第九章 実験は、うれし、たのし、はずかし その2
俺たちの命運は結局はヒデヨの頭脳にかかっている。
「ヒデヨ、俺たち、何をすればいい?」
俺たちはヒデヨの指示のもと、大魔王のスカートめくり能力の検証作業を始めた。
俺がエネルギー回収スカート、通称『エネカイ』を穿いて大魔王の前に立つ。
俺はリアリティ追及のためにズボンを脱いでエネカイを着用してみたが、この金属繊維は意外と着心地がいい。
極小のフライホイールは比較的自由度が高い状態で繋がっているため、普通の洋服のような動きやすさだ。
俺はCMで見たことのあるマリリン・モンローのポーズをして、
「さあ、大魔王、来てもいいわよんっ」
と言うと、大魔王は両手をパーで突き出して、力をこめる。
「……、……」
《シ~ン……》
「あれ? やっぱり何も起きないじゃん?」
「おかしいですねぇ。大魔王さん、どうなんですか?」
「う~ん、そうじゃのぉ。体内の念力は十分に蓄えられている状態じゃ。しかし、まったくウンともスンとも言わんのぉ~。おかしいのぉ~」
いきなり難題にぶち当たった。
肝心の念力が使えなければ、全ての苦労が水の泡だ。
いきなりのスランプなのだろうか? 皆で悩んでいると、ノブヲが遠慮がちに言った。
「あのさぁ~、それさ、女にしか通じないんじゃないの?」
「あ~? ノブヲぉ~。念力が性別判断するんかいっ!」
「いやっ、ちょっと待ってくださいよ。大魔王さんのもともとの念力では、大魔王さんがイメージしたモノが形になるんでしたよね?」
「ん? ああ、そうじゃ。頭でコントロールする感覚じゃな」
「だとしたら……、だとしたら、スカートめくりも大魔王さんの頭の中のイメージが活用されている可能性がありますね。マコト先輩がスカートを穿いているのを、大魔王さんの頭ではスカートめくりの対象として認識していない可能性があります」
だったら、スカート穿いてポーズまでキメている俺が馬鹿みたいじゃねえか。
「おいっ! 大魔王っ! 俺を女だと思ってイメージしてみろっ!」
「それは無茶じゃよぉ。お前さんは現に男じゃしな」
「じゃあノブヲ、もう一回カヨさん連れてきてよ! それで証明しようぜ」
「ええ~っ、カヨさんはもう無理だよ。昨日から口きいてくれないもん」
「じゃあ、どうすんだよ?」
これは困った。
というよりも嬉しい展開だ。
ノブヲが金で女を連れてくれば解決する。
それで検証もできるし、俺もハッピー。
まさにウィンウィンだ。
「困りましたね。誰か女性を呼ばないといけませんね。それも、この作戦に参加してくれるような女性でなければなりません。僕たちを信用してくれて、正義感の強い女性じゃないと無理ですね」
おいおいヒデヨぉ、それじゃあ金で釣った女はぜってえ無理じゃんか。
大体、俺たちを信用してスカートめくってもオッケーよっ! なんて女がどこにいるんだよ?
「僕も心当たりがないわけじゃないので、一人声をかけてみます」
なんとぉ! ヒデヨにそんな女がいるのか? 初耳だぜ。
「ひ、ヒデヨ……。その子、可愛いの?」
なんてことを聞いているんだ、俺は。
まるで俺が可愛い子のスカートをめくりたいだけだと思われる。
なんで思ったままを口にしてしまうのだろう、このおくちはぁ!
「う~ん、可愛いと言えば可愛いですね」
しかも、この野郎、認めてやがる。
じゃあ、さっさと呼んで来いっ!
「あのぉ、先輩? 黙っていてすみません。実は、この作戦のことを、すでにその子には話しているんです」
「えっ、なにぃ? マジ?」
「はい。今日このエネルギー回収スカートを作るために、フライホールの結合作業とエネルギー出力のためのプログラミングを急いでやる必要があったので、僕が結合作業に集中できるように、その子にプログラミングを頼んでしまったのです。勝手にすみません」
「おいおい、それって難しいんじゃないの? おまえじゃなくて大丈夫なの?」
「はい。その子は計算能力が恐ろしく高くて、この程度のプログラミングなら簡単にできてしまうんですよ」
超天才のお友達はやはり超天才なのか。
一体どんな女なんだ?
可愛いって言ったってヒデヨの感覚だしなぁ。がり勉で地味な女なんじゃないかな。
そんな子のスカートめくったってつまんねぇなぁ~。
ってもう携帯メールしてやがる。
こんなことを気軽に頼めるとは、すでにヒデヨの彼女なのかな……。
「すみません。今、彼女には、溜めたエネルギーを圧縮して高濃度にするための仕組みを作ってもらってるんです。明日の朝までには出来上がるみたいなので、放課後には合流できるそうです。それまで待ちますか?」
「う~ん、じゃあ明日の放課後まで待つしかなさそうだなぁ~」
俺はもう半分諦めていた。
可愛い子のスカートめくり、これを楽しみにしてたんだけどなぁ。
そのとき、ノブヲが大胆な提案をした。
「あ、あのさぁ、キリを呼べばいいじゃね?」




