第九章 実験は、うれし、たのし、はずかし その3
俺たちの目の前には、金属繊維でできたスカートを穿く一人の女の子がいる。
まさか、本当に来て、この作戦に加わってくれるとは。
ノブヲの提案でキリカを呼んだのは正解だったかもしれない。
正義感が強く超優等生であるから、この人類の危機を救済する作戦への参加と、念力大魔界というウソっぽいシチュエーションについても、ヒデヨの説明ですぐに理解することができた。
しかし、このエネカイというスカートは、遠目から見ると普通のスカートと変わらないくらい違和感がないな。
ちょっと近未来的でなんか微妙にエロいぞ。
キリカは上半身に青のジャージを着て、短い靴下にスニーカーを履いている。
エネカイの下にはスパッツを着用しているそうだ。
今の時代、スカートの下が直パンツなんてことはレアケースなのか? 確かに街中にいる無防備な超ミニスカート娘たちは、『見えてもいい』何かを穿いているのだろう。
くそっ、現代社会は男の密かなドキドキ感さえも奪おうとしているのか。
「は~い、じゃあ、そろそろ実験いきますよぉ。キリカ先輩、大丈夫ですか?」
ヒデヨの声で周りに緊張が走る。
上手くエネルギーが回収されてバッテリーに蓄えることが出来たら、俺たちは念力大魔界への第一歩を踏み出すのだ。
「あっ、ごめん。ちょっと深呼吸していいかな? スパッツ穿いてても、やっぱり恥ずかしいね」
キリカは少し頬を赤らめながら、胸に手を当てて深く息を吸い込んでいる。
軽く瞑った目を大きく開けると、『ヨシッ!』と小さな声を出して、
「ヒデヨ君、いいよぉ~。やって~」
ヒデヨが手を上げて大魔王に合図すると、大魔王は両手を前に突き出し気合を入れて『ムンッ!』と力む。
キリカは恥ずかしそうに目を硬く閉じた。
そして俺は反対に目を大きく開いた。
たとえ下にスパッツを穿いていようが、俺の趣味ではない地味で真面目な女だろうが、スカートめくりとは、そんなものを超越する魅力があるのだ。
そう、簡単に言うと、見たい! のだ。
さあ、めくれろぉ~!
《シーン……》
「……。」
「……。」
俺たちはしばらくの間、黙っていた。
ヒデヨは紙にペンで何かを書きながら考え込んでいるが、しばらくすると、書いていた紙をグシャグシャと手で丸めると、肘に手を当てて丸めた紙を投げるポーズをする。
「角度はこんな感じ、初速度は……」
《ヒュッ!》
丸まった紙の塊はキレイな弧を描いて、かなり離れたゴミ箱にストンと入った。
ヒデヨはそれを見届けると、クルッと向きを変えて大魔王のほうを向いた。
「要するに、イメージです。僕ら普通の人間も、自分の動作をイメージしてから行うほうが精度は高くなります。大魔王さん、あなたの念力もイメージでしょう? スカートをめくるというイメージを頭の中で完成させて、それを念力として現実の力に変える。僕の念力に対する考え方が合っていれば、そうなるはずです」
俺にはヒデヨが何を言っているのか、全く分からなかったが、大魔王の表情を見ていると、このオッサンは理解しているようだ。
少し困った表情を浮かべている。
大魔王は絞り出したような細い声で、
「その通りじゃ……。念力の解釈は……、合っておる」
その答えを聞くと、ヒデヨは納得した表情をして、二、三歩ゆっくりと歩いてキリカに近づくと、キリカのスカートをいきなりめくり上げた。
「キャッ!」
結構長めの黒いスパッツが見えた。
キリカの白い太ももは黒いスパッツに映えてより一層白く見える。
この足、キレイかもしれない。
スパッツも十分エロい。
「もうっ、なにするの? ヒデヨ君っ!」
スカートのすそを手で押さえながら、もう片方の手でヒデヨの肩を叩くが、ヒデヨはそれを無視するように大魔王に向かって、
「これじゃあダメなんですよね? 大魔王さん。教えて下さい。あなたのイメージするスカートめくりとは何ですか?」
「ムッ、ムムムムム……」
大魔王は渋い表情を見せて数分間黙ってしまった。
だから、俺たちも全員また数分間黙った。
キリカはヒデヨの真剣な表情を見て、恥ずかしがっていた顔をグッと引き締めて、真面目な顔を大魔王に向ける。
全員が黙って大魔王を見る。
「す、すまん……。ヒデヨ殿、その通りじゃ……」
大魔王はついに認めた……。




