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俺ミニドランゴンに転生す! ~小さな女の子に拾われて旅をします~  作者: 海老川ピコ


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13/21

第13話 巨大海竜との遭遇

 バーバル行きの「海風号」は順調に波を切っていた。

 甲板に吹き込む潮風が心地よく、俺、カウル――別名「ピニャ」――はエルちゃんの肩でキラキラ鱗を陽光に輝かせていた。

 黄金の首輪も相まって、まるで動く宝石箱だ。

 昨日は「餌ドラゴン」として大活躍(?)したおかげで、船員たちから干し魚を山盛りもらった。

 サラリーマン時代、残業手当で寿司くらいしかご褒美なかったのに、異世界じゃ魚の山だぜ……。


「カウル! 海、今日もキラキラしてるね! バーバル、着いたらまたショーやろう!」


 エルちゃんが金髪ツインテールを風に遊ばせながら、手すりに寄りかかって大はしゃぎ。

 8歳の無邪気さが爆発してる。

 アレナはクールに腕を組み、水平線を眺めていた。

 黒髪ポニーテールが潮風に揺れ、革の軽鎧が陽光を浴びて鋭く光る。


「エルミン、波が荒れてきたな。ピニャ、落ちるんじゃねえぞ」

「ピニャ!(俺、飛べるから平気だって!)」


 船が少し揺れ始めた頃、船員の一人が叫んだ。


「前方に異常あり! 海面が……おい、でけえ影が!」


 俺はエルちゃんの肩から身を乗り出して海を見下ろした。

 青い海面に、巨大な黒い影がゆっくりと近づいてくる。

 船の数倍はありそうな長さ。

 背びれが三角に突き出て、水を割る音がどんどん大きくなっていく。


「ピニャ!?(うわっ、マジか! 海竜!?)」


 船全体がざわついた。

 船長が大声で指示を飛ばす中、エルちゃんの目がキラキラと輝き始めた。


「わあ! ドラゴンのお兄さんだ! カウルと同じ匂いがするよ!」

「ピニャ!(同じ匂いって、俺の親戚じゃねえよ! サイズ違いすぎだろ!)」


 巨大海竜がゆっくりと海面から頭を上げた。

 青黒い鱗が陽光を反射し、宝石のように輝いている。

 目は金色で賢そうで、口からは白い牙が覗く。

 全長は船の半分以上、翼はないけど、優雅に海を泳ぐ姿はまさに海の王者だ。

 俺のキラキラ鱗を見てか、海竜がゆっくりと船に近づいてくる。


  ◇


 船員たちが慌てて武器を構え、アレナが剣の柄に手を置いた瞬間――。

 俺は思わず「ピニャ!」と鳴いてしまった。

 すると、海竜がピタリと動きを止め、巨大な頭を船のすぐ横に寄せてきた。

 そして、「ペロッ……」ぬるっと巨大な舌が俺を一舐め。

 全身がべっとり海水と唾液まみれになった。


「ピニャぁぁ!?(親戚じゃねえ! 舐めんなよ、でけえ舌! 気持ち悪い!)」


 内心で大パニック。

 でも、海竜の金色の目が、なぜか優しげに細められている。

 まるで「かわいい弟分を見つけた」みたいな表情だ。

 エルちゃんが両手を広げて大興奮。


「すごい! カウルと仲良し! ドラゴンのお兄さん、こんにちはー!」

「ピニャ!(お兄さん認定早すぎだろ!)」


 アレナが剣を収め、珍しくニヤリと笑った。


「へえ……ピニャ、お前、外交官向きだな。海竜があんなに懐くなんて初めて見たぞ」

「ピニャ!(外交官って、俺、ただピニャって鳴いただけだぞ!)」


 海竜は俺をもう一度優しく舐め(今度は優しく?)、低く唸るような声を上げた。

 なんだか、安心したような、喜んでるような響きだ。

 俺のエメラルド色の鱗と、海竜の青黒い鱗が並ぶと、なんだか不思議な調和を感じる。

 船員たちも徐々に武器を下げ、感嘆の声を漏らした。


「すげえ……ミニドラゴンが海竜を鎮めたぞ!」

「ピニャの力、ほんものだ……」


  ◇


 海竜は船の横をしばらく並走し、時々頭を寄せて俺に擦り寄ってきた。

 エルちゃんが籠から干し魚を取り出して投げると、海竜は嬉しそうにパクッと食べてくれた。

 アレナは甲板の手すりに寄りかかり、俺と海竜を交互に見て苦笑する。


「ピニャ、ただのキラキラショー担当じゃなかったな。お前、本物のドラゴンだ」

「ピニャ……(本物って……なんか照れるじゃん)」


 内心でちょっとドヤ顔。

 サラリーマン時代、誰かに「本物」なんて言われたことなかったぜ。

 巨大海竜が俺のピニャ鳴きに反応して友達になってくれるなんて、転生してよかったかも……ってか、まだ信じられねえ!

 夕暮れが近づくと、海竜はゆっくりと海中に潜り始めた。

 最後に一度、大きく尾びれを振って水しぶきを上げ、俺たちに別れを告げるように見えた。

 エルちゃんが手を振って叫ぶ。


「ドラゴンのお兄さん、またねー! バーバルで待ってるよ!」

「ピニャ!(また会えるのかよ……まあ、悪くないかも)」


 アレナが俺の頭を軽く撫でた。


「いい絆ができたな、ピニャ。北の氷原でも、こんな出会いが待ってるかもしれないぞ」

「ピニャ!(また壮大な予感すんな!)」


  ◇


 その夜、船室でエルちゃんが俺を抱きしめながら興奮冷めやらぬ様子。

 アレナは丸窓から月光の海を眺め、静かに微笑んでいた。

 巨大海竜との遭遇は、俺たちの旅に新たな風を吹き込んだ。

 キラキラ鱗が、ただ目立つだけじゃなく、誰かと繋がる力になるなんて……。

 俺はハート型の尻尾を小さく振り、内心でつぶやいた。


「ピニャ……(親戚じゃねえけど……ちょっと嬉しいかもな)」


 バーバル上陸まであと少し。

 南国の島、マウル島の冒険、そして黒鱗団の影。

 ピニャ魂の海の旅は、まだまだ波乱含みだ!

 サラリーマン時代、こんなファンタジーな出会い、夢にも思わなかったぜ!



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