第十章 小さくて可愛い、強力助っ人登場 その3
何分か、いや、何十分かボーッと見ていると、何度が窓がガタガタと揺れて、電気がチカチカとした。
「実験してんだな……」
ノブヲが言う。
「ああ、実験してんな」
俺が返す。
ヒデヨの超絶頭脳と、キリカの正義感や使命感。
ノブヲの資金力。
結局何もないのは俺だけじゃんか。
ノブヲは自分が役に立っていないと思っているが、そんなことはない。
存在自体が役に立っているのだ。
俺の存在は? なに? これは負のスパイラルに陥るぜ。
俺は昨日から今日まで、パンチラに萌えてただけだ。
ああ、疲れた。
とても疲れた二日間だ。
とりあえず……、帰ろう。
「ノブヲ、俺、帰るよ」
「ん? そう……。バイクは?」
「いや、なんか今日、コケそうだから、歩いて帰るわ」
俺は一人夜道を歩いていた。
ノブヲの家からは歩いて三十分程度。
トボトボと時間をかけて歩く。
人通りの少ない道で、ふと横に気配を感じると、節電で照明が消えたタバコの自動販売機に俺の姿が映っていた。
《顔認証タバコ自動販売機!》
と大きく書いてある。
俺は金を入れると、顔をミラーに合わせてボタンを押す。
《ピコーン! 確認しました! ご利用できます!》
瞬殺だ。
俺の顔はやはり機械認識でも瞬間的に大人顔と認識できるのだろう。
俺は自販機からタバコを取り出しながら、俺の顔は、硬派なんじゃなく、単にオッサン顔なのではないか? と、思春期の男の子の気持ちを踏みにじる最新技術を恨めしく思いながら、また歩き出した。
「火、ねえし……」
俺はタバコを制服のポケットにしまった。
タバコは前にも一度吸ったことがあった。
思いっきり肺に吸い込んだ瞬間、とんでもないイガイガが襲ってきて、ゲホゲホ、ゴホゴホと数十分間も苦しんだ。
その後二、三時間、今度は頭が痛かった。
俺の体はとてもデリケートだったのだ。
あ~ぁ、こんな俺が不良なのか? 溜め息交じりの中、俺は家に着き、そして寝た。
疲れていたのか、朝まで爆睡だった。
放課後、俺はノブヲと一緒にタクシーでノブヲんちに向かっていた。
キリカの話では、ヒデヨは昨日から徹夜で作業しているらしい。
丸三日間、ほとんど寝ていないみたいだ。
キリカも誘ったが、塾が終わったら合流するからと言って、手を振って走って行った。
昨日、キリカのパンチラをもろに見てしまったので、顔を合わせたらどう話そうと思っていたが、キリカは楽しそうに、ヒデヨとの実験のことを話してくれた。
「まだ恥ずかしいけどね」
そう言うキリカは、何だか可愛かった。
ガレージに着いたが、ヒデヨの姿はない。
昨日よりも荷物が増えたみたいだ。
コンピュータの数も倍くらいになっている。
広いガレージが足の踏み場も無いくらいモノで溢れている。
俺とノブヲは慎重にモノを避けて歩き、ソファーになだれ込んだ。
「うぐあ~ぁ!」
大きくアクビをした俺は、そのまま天井を見上げて固まった。
そんな俺の様子を見て、同じように天井を見上げたノブヲも一緒に固まった。
《ブゥーゥン》
黒い物体が天井近くで浮いている。
丸くて青いライトが滲むように光っている。
「な、なにあれ?」
ノブヲが震えた声で言う。
もしかして、念力大魔界から敵がやって来て、ヒデヨを倒し俺たちを待っているのではないだろうか? そんな不安を抱かせる、黒い物体。その物体がゆっくりと下降してきた。
《ブゥ~ン、ウ~ン、プシュウ~》
黒い物体には人間が跨っている。
ヘルメットとゴーグルをしている。
「え、エグザックス?」
俺がそう言った途端、黒い物体は、静かな音で変形を始めた。
下を向いていた丸い青い光が消え、円盤が回転すると、前輪と後輪のタイヤになり、ゆっくりと地面に着地した。
乗っていた男は丁寧な仕草でゴーグルを上げる。
「あっ、おかえりなさい! 先輩っ!」
予想通り、男はヒデヨだった。
ヘルメットを取ると、ヒデヨはにこやかに俺たちに向かって話し始めた。
こ、これは長くなりそうだ。




