第十章 小さくて可愛い、強力助っ人登場 その2
ソファーに座って集まった俺たちに、ヒデヨが分析結果を説明する。
大魔王のパワーは予想以上で、用意していたバッテリーには蓄え切れなかったらしい。
エネルギー効率化プログラムを改良して、蓄積率を高める措置が必要とのことだ。
エネカイ、エネルギー回収スカートでの回収率とマイクロ波でのエネルギー伝送については、ほぼ満足いく結果が得られたそうで、念力の性質もある程度は把握できたらしい。ヒデヨは満足げだ。
こんなときの彼の説明は、……、長い。
「実は今回、エネルギー周波数についても測定しているんです。これは、もう少し検証が必要なのですが、今得られているデータだけでも、大魔王さんのエネルギー特性は二つに分かれていると思われます」
「特性? 難しいなぁ~。もっと分かりやすく説明してよ」
ノブヲがそう聞くと、ヒデヨはノブヲに理解できるように説明し直す。
ノブヲの頭脳はひとつの指標なのだ。
ノブヲが分かれば、みんなも分かっている。
「あくまでも、まだ推測の段階ですが。大魔王さんのエネルギーは、強くて短いものと、弱くても長持ちするもの、この二種類がありそうなんです。これは歓迎されるべき特性ですよ」
「なんで歓迎するの?」
ノブヲがそう聞くと、ヒデヨは、
「ちょっと待って下さいね」
と言い、危険物の入っている軍用コンテナまで行って扉を開けると、黒光りする物体を手に戻ってきた。
う~ん、まさにデンジャーな物体だ。
「これは米軍が研究開発している最新型の自動小銃です。実は、今回の作戦でどのような武器を使用するか考えていたときに、自動小銃のレーザー化に関する研究をネットで見つけました。しかし、研究内容を見ても、やはりレーザー出力の制御とエネルギー源が最大の課題になっていて、実現は難しいというのが現状だったんです」
さてさて、長くなってきたぞ! もうヒデヨは止まらない。
ってーか、アナタはネットで何でも見れちゃうのね……。
「僕も今回は、さすがに火薬ベースのいわゆる火器を使うことは考えていませんでしたから、このキットはベースには使えるなと思って、サンプルを取り寄せして貰ったんです」
そんなモン、ご当地名物と同じ感覚でお取り寄せできるもんなのか? ノブヲんとこの会社ってスゲエんだなぁ。
「この小銃を見て下さい。この銃身の長いほうは、マシンガンのように出力の弱いレーザーがフルオートで撃てます。この短い銃身はもともとグレネードランチャーでしょうね。より破壊力の大きな攻撃をすることができます。まあ、ここまではいいんですが、この二種類のエネルギー出力を制御するための装置についてはノーアイディアなんです。また、最新のエネルギーを利用しても、この小銃に必要なエネルギー量をバッテリーにすると、百キロを軽く超えます。これはもう、実現不可能な世界ですよ」
ヒデヨは徐々に得意顔になり、携帯電話サイズの小型バッテリーを手にすると、
「実験の結果でシミュレートすると、大魔王さんのパワーはこの小型リチウムイオンバッテリーひとつに、この小銃で扱うエネルギーをおさめてしまうことができるのです! さらに最初から二種類の性質の違うエネルギーを蓄えることができれば、その制御に必要な装置も最小限のもので済みます。つまり、このレーザー小銃が現実のモノとして完成してしまうんですよっ!」
最後のほう、ヒデヨの唾が俺のほうに飛んできたが、彼がこれほどまでに興奮しているのは初めて見るかもしれない。
未知の新エネルギーに接して、彼の頭の中ではアドレナリンがどっくどくに溢れ出しているのだろう。
俺とノブヲは、ただただヒデヨの能力に関心しながら話を聞いていた。が、こちらも頭脳明晰なキリカは俺らとは違うようだ。
「そう。可能性はあるのね。じゃあ、そのエネルギー特性をもう少し検証する必要があるんでしょ? アタシの協力が必要なのよね? いいわ。何をすればいい?」
人間は、自分が『役に立たない』ことが一番ツライものである。
俺とノブヲはガレージから出て、庭の隅に置かれた古びたベンチに腰を下ろした。
二人とも無言である。
ノブヲが手にしていた缶コーヒーを手渡してくれた。俺はそれを受け取り、
「サンキュッ」
と言うと、ガレージの二階部分にある明かり取りの窓を見上げた。




