十人の黒鱗団員と、魔力で強化された氷の魔獣たちが控えている。


「黒幕……!」


 アレナが剣を抜き、声が震えた。

 男はゆっくりと仮面を外した。

 そこにあったのは、意外にも若い――しかし冷たい目をした男。

 元白狼組の騎士団長補佐だったという、ガルドという男だ。


「アレナ・レヴァリス。よくも私の部下たちを見捨てて逃げたものだな。あの任務で死んだ仲間たちの仇……今ここで討つ!」


 アレナの顔が青ざめた。

 彼女の過去――白狼組を裏切ったとされる事件の真相が、ガルドの口から吐き出される。


「あの時、アレナは黒鱗団の罠に気づきながら、仲間を置いて一人で逃げた。結果、騎士団は壊滅。すべてはお前の臆病のせいだ!」

「違う……! 私は、仲間を守るために……!」


 アレナの声が初めて弱々しくなった。

 俺の胸が熱くなった。


「ピニャ!(アレナを悪く言うな! お前が黒幕だったんだろ!)」


 ガルドが嘲笑い、手を振る。

 魔獣たちが一斉に襲いかかってきた。

 ブリザルドも咆哮を上げて戦闘態勢に入るが、黒い魔力の鎖がその巨体を拘束し始める。


 戦いは苛烈だった。

 アレナが剣を閃かせ魔獣を斬り裂く。

 エルちゃんが俺を抱きしめながら、風のペンダントの力を借りて小さな風の盾を作る。

 俺は必死に炎を吐き続けていたが、極寒の地では炎の威力が半減してしまう。


「くそっ、寒すぎて炎が……!」


 その時、ガルドが巨大な黒い氷の槍をアレナに向かって放った。

 アレナは避けきれず、肩を深く抉られる。


「アレナお姉さん!」


 エルちゃんの悲鳴。

 俺の頭の中で、何かが弾けた。


「ピニャァァァ!(みんなを……傷つけるんじゃねえ!!)」


 風のペンダント、古代水晶、そしてブリザルドの冷気と俺の炎が完全に共鳴した。

 体が熱くなり、同時に冷たくなった。

 鱗が青と赤の輝きを放ち始める。

 新能力――「氷炎の輝き」。

 俺の口から吐き出されたのは、炎でありながら凍てつく冷気を持つ、幻想的な輝きの息吹だった。

 黒い魔力の鎖を一瞬で溶かし、魔獣たちを凍結させた上で焼き払う。

 ガルドの黒い障壁を突き破り、彼の右腕を吹き飛ばした。


「ぐあああっ!? この力……古代の盟約の……!?」


 ブリザルドが咆哮を上げ、拘束を振り切ってガルドに体当たりを食らわせた。

 アレナが血を流しながらも立ち上がり、最後の力を振り絞って剣を突き刺す。

 エルちゃんの風が俺の氷炎をさらに加速させた。


「みんな……ありがとう!」


 三人の――いや、四人の(ブリザルドも!)絆が、黒幕ガルドを完全に打ち倒した。

 ガルドは黒い霧となって消え去りながら、最後に呟いた。


「……エルミンの……正体は……」


 その言葉を聞き逃さなかった俺は、エルちゃんを振り返った。

 彼女は少し寂しげに、しかし優しく微笑んだ。


「後で……話すね、カウル」


  ◇


 戦いが終わると、ブリザルドは巨大な氷の台座を砕き、「盟約の鍵」の完全体を俺たちに差し出した。

 それは輝く宝石のようなオーブで、炎と風と氷の力が渦巻いている。


「小さき炎の者よ。お前はもう、立派なドラゴンだ。盟約を継げ」

「ピニャ……!(俺、ついに本物のドラゴン!? サラリーマンだった俺が……!)」


 俺はオーブを受け取り、体全体が温かい光に包まれた。

 翼が少し大きくなり、鱗の輝きがより強くなった気がした。

 エルちゃんが俺に飛びついてくる。


「カウル、かっこよかった! 大好き!」


 アレナが血まみれの肩を押さえながら、珍しく柔らかい笑みを浮かべた。


「……お前たちがいなかったら、私はまた……逃げていたかもしれない。ありがとう、ピニャ」


 俺はハート型の尻尾を全力で振り、ピニャ鳴きを響かせた。


「ピニャ!(これからも一緒に冒険だ! エルちゃんの秘密も、ちゃんと聞くからな!)」


 北の氷原に、朝日が昇り始めた。

 盟約の鍵を手に入れた俺たちに、新たな旅の扉が開こうとしていた。

 黒鱗団の残党、エルちゃんに隠された秘密、そして俺の本当の力――ピニャ魂、最高潮に燃えてるぜ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ