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第14話家族と約束

魔力車で移動している兄達は行く当てもないので椿に教えてもらった一番近い国

火炎と刀の国【アマテラス連邦】へ向かっていたが


「気持ち悪いし、足がすっげーズキズキする」魔力車に乗っていて酔ったわけではなく

アイテムの大量に使った副作用が起こっているようで「こんなのありかよ」「大丈夫ですか?」

綾の心配そうな顔に「吐きそうだけどな、アイテムは出来るだけ頼らずにしよう」


「そうですね物に頼っていては強くはなれませんから」綾の言葉と今から向かう場所で椿が綾に

「綾さんがそう育てられたから、と言う意味ですか」椿の含みのある言い方に綾以外は分からなかったが

嫌な空気になりつつあるのは皆が分かった、



「オねぇチャん」少女が綾の手を握って「なまエキめてほシいな」少女なりの気遣いに椿が言い過ぎだった

と「踏み込みすぎた話でしたねすみません」椿が頭を下げると綾も慌てて頭を下げ「あっ・・・いえ」

「そうでしたね、あの時は色々あってまだ決めれてませんでしたね」綾が少女をジッと見つめて




「それでは美と心と書きまして・・・」綾が魔力車の壁に椿から筆のような物を借りて漢字を書き出す

「兄貴」「分かってるが漢字書けるって日本人なの?って不自然だろ」「分かった」兄弟が心の中で

会話をしているうちに少女の名前を綾が発表した



「出来ましたこれでみしんと読みます」「意味があるんですか?」「ですます~」椿達の質問に得意げに

「美しい綺麗な心でいて欲しいと、そう思いまして」綾が少女の顔色を伺うと


「おネェちゃんスゴくうれしイ!!ホンとうにイいノ!」

予想以上の喜ぶ少女に「はい」と頭を撫でながら


「これからもよろしくお願いしますね、美心」「うン!」良い雰囲気になり

その空気を壊すわけにもいかず「ミシンって布でも縫うのかよ!って突っ込みてぇー」

兄が笑いそうになる気持ちを痛む足を叩き止めた



「ミシンとかないんじゃないか?」「まぁな」と心の会話をしていたら魔力車がガタンと大きく揺れ

運転を任せていた元奴隷の男が「橋が壊れて進めませんぜ」「マジかよ」兄が魔力車から降り

確認に向かうと、木製の橋が腐っていたのか折れて進めない。








どうするものかと考えている中「おーいどうされたー」と老人が橋の向こう側から叫んでいる

「そっちにあるアマテラスってとこに行きたいんだ、他に道はないかー」兄が叫び返すと


「ここ以外ないぞ直るまで待つんじゃなー」「どのくらいなんだ?」老人が少し悩み

「2週間は無理だと思うぞー」答えに対して「それはお困りでしょう!」どこからか声がする

老人の後ろからはボサボサな赤いショートの髪に黒いオーバーオールを着た女性が現れた





老人が驚き「これは鍛冶師様ではありませんか」と道を女性に譲り下がると「どうもどうも!!」

「助けてあげよっか?」「鍛冶屋がどうにか出来るのか?」兄の質問に答えるのが面倒なようで

「見れば分かるわよ、橋からどいててよー!」それと同時に手に持ったドリルで橋を削りだした


「は?お前壊してどうすんだよ!やめろー!」兄の言葉がドリルのズドドドと爆音にかき消され

作業は止まらない「ふざけやがって」兄が橋の向こう側にいる女性へ跳躍しようと構えると


「見てください!」綾の指さす方を見ると橋はドリルで壊されるのではなく逆に元の形へと戻っていき

綺麗な木製の橋が出来上がった「これで渡れるわね」「よく分からんが助かったよ」


お礼を行って魔力車に乗り込もうとすると「待った!待った!」「なんだよ?」女性が手を差し出し

こちらを見ているので「ホイ」と兄が握手をしたが「馬鹿!代金に決まってるっしょ」と手を離す

「金いるのかよ」「ぼったくりですます~」とブーイングに



「やっかましい!払わないなら」橋にドリルを向けズドドドと音を立てる「分かった分かった」兄が渋々

金を出そうと思ったが「あぁ~これじゃダメか?」女性が受け取ったのは見た事のない金貨だったが

「んー、金貨みたいだしまぁいいや」女性は20枚程鷲掴みにするとドリルを止めて



先程の老人を担いでアマテラス連邦がある道を走って戻って行った

「変な奴だったけど助かったな」「良くないですーぼったくり野郎にクリクリされちゃってますです!」

「アレぐらい別にいいさ、早く行くぞー」兄が魔力車に戻ると出来立ての橋を魔力車が渡り道を進み


アマテラス連邦より少し離れた場所にある集落に到着した

そこはもう草木はなく赤土の地面に石がその辺りに転がっているような小規模の集落だった

「やっと来たわね遅いから迷ってんのかと思ったわよ」


集落の中央に先程の女性が胡坐組んでこっちを手招いていた「ぼったくり女ですます!」

菊の声が聞こえたのか立ち上がり「ちょっとやめてよね人聞きの悪い」とこちらに走って来るが

菊は魔力車から飛び降り「金貨をですね、あーんなに持ってく人を・・・」




菊が女性の脛に蹴りを入れ「ぼったくりのクリクリ野郎って言うんですまっす!」ゴスッと音と共に

女性が転げまわり「痛ったいわね!ロリっ子がぁー」満足気な菊が仁王立ちで「正義の勝利ですます!!」

椿が後ろから菊の頭を掴み「うちの子が失礼しました」「痛いですますぅ」と二人で頭を下げた







女性は痛みが治まったらしく立ち上がり「それでこんな何もない集落どんな用事」魔力車が5台もある事は明らかにおかしいようで「それなりの訳はあるのよね?」女性の一言は集落中に聞こえるほどに



静かだったが所々で息を殺し物陰に隠れている者が何人もいるようで綾が魔力車から降りて来て

「私は黒川家の次女黒川綾ですこの髪で理解して頂けると助かるのですが」綾が自分の髪を手で持ち

女性へと見せる「あぁ悪いね私はよそ者だし、ちょっと」女性が集落の奥に向けて手を振ると



「はい」と甚兵衛を着た職人の様な男が現れた「この子は身内なのかい?」「確かに黒川家の方かと」

女性が納得したのか「しゃーない、事情があるんならうちにおいで少しなら聞いてあげる」

「助かります」綾がペコリと一礼して誤解を生まずに済んだが綾が少しばつの悪そうな顔に見えた







女性に言われ奴隷達は集落の横に魔力車を止めテントを張る事になり、兄や綾達は女性の家に招かれた

部屋にはピッケルやハンマースコップなど鍛冶屋らしい物は一切なくどちらかと言えば工事現場を

思い出す感じに見えた




「あの子らは奴隷なのかい?」座ると同時に直球な質問に「そうだが迷惑だったか」女性が首を振り

「迷惑な奴なんざ、ここじゃ石削って運べれば誰だっていいの、奴隷もね」女性の陽気な雰囲気に

嘘はなく見え



「そいつは皆喜びそうだな行く当ても家族もいないって言ってたからな」気持ちが通じたのか

女性が手を兄へ差し出し「私は赤べこって言うんだ」兄が差し出された手を握り「なんだそりゃ」と笑う

「私にもさっぱりさ、育てた奴に聞きたいもんだが今じゃ無理な話さ」女性が部屋に



一番大事に飾ってある少し壊れている黄色いヘルメットに血が付いているのが原因なのかと思ったがさすがに聞けなかった「後さ綾ちゃんだっけかそっちの子」握った手を離し綾を指さし「はい」と答える



「私はね良く知らないけど箱入り娘って奴だろ?親御さんは心配してないのかい」綾はその質問が来ると

思っていたのか、はっきりと「大丈夫です、世間を知る旅ゆえに許可は出ておりますので」



納得はしていない様子だが「そうかい・・・ならいいけどさ」それから赤べこと一緒に

奴隷達にこの集落での暮らしを話すと大人達は感謝していたが子供達には悲しい別れの時のようで


「やだやだー!」「私も一緒がいいよ」「ですます」と何故か菊も一緒に泣いていたが

夜も更ける頃には菊と子供達はグッスリ眠っていた


赤べこの家にまた連れて行かれ色々と話を酒のつまみがわりにさせられ「楽しい人生だねあんたら!」

とゲラゲラ笑われたが「私なんかねー、アレよ?面白くもないもんよ」赤べこが綾の肩に手をまわし

酔いながら話し始める。







20年くらい前にどこかで親に捨てられた自分を変な男に拾われこの集落で育てられた

普通は大変だなと思うけれどこの世界では大した話ではないようで「おっさんがね残した物なのよコレ」

ドリルを見せつけ「死ぬ前だからってまだ年端もいかねー女の子に武器やら採掘方教えるか?」


「しかもよ、教えてる途中で落盤で死にそうな私を助けて、自分が逝っちまうなんてねー」

綾が「良いお父様だったんですね」「そうかい?」「えぇ、とても羨ましいです」綾の悲しげな感じに

「なぁ、綾の家族って・・・」兄の言葉を止めるように綾が



「ではそろそろ寝ましょう、明日も早いのですから」と寝てしまった赤べこに布団を掛けると美心のいる

テントへと慌てて帰った「分かりやすい子だね、ちゃんと話すんだよ」兄が赤べこの方を向くと

本当に寝ている様でうるさいくらいのいびきに



「もう寝てやがる」と兄も自分の寝るテントに戻ると「兄貴赤べこさんの親ってさ」弟の言う事に

自分も気づいていた兄が「俺らと一緒だったんだろうな」「でもさ、それなら落盤くらいで死ぬか?」


「俺らでさえこんな強くなれる世界だぞ」兄が体の中で話すので外に誰もいないか

確認を取る必要はないが念のために外を見渡し「お前さネトゲって言っても色々あるだろ?」

「それが何だよ?」




「少しは考えろよな、育成、音ゲー、スポーツゲーやら他にも色々戦闘しないゲームなんて

いくらでもあるんだ単純に物を作るゲームだったからで魔法やら力がある人じゃなかったんだろ」


兄の説明に納得した弟は「このゲームで良かったな俺達」「音ゲーは楽しいが戦闘には向いてないしな」

兄弟はどんなジャンルのゲームでこの世界に来ている者がいるか話ながら眠っていった。

















いつもならスマホのアラームで起きるのだがこの世界にそんな物はなく代わりに

外から聞こえる騒がしい会話で目が覚める「あぁ~・・・・うるさいな~」



「兄貴外出てみようぜ」「お前元気だな」兄自信も疲れを感じてはなくむしろ元気な事に

「自分の体じゃないってのは本当に不気味だな」「別に対して変わらないぜ?」



テントから出ると帝国の朝日よりも日差しが強く手で顔を覆う

「あんた!遅すぎよいつまで寝てんだい」「あんなに飲んでよくそんなに声でるな」


昨日は少しだけ頂いたがとても度数の高そうなお酒だったそれを浴びるように飲んでいた赤べこは

別人と思う程に元気だった「それで何を話してるんだ?」



兄が聞きながらに周りを見るが綾と美心だけがその場にいなかった

「こいつらがね、当主の娘がいるだろって言ってね仕事ができやしないのさ」


赤べこの指さす方には黒い甲冑を着込んだ者達が隊列を組んでいた後ろの方には旗を背に付けている

者がおり、「黒川ってマジかよ・・・」兄が旗に書いてある名前を見て察したのか


「もしかして綾って名前だったりします?」兄が隊列の一番前に立っている隊長に伺うと

急に隊長が何故か首を掴んできて持ち上げられる



激昂した隊長は「てめー女だからって綾様を呼び捨てにするって事は死ぬ覚悟はあるんだろうな!!」

兄の首を絞める手が段々と強まる中、自分達が来た道を指さし苦しそうな声で


「あ・・っちに・・」と伝えると隊長は手を離し「貴様、今回は見逃すがまた綾様を侮辱してみろ」

隊長が倒れこむ兄へ刀を抜き「命はないと思え!!」それだけを言い残し


黒い甲冑の隊列は綾のいない道へと進んで行った。








何度か咳き込むと落ち着き「呼び捨てにしただけで殺すとか本気かよ」

「大丈夫でしたか?」「ださいですますね~」



「どうして嘘なんて言ったのさ、それでこの集落にとばっちりが来たら責任取れるんでしょうね」

赤べこは先ほどの元気な感じは一切なくなり恨んでいるかの様に兄を睨んでいる


「あんたらに事情があるのはいいさ、だがね私にはここを守るって約束があるんだよ」

手にしている親から譲り受けたと言うドリルをこちらに向ける「譲り受けたのかその約束も」



「あんたに守る場所があるように俺にも二度も失う訳にはいかねーんだよ!」

話し合いで済まなくなりそうな空気に美心と一緒に綾がやってきた「やめてください!」



「おねェチャンだイじょうブ?」「はい」綾が兄と赤べこの間に立ち

「赤べこさんすみません昨日の事なんですが」綾が言いづらそうにしていて「嘘なんだろ?」


「はい、すみませんでした」謝る綾に赤べこは

「あんたや親がどんな奴かなんざ知らないがね」


「親子なんだよ!逃げんな」「でも私なんかが」

「親が子供の事をね、なんかって思うか馬鹿野郎が

こんな私にだって愛してるって言ってくれた親がいるんだ」


赤べこから聞いた昨晩の事を思い出す綾は自信なさげな声で「分かってもらえるのでしょうか?」


綾が何について言ってるかなど赤べこは分からないが

「大丈夫さ、逃げずに真っ正面から言ってやんな」


美心が綾の手を両手で握り

「ワたしがいっしょダカらこわクなイヨオねぇちゃン」


「そうですね、もう全然平気です」美心の手を握り返すと笑顔で答えるその様子を見ていたのか

空から鴉が下りて来て


今度は「やっと!やっと!見つけました」と声のする方へと鴉が飛んで行き、鴉は黒い甲冑を着込んだ男

の腕に止まった、綾は美心を自分の後ろへ背中を押して「貴方達はいつもあの様に手荒なのですか?」


綾の言葉に先程の隊長とその隊員が綾の前まで来ると隊長が当然の様に

「手荒?綾様、失礼ですがあの場では殺されてもおかしくはなかったと思いますが」


「何をしたと言うのですか私の」綾が言葉の途中で止まってしまうその先を言ってしまったら

取り返しのつかない事になってしまうのではないかと考えてしまったからだが



「綾様その言葉の先次第によっては下がれませんが如何なのですか」隊長が冷静な表情だが

明らかな怒りに「隊長綾様の御前です落ち着いて下さい」「あぁ・・・そうだな」



隊長は怒りを一度大きく深呼吸すると共に体から吐き出すと

「駕籠を持ってこい!綾様の帰国だぁー!!」隊長の号令に隊員速やかに綾の足元に駕籠を用意した


「私は帰るなどは」「お母様が危篤なのです、ご理解を」隊長が他の者に聞こえないよう耳元で告げると

「おネぇちゃン」美心の手を握る力が強まっていき、強まる程に綾の心には葛藤が強くなる



「綾!!しっかりしろ」兄が大きな呼び声で「お前はどうしたいんだ、悩んでいたって進まねーぞ」

「私は美心や皆と一緒に居たいです・・・ですが」「帰らなきゃダメなのか?」「はい」



兄は「じゃあほれ小指出してみ」「あっはい」兄が手を綾の前に小指だけ立てて向けると綾も

それを真似ると小指を絡め「急ぐ事もないわけだしゆっくりしてこい、な?」「はい」


「ゆーびきりげんまん嘘ついたら針千本飲ーます指きった」「えっ・・針は飲み物ではないですよ?」

指を離し「日本ぽいから知ってると思ったが知らないか」



「俺の暮らしてた所でやってる約束の儀式みたいなもん」「約束ですか」

兄が綾から少し距離を取り「絶対に待ってるから・・・な?」兄と綾の話を聞いていた


美心が兄の方へ駆け寄る「ダイじょウぶわたシもマッってるから」「はい」

綾が駕籠に乗る姿は乗り慣れている様に見え、当然だとは思っているが兄は綾の何も知らないんだなと

言葉にできない気持ちが心を絞めつけてくるようだった。









綾の駕籠が見えなくなるまで見送ると赤べこの方に近づき言いづらそうに

髪を手でかくと「さっきは悪かった世話になっておきながら、全部俺の身勝手だった」


頭を下げる兄をキョトンとした顔で見つめる赤べこは

「別にもういいさ、それより綾ちゃんの事待っててやるってあんたらどこに泊まる気だい?」

赤べこがニヤニヤする顔に言いたい事が分かった兄が



「綾が帰ってくるまで止めてもらえるか?」「それならねー」赤べこが手のこっちに向けると

「あぁ!また金取る気ですます!」「そりゃあ、さすがに1日ぐらいはいいが何日もはねー」


「野宿ですます!この女の思う壺は嫌ですます!」「この辺はモンスターも出るのよねー」

「私がぶっ殺してやるですます平気ですます」「もういいから前と同じ金貨でも平気か?」


邪魔する菊を椿が押さえ「全然構わないわよ、模様は分かんないけど金には変わりないんだもの」

金を払い泊まる宿を手に入れ、その後赤べこの採掘を手伝ったりしているとあっと言う間に日は暮れた。

















綾を乗せた駕籠がアマテラス連邦に到着した

そこは強く照りつける太陽に遠くには火山が見え

街中は木材作りの平屋が大きな道の左右に並んでいる、そこに住む住民はエルフの国と違い

着物や羽織に甚兵衛など雰囲気が江戸時代に近い感じになっている




「皆の者聞くが良い綾様の帰還である!」隊長の声に人々が集まり騒ぎ出す

綾が帰って来た事に人々が喜ぶ中で綾は下を向き



黙り込むのみそれに対し「恥ずかしがらずとも皆に手を振っては如何ですかな?」

無視をする綾に「これからもっと賑やかなになるのですからね・・・」その一言を最後に静かに


周りの声など聞こえていないかのように綾の乗った駕籠は連邦の東側にある大きな武家屋敷の様な場所に

着いた、その武家屋敷は黒い屋根に黒い壁入り口の門の左右には黒川と大きく書かれている



威圧的にそれでいて自己主張感の強いその見た目に昔を思い出したのか苦しそうな顔で

「もう戻るつもりなどなかったのに」綾が小さくつぶやきその言葉を閉じ込めるかのように

門がギィっと音を立て閉まる。

これから綾のストーリーとなっていくので

是非ともよろしくお願い致します。

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