表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/90

満たされない日々

「……ん? ちょっ、ちょー!?」


「なんだ、まだいたのか?」


「な、なにいきなり脱ぎ始めてるんですか!? セクハラですよ!」


 桃華は悲鳴に似た甲高い叫び声を上げ、真っ赤になった顔を両手で覆っている。

 しかし、指の間はガッツリ開いているあたり、むっつりなのかもしれない。

 龍二は一度半脱ぎ状態だった上着を下まで戻し、ジト目を向けて呆れたように言った。


「いや、学校行くんだから着替えるのは当然だろ。いつまでも見てないで、出て行ってくれよ、このむっつりスケベ」


 桃華は「んなっ!?」とのけ反り、唇をわなわなと震わせる。そして、ますます顔を真っ赤にして頬を膨らませ、目の端に涙を溜めながら叫んだ。


「む、むっつりじゃないもん! 龍にぃのいじわる~~~~~!」


 彼女は子供のように叫びながら部屋を出て行った。

 去り際まで騒々しい。

 だがこれも愛嬌だと、龍二は困ったように眉尻を下げた。


「……まったく、この年でその呼び方はやめろよな。とんだ人選ミスだよ、母さん。はやく出張から帰って来てもらないと困る」


 そう呟いて机の上に置いていた写真立てを見る。

 かつて、嵐堂家の中庭で撮った写真だ。

 二人の少年少女の後ろに、一人の女性と一組の夫婦が写っている

 中央ではじけるような笑顔を浮かべ、ピースサインをしている銀髪の少年が龍二。

 手を繋いでいる麦わら帽子に白いワンピースの少女が桃華で、その後ろに彼女の両親である銀次と花が立っている。

 そして、龍二の後ろで微笑んでいるのが母、鬼屋敷月菜だ。 

 プロの陰陽師として絶大な強さを持ち、母としての優しさを兼ね備えた女性。

 父は物心がついたときからおらず、聞いても教えてはもらえなかったが、彼女が女手一つで龍二を育てた。龍二にとっては誇りであり、尊敬する偉大な人物だ。

 今は引退してしまったが、当時の職場での母の先輩にあたるのが嵐堂銀次。桃華の父であり、妻の花と共に月菜の手伝いを快く引き受けてくれたという。

 その繋がりで、龍二と桃華は古くからの付き合いなのだ。


「まったく、昔から変わらないな」


 写真の桃華を見ながら頬を緩ませ呟いた龍二は、ゆっくり支度をして家を出る――結果、遅刻した。



「――おい、面白い噂を聞いたぜ」


 越前(えちぜん)にある高校の体育館裏、朝から授業にも出ず、六人の男子生徒がたむろっていた。

 彼らは、金髪に染めてピアスをしていたり、剃り込みや刺青を入れていたりとガラが悪い。

 体育館の外の段差に座り込み駄弁(だべ)っている少年たちの中には、カバンを枕代わりにしてコンクリートに仰向けで寝そべっている龍二の姿もある。

 彼は遅刻してきて教室に行くでもなく、不良仲間たちのたまり場である体育館裏へ直行し、朝っぱらから授業をサボっていた。

 高校を囲む網の柵の外側は、民家の連なる住宅街となっており、通行人から怪訝な目を向けられることもあるが気にしていない。

 彼らは別に親友と呼べるわけでもなく、龍二が荒れていた時期に喧嘩を通じて知り合ったというだけで、惰性でつるんでいる。

 満たされない、くだらない日々だ。

※↓のご協力お願いしますm(__)m


読者様の本作への印象を知りたいので、広告の下にある☆☆☆☆☆から作品の率直な評価をお願いしますm(__)m


また、私の活動を応援くださる方は、『ブックマーク追加』や『レビュー』も一緒にして頂けると大変助かります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ