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第六章 念力大魔界の危機は人間界の危機? その2

 ヒデヨは落ち着いたトーンで、でもさっきよりも、何か熱いものを奥に秘めた感じになっていた。、


「大魔王さん、あなたの能力とは一体何なんですか?」


「ワシの能力は……」


 大魔王は困惑した表情をしている。


「ワシの能力は、念力を形に変える能力じゃ」


「形に変えるとは?」


「ワシがイメージしたもの、それは龍であれ刀であれ銃であれ、何でもワシの念力で作れてしまうのじゃ」


「な、なんですと?」


 ヒデヨは驚くように言った。

 俺もノブヲももちろん驚いた。


 大魔王は自分の能力について詳しく話してくれた。

 念力とは文字通り念じて生じる力なわけだが、大魔王が念じれば、イメージしたものが形となって現れるということだ。


 イメージを具現化する修行を積んで、念力の精度を上げることによって、大魔王は龍を出して自在に操ったり、時には何千という兵士を生み出して戦わせることもできるようになったそうだ。


 ただ、使いこなすのが非常に難しい能力なので、シュミドラがその能力を活かせているかは分からないと言う。


「救いはシュミドラの能力がスカートめくりだったということですね。大魔王さんは難しい能力を上手く使うために訓練しているので、スカートめくりの能力もすぐに最大限使うことができました。でも、シュミドラはその難しい能力をスカートめくりと同じレベルで使いこなせるわけはありません。ただ、時間が経てばある程度は使いこなしてしまうでしょう。そうなると……、あとは時間との勝負ですね」


 ひとつ言ってもいいだろうか。

 ヒデヨはこの話に乗り気で、念力大魔界や人間界を救う気マンマンなのだが、普通の人間である俺たちが、スカートめくりのオッサンと一緒に龍や数千の兵隊と戦えるわけがない! この話が本当だとして、いずれ念力使いたちが人間界に攻めてくるのであれば、俺は急いで本城モトミとのラブラブお付き合いを目指して、死ぬまでにせめて俺の彼女席を一回埋めなければならない。


 そっちのほうが重要だ。


「あのさ、でも、それって念力大魔界の中で何とか解決できる話なんじゃないの? いくら何でも人間界に攻めてくるなんてさ……」


 俺はやる気のなさをアピールするように言ってみたが、いつの間にか全員で地球を救う! みたいなノリになっていて、みんなは俺に白い目を向けた。


「人間界を支配下に置くという話は何度も出てきているのじゃ。そういう考えを持つ者もたくさんおる。しかし、それをワシを含む過去の大王たちが力で抑え込んでいたのも事実じゃ。何か企てがあってワシの能力を奪ったとしたら、それは念力大魔界の危機であり、人間界の危機でもあるのじゃ!」


「マコト先輩、この話には信憑性があります。現実的なリスクとして、念力使いの暴走が起きる可能性があり、これは放ってはおけません!」


「マコトさぁ、こういう風に大魔王と出逢うことができたのも、何かの縁じゃん? これはつまり、俺たちの使命ってわけさ!」


 完全に全員乗り気だ。


 ノブヲは本来の人の良さから、大魔王の不幸に共感してしまっている。

 俺が自分勝手に彼女欲しさを理由に抜けることなんて……、できるわけがない!


「や、やるしかねぇよな!」


 完全に言わされた。


 でも、どうやって? 俺たちはただの高校生で、このオッサンは大魔王だけど今はただのスカートメクラーだ。

 か、勝てる要素がねえじゃん。


「まずは大魔王さんの能力、スカートめくりの仕組みを解明することから始めましょう。あと、念力についてもっと詳しく教えて下さい。今の状態で我々が念力大魔界に行くことが可能かどうかで戦略が違ってきます」


 ヒデヨはかなりやる気のようだ。

 念力大魔界に行くだって? 本当に勘弁して欲しいぜ。

 俺は明日からガソリンスタンドのバイトが待っているんだ。

 週末も……。


 学校に行かないのに電車で学校の近くまでバイトに行くって何だよ? そんなに俺はガソリン好きじゃねえし、ああっ、でも金はいるよなぁ~。金……。かね?


「あ、あのさ……、大魔王さ……」


 大魔王とノブヲとヒデヨが同じタイミングで俺を見た。


 そんな何かを期待するような目で見ないでくれ。

 役に立つようなことは何ひとつ言いません。

 自分勝手な、自己中心的な思考が働いているだけなんです……。


「そ、その……、なんて言うかさ、大魔王がそいつらをやっつけて復権したとしてね。まあ、俺たちが何らかの役には立っているわけじゃない? その、なんて言うかさ……」


 大魔王が笑顔で応える。


「おお、なんじゃ? ん? そうか! もちろんじゃよ!」


「えっ? まじ? いいの?」


「もちろんじゃ。あなた方がこうしてワシの助けになってくれている。これだけでも感謝でいっぱいじゃよ。ワシが復権したら、もちろんあなた方を我が念力大魔界のヒーローとして迎え入れよう。約束じゃ」


 う~ん、なんか勘違いしてるかな? 別に念力大魔界に関わりたいわけじゃなくて、ポルシェの修理代とマイ・スカブの修理代くらいを貰えればいいんだけどな……。


 まあ、しかし念力大魔界と人間界のヒーローなわけだからな。

 そんな修理代くらいは簡単に貰えるだろ。

 そうだ! 宝石とか絶対くれるよな。

 間違いない。

 こういう場合はお宝貰えるのが普通だよな。

 それを換金したら……、俺は一生働かなくてもいいかも! いいかもぉ! やばいテンション上がってきた。


 これ、お得なんじゃない?

 ヒデヨも無理な戦いをするような奴じゃないしな。

 なんか秘策があるのかも。

 となると、俺はその金でモトミ様と悠々自適のセレブライフかぁ!

 

「おい、マコト。なにニヤニヤしてるんだよ。なんか変なこと考えてるだろ?」


「ふふふふ。ノブヲ! 俺たちは今まさに人類の危機に立ち向かおうとしているのだ。俺たちはこの危機を乗り越え、念力大魔界と人間界の橋渡し役として、双方が幸せに暮らすために尽力できることだろう! 人類の歴史を変えるのは、俺たちだぜ! なっ? ヒデヨ」


 この場合は素直に乗っかればいいんじゃん。

 それが俺のためであり、人類のため。

 うん、大義名分ってやつだな。

 さあ、ヒデヨ、おまえの秘策とともに、いざ戦おうぞ!


「……。マコト先輩、覚悟のほど分かりました。今の段階では勝ち目ゼロですが、何とか頑張りましょう。さあ、これから忙しくなりますよ!」


 へっ? 勝ち目ゼロなの? お、俺、やっぱり……。


「マコトもヒデヨもこう言ってるしさ、まあ俺たちに何ができるか分からないけど、大魔王、まあ頑張って戦おうぜ! よしっ。俺は新しい実験道具を揃えるためって言って親父から金を貰ってくるぜ」


「僕は大魔王さんから念力について詳しくレクチャーを受けることにします。大魔王さん、宜しくお願いします」


「うむ、ありがとう。まさに夜露死苦じゃな!」


 ……。


 ノブヲは部屋を出て行き、ヒデヨは大魔王と話し始めた。


 俺は……、何もやることがない。


 俺の役回りって何? そんな疑問が頭をよぎったが、とりあえず今はもう真夜中だ。

 俺は母ちゃんにノブヲの家に泊まるとメールして、ガレージに置いてある古いソファーに横になった。


 よく考えたら、今日一日いろんな事があった。


 朝は心機一転、バイク通学で俺の青春の一ページが刻まれるはずだった。

 その直後、幼馴染の生意気な女のパンチラで事故り、マイ・スカブとポルシェの修理代が加算された。


 その原因となったパンチラは、なんと念力大魔界の大魔王様の仕業だったのだ!


 そして、俺たちは今、人間界の危機へ立ち向かおうとしている。


 うーん、なんだかよく分からないな、とりあえず眠すぎるわ。

 すげえ疲れている。

 俺は一瞬で眠りに落ちた。

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