第十章 小さくて可愛い、強力助っ人登場 その4
ヒデヨによると、昨晩の実験で大魔王の念力をリチウムイオンバッテリーに蓄えて活用する方法までたどり着いたらしい。
長くてゆっくりとした強力なエネルギーを確保することができたため、ヒデヨが長年温めていた空飛ぶバイクの原理が実現したそうだ。
強力なパワーを長い間維持することができる大魔王のエネルギーを、円盤の中に滞留させることで、浮力と推進力を得ることができる。理論上可能なエネルギー量を確保できたため、簡単な試作機で実験していたようだ。
「ここまで浮いてしまえば、あとはもう簡単です」
とヒデヨは言い切った。
今日中に空飛ぶバイクと武器を作ってしまう見込みだと言う。
この男は本当に偉い。
科学好きな子どもは、車やバイクはいずれ空を飛ぶと思っているのだ。
それを正しく信じて実現してしまうヒデヨは、科学っ子の代表だ!
「もう一人、助っ人を呼んでいますから、今日はハイペースで作業ができますよ」
昨日メールをしていた彼女だな。
ヒデヨの彼女、それも超天才少女とはどんな娘だろうか? うん、興味があるな。
そのとき!
《ギィィ~》
ガレージのドアが開くと同時に、大きな声で、
「トーマくぅん~! どこぉ? トーマくぅん~」
と叫ぶ声が聞こえた。
俺とノブヲは顔を見合わせた。
「と、トーマ君?」
すると、ヒデヨが大きな声で、
「あっ、ここ! ここ! こっちに来て!」
と叫ぶので、俺とノブヲの頭の上には大きなハテナマークが出た。
ヒデヨの彼女だと思われる女は、ドタバタと色々なモノにぶつかりながら、こちらに向かってくる。
《ドンッ! ガラガラン~》
「イタッ! んんっ! もうっ! なにここ? 超痛いんだけどぉ~」
騒がしい女は、色々な音を立てながら、ブツブツと文句を言いつつ大きなコンテナの後ろから俺たちの前に現れた。
「もうっ! トーマくんいたぁ! 超痛いよぉ~」
「……。……」
俺とノブヲはその娘を見て、また固まった。
今日は良く固まる日になりそうだ。
「あっ、先輩たち、もう学校終わったんですか? もうっ、ブツけまくっちゃったぁ~。痛いしぃ~」
ニーソックスの上から膝を手でスリスリして、ピンクのヒラヒラのミニスカートを穿き、黒い七分丈のニットを着て、似合わないデカいパソコンバックを持った女の子がニコニコしてこちらを見ている。
「ひ、ヒメカちゃん?」
ノブヲが目を丸くしてそう言うと、ヒメカはビシッと敬礼のポーズをして、
「隊長どの! 舞島ヒメカ、遅ればせながら参上致しましたっ!」
可愛い……。
無敵のツインテールだ。
しかも、なんて短いスカートなんだ。
ヒラヒラしてて今にもパンツが見えそうだ。
ヒデヨの野郎、いつの間にヒメカを彼女にしたんだ? 俺よりも先に彼女を作るなんて……。
超複雑な気分だぜ。
「ヒメカぁ、プログラムできたぁ?」
完全に彼氏口調のヒデヨがそう言うと、
「もうっ、トーマくんたらっ人遣い荒すぎぃ~。ヒメカ、授業中ずっとこれやってたんだからぁ~」
俺の疑問はノブヲの疑問でもある。
「あ、あのさ、トーマ君ってのは……、なに?」
その瞬間、ヒメカはギロリと俺たちを睨みつけると、大切なパソコンが入っているとは思えない勢いでカバンを机に叩き付けた。
《ドンッ!》
「もうっ、先輩たち、あり得ないからぁ~!」
「えっ?」
俺とノブヲはお互いを見合す。
「トーマくんにはね、エジソンって立派な名前があるのっ! それをヒデヨ、ヒデヨって馬鹿にした呼び方をして。先輩たち、それってトーマくんにも野口英世さんにも超失礼なんですよっ!」
「あっ、そ、そうなの? ご、ごめん……」
ヒメカが超天才少女だとしても、何を言っているのか、よく分からない。
よく分からないが、トーマ君というのは、もしかして、トーマス・エジソンのトーマなのか?
「ねっ! トーマくん。ヒデヨとどっちで呼ばれたい?」
トーマ君ことヒデヨは顔を紅くしながら、
「き、君がそう呼んでくれるだけで、僕は、嬉しいよ」
「キャッ、トーマくん、かわいいっ!」
ヒメカはヒデヨに抱きついた。
うん、この二人のことをはもう放っておこう! それが一番いい。
それで、この二人は十分なパフォーマンスを発揮することができるんだ。
俺とノブヲはまた顔を合わせて笑った。




