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俺ミニドランゴンに転生す! ~小さな女の子に拾われて旅をします~  作者: 海老川ピコ


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12/21

第12話 カウル、餌になる!?

 海の釣り大作戦バーバル行きの帆船「海風号」に乗った瞬間、俺、カウル――別名「ピニャ」――は潮風と船の揺れに軽くめまいを覚えた。

 港町ハーケンの賑わいを背に、青い海がどこまでも広がる。

 帆が風をはらみ、甲板では船員たちが忙しく動き回っている。

 サラリーマン時代、フェリーに乗ったことすらほとんどなかった俺が、異世界の帆船で大海原を渡るなんて……展開が急すぎるだろ!

 エルちゃんは金髪ツインテールを風に揺らして、桟橋から飛び移るように甲板に立った。

 8歳の女の子とは思えない元気さで、手すりに寄りかかり海を眺める。


「わあ! 海、キラキラしてる! カウル! バーバル、どんなところかな!」

「ピニャ!(船酔いしねえといいけど……)」


 アレナはクールに剣を腰に固定し、船長にチケットを渡した後、俺たちを振り返った。

 黒髪ポニーテールが潮風に舞い、革の軽鎧が陽光を浴びて光る。

 王都での騎士団生活を終え、再び旅の護衛モード全開だ。


「エルミン、波が高い日は甲板に出るな。ピニャ、お前も落ちるんじゃねえぞ」

「ピニャ!(俺、飛べるから大丈夫だろ!)」


 船室は狭いが清潔で、二段ベッドと小さな丸窓がある。

 エルちゃんは上段を陣取り、俺は枕元で丸くなる定位置を確保。

 アレナは下段で剣を磨きながら、静かに海図を眺めていた。

 トリオの船旅、始まったぜ……と思ったら、早くも事件が起きた。


  ◇


 出港から半日後、船長が「今日は魚群が近い!」と甲板で叫んだ。

 船員たちが釣り竿を準備し、盛り上がる中、エルちゃんの目がキラキラと輝いた。

 彼女は俺を両手で持ち上げ、ニコニコしながら提案する。


「ねえ、カウル! カウルが餌になったら、きっと大きな魚が来るよ! キラキラ鱗で光って、光って!」

「ピニャ!?(餌!?俺を!?マジかよ、エルちゃん!)」


 おい、待て待て!

 俺はミニドラゴンだぞ、魚の餌じゃねえ!

 サラリーマン時代、残業の餌にされたことあるけど、これは物理的にヤバいだろ!

 アレナがクスッと笑い、腕を組んだ。


「面白いアイデアだな。ピニャの鱗は確かに目立つ。船長、網を準備してくれ」

「ピニャ!(アレナまで乗るな! 俺、恥ずかしいんだよ!)」


 でも、エルちゃんの星空みたいな瞳と「カウルなら絶対釣れるもん!」という無邪気な笑顔に、俺は負けた。

 ハート型の尻尾を小さく振って、渋々了承。


「ピニャ……(やるしかねえか……)」


 船員たちが歓声を上げ、俺をロープで軽く固定した特別製の「餌台」に乗せる。

 キラキラ鱗と黄金の首輪が陽光を反射して、海面に虹色の光を撒き散らす。

 おい、ディスコボールじゃねえぞ!

 目立ちすぎだろ、この格好!


  ◇


 海面が静かになるのを待って、エルちゃんが俺を海面近くまで降ろした。

 冷たい飛沫が鱗に当たる。

 俺は翼を少し広げてバランスを取り、内心で祈る。


「ピニャ!(魚来い! 早く終わらせてくれ!)」


 すると、突然、水面がボコボコと泡立った。

 巨大な影が近づいてくる――マグロみたいなデカい奴!

 キラキラ光に釣られたのか、魚が群がり、大きな一匹がジャンプして俺の近くに飛び出してきた。


「ピニャ!?(でけえ! マジで来やがった!)」


 俺は慌てて翼をバタバタさせ、光を強く反射。

 鱗の輝きが海中にレーザーみたいに広がり、魚を誘う。

 船員たちが網を投げ、叫び声が上がる。


「捕まったぞ! すげえ引きだ!」


 エルちゃんが興奮してロープを引く。

 アレナが素早く剣で補助し、巨大マグロが甲板にドンッと上がった。

 銀色の体がピチピチ跳ね、船全体が活気づく。


「カウル、すごい! ピニャのキラキラ大作戦、大成功!」

「ピニャ!(恥ずかしい! 餌ドラゴンとか、俺のプライドが……!)」


 内心でツッコミを連発しつつ、達成感がじわじわ来る。

 サラリーマン時代、こんな大物釣ったことねえよ……ってか、魚釣り自体初めてだ!

  ◇


 その夜、船の厨房でマグロ料理が振る舞われた。

 新鮮な刺身、グリル、味噌汁風のスープまで。

 エルちゃんは刺身をパクパク頬張り、口の周りを醤油で汚しながら笑う。


「カウル! このお刺身、トロトロで甘いよ! 餌のおかげだね!」

「ピニャ!(餌言うな! でも……うまい!)」


 俺も小さな皿に盛られた刺身を齧る。

 プリプリの食感と、脂の甘みが口いっぱいに広がる。

 前世のスーパーの切り身なんて比べ物にならない!

 グリルした身は香ばしく、皮目がカリッとして最高だ。

 グルメドラゴン魂がさらに覚醒した気がする。

 アレナはクールにフォークを進め、珍しく頰を緩めた。


「いい仕事したな、ピニャ。鱗の光、ただの飾りじゃなかったぞ」

「ピニャ!(褒められた! 内心ニヤリ……)」


 おお、アレナの「いい仕事したな」って言葉、なんか嬉しいじゃん。

 王都での訓練場や火事の時もそうだけど、こいつ、素直に認めてくれるんだよな。

 エルちゃんが俺を抱き上げ、頰ずりしてくる。


「カウル、ヒーロー! バーバルでもピニャショーやろうね!」

「ピニャ……(またショーかよ。でも、悪くないかも……)」


 甲板に月光が差し、波の音が静かに響く。

 船は順調にバーバルへ向かっている。

 巨大海竜との遭遇が予感されるような、穏やかだけどワクワクする夜だった。

 俺のキラキラ鱗がまた一つ、旅の役に立った。

 サラリーマン時代、こんな活躍なかったぜ!


  ◇


 翌朝、船長が俺に感謝の干し魚を山盛りくれた。

 エルちゃんは「次はもっと大きい魚釣ろう!」と目を輝かせ、アレナが苦笑しながら見守る。

 バーバル上陸まであと少し。

 南国の島、風の祭壇、そして新たな影……ピニャ魂の冒険は、まだまだ続く!

 俺、餌ドラゴンから脱却できる日が来るのか!?



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