第14話 マウル島の冒険
バーバルに向かう途中に上陸したマウル島。
南国らしい白い砂浜とエメラルドグリーンの海が広がる港に入港する。
潮風が気持ちよく、椰子の木が揺れる景色にエルちゃんの金髪ツインテールがピョンピョン跳ねてる。
「カウル! マウル島、珊瑚の洞窟があるんだって! 冒険だよー!」
「ピニャ!(また冒険!? 俺、まだ船酔いから回復してねえよ!)」
アレナはクールにボートの舳先に立ち、剣の柄に手を置いていた。
黒髪が海風に舞い、革の軽鎧が陽光を浴びて輝く。
巨大海竜との出会い以来、彼女の表情も少し柔らかくなった気がする。
「エルミン、洞窟は危険だ。ピニャ、お前の炎、ちゃんと出せるか?」
「ピニャ!(任せろ!……多分)」
マウル島に着くと、島はまさに南国パラダイスだった。
白砂のビーチ、色とりどりの珊瑚が透けて見える透明な海、ヤシの木と色鮮やかな花。
村の人々がボートを出迎えてくれ、手作りの花輪をかけてくれる。
サラリーマン時代、こんなリゾート旅行、夢のまた夢だったぜ……。
午後、俺たちは村の少年に案内されて珊瑚の洞窟へ向かった。
洞窟入り口は海辺の岩場に隠れていて、潮の満ち引きで中に入れるらしい。
中は幻想的だった。
天井から滴る水が鍾乳石を作り、壁一面に色鮮やかな珊瑚と光る貝がびっしり。
俺のキラキラ鱗が光を反射して、洞窟全体が虹色に輝く。
「わあ! カウルがライトみたい! すごいキレイ!」
エルちゃんが籠を手に、目をキラキラさせながら奥へ進む。
アレナが松明代わりに小さな魔法灯を掲げ、先頭を歩く。
だが、奥へ進むにつれ、なんか空気が重くなった。
低い唸り声みたいなものが聞こえてくる。
「ピニャ……?(なんかヤバい気配するぞ)」
突然、洞窟の奥の広間に明かりが見えた。
黒いローブの魔術師が数人、奇妙な陣を描いて儀式をやっている。
中央には光る珊瑚の結晶が浮かび上がり、海竜の骨らしきものが並べられている。
魔術師のリーダー格の男が、低い声で詠唱を続けていた。
「この島の海の力を我がものとし、黒鱗団に捧げん……!」
「黒鱗団!? ピニャ!(またあの組織かよ! しつこいな!)」
アレナが即座に剣を抜いた。
エルちゃんが俺をぎゅっと抱きしめる。
魔術師たちが気づき、こちらを睨んだ。
「邪魔者か! 消せ!」
黒い魔力の弾が飛んでくる。
アレナが剣を閃かせて弾き返し、俺は反射的に炎を吐いた。
「ピニャ!(くらえ、ピニャファイア!)」
ボフッ!
小さな炎の玉が魔術師の一人を直撃。
ローブが燃え上がり、男が悲鳴を上げて後ずさる。
アレナが一気に間合いを詰め、剣で二人をまとめて吹き飛ばした。
カッコよすぎだろ!
だが、リーダー魔術師が結晶に手を伸ばし、黒い霧を呼び起こそうとした瞬間――。
洞窟の外から、巨大な水しぶきが上がった。
あの巨大海竜だ!
昨日出会った「ドラゴンのお兄さん」が、俺のピニャ鳴きを感じて駆けつけてくれたらしい。
海竜が巨体を洞窟入り口に寄せ、強烈な水流を口から噴射。
魔術師たちをまとめて吹き飛ばし、海へドボーンと放り込んだ。
「ピニャ!(すげえ! 助太刀ありがとう、お兄さん!)」
海竜が満足げに低く唸り、俺を優しく一舐め(またかよ!)。
エルちゃんが大喜びで手を振る。
「ドラゴンのお兄さん、最高! カウルと一緒に守ってくれたね!」
アレナが剣を収め、ニヤリと笑った。
「ピニャ、お前は本当に外交官だな。海竜まで味方につけるなんて」
「ピニャ……(ただ鳴いただけなのに……)」
儀式の結晶は砕け、黒い霧が消えた。
洞窟は再び美しい光を取り戻した。
村に帰ると、大騒ぎになった。
魔術師たちが海に飛ばされた話が瞬く間に広がり、村人総出で俺たちを英雄扱い。
広場で盛大な祭りが始まった。
焚き火を囲んで焼き魚が山盛り、ココナッツジュースが樽ごと振る舞われ、踊りと音楽が響く。
「ピニャ、英雄だぞ!」
「ミニドラゴンが島を救った!」
村長のおじさんが俺に特大の焼き魚を差し出す。
パクッと齧ると、皮はカリカリ、中はジューシーでハーブの香りが最高。
ココナッツジュースは甘くて冷たく、南国感満載だ。
「ピニャ!(南国バンザイ! これ、毎日食いたい!)」
エルちゃんは魚を頰張りながら、俺を抱き上げてくるくる回る。
アレナも珍しくリラックスして、ジュースを飲みながら微笑んでいた。
彼女の目が一瞬、優しく細められる。
過去の傷を少し忘れられたかな……?
海竜が沖合で頭を出して見守っているのが見えた。
俺はハート型の尻尾を振り、ピニャ鳴きで感謝を伝える。
「ピニャ!(おかげさまで助かったぜ、お兄さん!)」
村人たちが俺を担ぎ上げて「ピニャ! ピニャ!」とコール。
サラリーマン時代、こんな英雄待遇、絶対にない。
キラキラ鱗が祭りの火に照らされて輝き、俺は内心でドヤ顔全開だった。
マウル島の夜は、星空と波の音、笑い声に包まれていた。
黒鱗団の影はまだ残ってるけど、今日の勝利で俺たちの絆はまた強くなった。
南国バンザイ!
ピニャ魂、次の冒険も燃えてるぜ!
さあ、バーバルはもうすぐだ。




