第十章 小さくて可愛い、強力助っ人登場 その1
バッテリーの入った硬いケースの上に座るキリカは、俺たちとは反対方向を向いて、うずくまっている。
彼女の肩はヒクヒクと軽く痙攣するように動いている。
俺とノブヲと大魔王は、三人ともその姿を黙って見ている。
ヒデヨはまだ独りでブツブツ言いながらパソコンの画面とにらめっこだ。
どのくらいの時間が経っただろうか。
案外短い時間だったのかもしれない。
キリカはジャージのポケットから紺色の地味なシュシュを取り出すと、長い黒髪を束ねて、一息、「ふう~」と息を吐き出すと、俺たちのほうを見た。
「き、キリ。大丈夫か?」
ノブヲが心配そうに声をかける。
「うん。もう大丈夫」
キリカは少しだけ笑顔を作りながら、首を縦に振る。
「でも、ちょっとビックリしたし……、……。やっぱり……、恥ずかしいよ」
ソファーテーブルに用意されたミネラルウォーターを手に取り、
「これ、飲んでもいい?」
と彼女は俺たちに聞いた。
「い、いいよ」
俺が応えた。
まだまだ乙女心を持った純真な女子高生が、男どもに思いっきりパンツを見られたのである。
キリカはきっともの凄く恥ずかしかったに違いない。
そして、大魔王の能力が本物だということが、彼女の前でも証明されてしまったので、念力大魔界のことや人間界の危機といった、簡単には信じられないような事に信憑性がおびたのだ。
彼女が今、気丈に振舞おうとしているのは、正義感と彼女なりの責任感からだろう。
俺は少し、彼女を巻き込んでしまったことを申し訳なく思ってしまった。
「き、キリカ……」
「なあに?」
「あ、あの……、別に無理しなくていいんだぜ。俺たちだって、パンツじゃなきゃダメなんて知らなかったしさ」
俺は最大限、キリカに気を遣ったつもりだったけど、キリカは少し鼻で笑うような表情をして、
「もうっ。パンツ、パンツって。レディーの前よ? せめて下着とか言いなさいよ」
と強い口調で言う。
コイツ、絶対Sだろ?
「無理なんかしてないわよ。アンタ、昨日もアタシの下着見てるでしょ? 二日連続で見られちゃったわ。だから、もう見られて恥ずかしいなんて思わないわよ」
強がりなのか、本当に強いのか、それは分からないが、この状況でもキリカは作戦に参加してくれるみたいだ。
彼女はゆっくりとヒデヨのところまで歩いて行くと、
「ヒデヨ君、どう? データは取れた? アタシ……、アナタたちの言うこと、信じるわ」
首だけ回してキリカのほうを見たヒデヨは、笑顔を見せて言う。
無邪気な笑顔だ。
「良かったです。信じてもらえて。データはバッチリ取れましたよ」
「そう……。良かったわ」
ヒデヨの肩に一度手を置いて、クルッと俺たちのほうを見たキリカは、これまで以上に強くキレイな目をして、
「さあ、アンタたち。次はどうすればいいの?」
地味でも、真面目でも、スカートが校則ピッタシでも、今のキリカは何だが輝いて見えるのである。
俺は、そんなキリカに見とれてしまっていた。




