屋敷に眠る妖刀
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その日は嵐の夜だった。
土砂降りの大雨に強風が吹き荒ぶ中、凄まじい雷鳴が轟き、枯れない枝垂桜の立つ屋敷へと雷光が落ちる。
しかしただの落雷ではない。
そこに混じった奇怪な気配に、屋敷の守り人は目を覚まし、暗闇の中で一人様子を見ようと動き出した。
宝石のような碧眼を爛々と輝かせ、スキップでもするかのように軽快に歩くその少女は、押し入れの奥にある提灯を見つけると、灯を点ける。
提灯は桜の花びらが描かれた透かし彫りの球体で、ホタルのように儚く淡い光を放つ。
その明かりに照らされた着物姿の天真爛漫な少女は、二パァッと歯を見せて無邪気な笑みを浮かべた。
桃色の髪をツインテールにした、中学生くらいの少女。
クリクリとした愛らしい目に、餅のようにはりの良さそうな色白の頬、八重歯を覗かせた人懐っこい笑みは小動物のような印象。
可愛らしい花柄の黒の振袖に、下の裾は短くミニスカ風で、腰の後ろには大きなリボンが結ばれている。
細くすらりと伸びた足には、白と桃色の二―ソックスをはいていた。
いわゆる和ゴスという衣装だ。
「あれれ~~~? どうして襖が開いてるの~?」
最奥の部屋の手前までとことこと歩いて来た少女は、首をかしげる。
部屋の境界である襖はわずかに開いており、縁は黒ずんで焦げ跡のようになっていた。
しばらく彼女が不思議そうに目をぱちくりさせながら観察していると、襖の表面の至るところに一文字の亀裂が生まれ、一斉に目玉を見開く。
突然ギョロ目が大量出現するという怪奇現象に、少女は怯えるどころかクスクスと楽しそうに笑った。
「きゃははっ、目々連おもしろーい。ねぇねぇ、どうして襖が開いてるのぉ? もしかして、また龍二さまが来てくれたのかなー?」
少女が目を輝かせながら問うと、目玉たちは残念そうに目を瞑った。
その後ゆっくりと目を見開き、アイコンタクトで意思を伝える。
「え~侵入者ぁ? それはおかしいね。だって鈴がいるから、鬼屋敷家に縁のある方以外は入れないはずなんだけどなー」
少女、鈴はムムムと眉を寄せ口を三角にして唸る。
しかしすぐに「まいっかぁ」と呟くと、焦る目玉たちの視線を無視し、襖を勢いよく開けた。
提灯を掲げて部屋を照らすと、奥にたたずんでいたのは、枝分かれした雷の模様が描かれた、侍のような灰色の衣に武者袴を着た、身長が二メートル近くある長い金髪の男だった。
彼が振り向くと、鈴は目を丸くする。
その顔面には数枚の呪符がびっしりと貼りつけられ、完全に素顔を隠していたのだ。
「お兄さん誰ー? もしかして悪い人ー?」
鈴が淡々とした表情で問うと、男は静かに首を横へ振り、再び後ろを振り向いた。
そこにあったのは、漆塗りの刀掛台の上に置かれた一本の妖刀。
鞘は闇のように漆黒で艶を放ち、無数の呪符が貼られている。
封印の術が込められているものだ。
柄にも呪符が巻いてあり、特定の人物にしか抜くことができない。
しかしその鞘を、侵入者は手に取った。
さすがに焦ったのか鈴が声を上げる。
「あー! その刀は龍二さまのだから、持っていっちゃダメなんだよー!?」
次の瞬間、男は妖刀を持ったまま鈴のほうを振り向くと、顔面の呪符が輝き始め、そして全身から眩い金色の雷光を発して姿を消した――
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