だいにわ!
いつからだったのだろうか。私がその全てを管理しなくなった時からなのか、それとも孤児院を作った時だろうか、あるいはそれよりももっと前、地方での活動を始めた時から、既に始まっていたのかもしれない。
無償では無かった。だが貧困地帯ではそもそも金を工面出来たところで医者など多くは居なかった。そこを私が救った。であれば救われた人間や、大切な人を救われた人間が私に抱く感情はどのようなものだったろうか。
感傷に近かった。だが親を亡くし明日をも知れぬ身となった子供たちを救うために私財を投げ打つ私の行動は、傍から見れば一体どのように映ったのだろうか。救われた子供たちは、私をどのように見ていたのだろうか。
偶然であり、奇跡だった。だが幸福薬の誕生は多くの命を救い、またそれ以外にも心を病んだ人間や不幸に沈む人間の助けになった。その効能は果たして、服用した人間にどのように感じられたのだろうか。
気が付けば、私は現人神などと呼ばれ祭り上げられていた。福祉団体だったはずのそれは、いつの間にか宗教団体へと変貌していた。より良い生活を送って欲しくて纏めた様々な知識は、神からの啓示として広まっているらしい。
それでも、皆が幸せになれるならと。より良い生活を送れるならと言われるがままに神を演じて。そうして私は、私が産み出した歪みを目撃することになる。
患者から信者へと変わった民衆の中には、どうやら私の為に働きたいという人間も多く、それらの人々が更に勧誘した結果宗教団体が大きくなる。特に幸福薬の効能は大きく、過去に不幸や絶望を感じた人間は特に熱心な信者になっていく。
であれば。一時的な幸福に縋らなくては生きていけないほどの、薬効が切れればその記憶からまた精神が不安定になるほどの人間はどうなるのか。あるいは、薬がもたらす幸福に溺れ、最早それなしでは生きていけなくなるほどに依存した人間はどうなるのか。
特に優秀な人間であり、大司教として私の世話係を務めている彼女もそんな一人だ。過去に起こったことをまるで見ているかのように思い出せる能力を持った彼女が、どのような過去を抱えているか聞いたことは無い。
ただ、正装として作られた司祭服の首元からかすかに見えるやけどの跡が、右半身に広く広がっているものの一部であることは知っている。フラッシュバックの起こった彼女がどれほど苦しむのかも、発作的に自決すらしかねないその暴れ具合も知っている。
落ち着かせる事も出来ずに、無理矢理に抑えて薬を飲ませた。次第にとろんと幸せそうに細められる目は、直前までの暴力的な気配こそ無いものの、うっすらとした狂気を漂わせているように見えて。どんな記憶でも、薬を服用している間は幸せに感じるということが、どれほど恐ろしい事なのか。
真に救えないことを悔やむ私に向けて、それでも彼女は幸せそうに微笑むのだ。
薬物系ヒロイン、へろいんちゃんなどという電波が悪い




