第12話裏切りと信頼
「そうは言っても昔からそう呼んでおるしのー」「俺はちゃんとズーズって呼んでるだろ」
帝王が男エルフの持っていた物と同じ通信機で誰かと話している
「兄貴しっかりしろ今のうちに俺に任せろ」弟からの提案に物理的な力での戦闘なのでその方が良いと思い
「分かった」と渋々了承した時「呼び名など後で良い、早くあの化け物共の退治に移るぞ」
「お前ちゃんと・・・」帝王は通信機の電源を会話中に鬱陶しくなり切ってしまい
こちらに向かって来るその様子を見て弟が「兄貴早くしろ」と兄を急かすが
「おい、あんたが言ってる化け物共ってのは綾の事言ってんのか」弟の言葉を無視して帝王に質問をする
「貴様の仲間であろう?あの様な醜き姿そうは出会えまいどこで拾ったか伺いたいものだわ」
帝王があざ笑い答えたと思うと今度は急に汚物を見るかのような目で
「あのような者は不幸しか運ばん、現に貴様がその結末よ」ハルバードを振り下ろそうと構えると
帝王の手首めがけて竜巻が襲い掛かった
「国の長たる者がそんな事しか言えないなんて見た目と同じエルフにあるまじき豚野郎発言ね」
エルに椿や菊がテントから出て来ていた「お前ら出るなって言っただろ!」「そんなでよく言えるわね」
会話の途中にまた青い閃光が今度はエルの頭へと放たれるが「ふせろ!」兄の叫びを無視し堂々と
仁王立ちで構えているエルの前方に
暗い夜間でも見える紫色の薄膜が青い閃光を蒸発させ砕ける「どう?これでも言えるかしら」
エルは髪をかきあげ自信満々のドヤ顔で「椿菊よくやったわ」「はい」「余裕ですます」
「お前じゃねーのかよ」「文句があるのかしら」腕を組みながらこちらを見るエルに
自分はこの異世界で一人ではない事を感じ「いや、すげー助かったし独りよがりすぎたありがとう」
兄がつい素直にお礼を言ってしまいエルがしどろもどろになり「分かればいいのよ」
顔を背けてしまった「エルちゃん」「来ますですますぅー!」
椿と菊が先程と同じ紫色の薄膜を出しエルをも一緒に包み込む
「そんな物で我が一撃が防げると思うてか!」そう言うと帝王がハルバードを逆手に持ち
「大地よ!我が野望に呼応せよ!」叫びと共に豪速で放たれたハルバードが赤茶色に輝き
エル達を守る薄膜に直撃したと同時に遠くからも見える程の光を放ち爆発した
あまりの衝撃に倒れていた兄は爆風に飛ばされ光が収まり始めるとエルの声が聞こえてきた
「椿!菊!」爆風の中で服が土まみれになる程度で助かったエルがその犠牲になったであろう
二人を砂煙の中見つけると「エルちゃんごめんなさい服が・・・」「腕が痛いですますぅ~」
椿も菊も両腕だけが焼きただれ激痛のはずがまったく平気そうな表情に帝王が気づいたように
「おい娘、貴様の使用人共のつまらぬ態度もしや」「うるさい!!」エルが今までにない程に
取り乱し怒っている「やはりそうであるか、そやつらは生け捕りじゃな・・・クッハハ」
帝王の先程までの怒りはどこへやら、まるで新しい玩具を手にした子供のように喜んでいる
その姿に「この子達を物扱いするなぁ!」エルが手にしていた杖を構え
帝王に放った竜巻をさらに力を込めて撃ち込んだが「奇襲でない限りこのような魔法」と帝王が
拳を正面から竜巻にぶち込むと竜巻は風となり消えてしまった
「私じゃ・・・やっぱり届かない・・・この子達さえ救えない」エルの諦めかけている姿に
「己すら守れぬ者がほざくでないわ」帝王がエルにとどめを刺すため武器を拾おうとした瞬間
ガシャリ、ガシャリとフルアーマーの音が徐々に近づいて来る
「ム!何度も食らう我ではないぞ」武器を拾うのを諦め回避の体制を取った
「離れろ!」大きな両手剣をエルと帝王の間に割り込むような形で叩き込むが
事前に回避する気でいた帝王には避けられ地面だけを砕いた
「エルさん絶対に救えない事なんてありません、俺に任せてください」
弟がエル達の盾になるような形で両手剣を構えるが
「えっ・・・・誰?」エルの戸惑う表情に体の中にいる兄が諭すように
「お前なぁ、綾以外の前じゃ俺しか出てないだろ」「あっ・・・そうだったどうしよう」
エル達からはブツブツと独り言を言っている様にしか見えず「誰と話してるの?それにあなた誰よ」
とエルに言われ「お前じゃ無理だ俺の言ったとおりに喋れ」「分かった」
「あなた達と一緒にいるダークエルフさんの仲間です綾さんに聞いていただければ
分かるかと思います、今はまず俺に任せてそこから動かないでください」
エルは少し迷ったが今は頼る以外に道はないと思い「分かった、でも閃光はもう防げないわよ」
「それなら大丈夫です・・・タブン」弟が自信なさげにそう言うと
帝王が通信機で誰かに連絡を取っていた「では行くぞ、間違っても誤射するでないぞ!」
相手のまた返事を聞かずに通信機を切り拾い損ねたハルバードは諦め
帝王がこちらに向け拳を握る「来るがよい!我が拳に大地の加護あれ!」そう言い放ち先程のハルバードに
付与されていたのと同じ赤茶色の光が手から肩までを包み込むと
その巨体に似つかわしくない程の華麗なフットワークで間合いを詰めて来た
「その大層な剣もこれで振れまい」危険を感じ両手剣を手放し「マジックカウンター」
弟が一つだけどうにかバフ魔法を唱えるが「ウオオォォ!!」と帝王が獣のような雄たけびと
共に拳のラッシュに他のバフ魔法を唱える事ができず
ラッシュから逃れるため後ろに跳ぶ、すると帝王は追撃しず逆に距離を取る
その瞬間後ろに下がる事を見越したように青い閃光が弟の兜を弾け飛ばす
「我が拳を受けて砕けず今の一閃すらも兜を飛ばすのみ、その鎧に感謝せよ人間」
兜を弾け飛ばし額から血が流れる「魔法扱いにはされないのか、これはもう当たるわけには行かないな」
だが弟のキャラ性能は基本防御力で防ぎ戦うスタイル高速な攻撃を避ける程の
回避はできないそれを知っている兄が
「おい、俺が」「分かった兄貴に任せる」「まだ何も言ってないぞ」
弟には兄の言葉から体が一つになったせいか兄弟だからこそなのか絶対に信じて大丈夫だと感じた
「手間が省けるからいいが俺が合図を出したら交代だ、それ以外は全力で閃光も無視だ突っ込め!」
「分かった」心の中での会話はすぐに終わり
「行くぞ帝王」先程落とした両手剣を拾いながら正面から攻め込む
「まだ諦めぬか」帝王がまた華麗なフットワークでこちらに近づく
距離が手の届く手前になると両手剣を逆手に持ち地面に刺し「ナパームソード」
地面が光目の前の帝王ごと自爆した、だがフルプレートに身を包んでいる分弟は倒れずに
「リミットブレイク、シャインアーマー」帝王が立て直す前に素早くバフ魔法を唱える
火力を上げかつ帝王のラッシュに耐えれるように攻撃でのけぞらない魔法を使うが
帝王がナパームソードの爆風で飛んだせいで距離が離れまた閃光がバフ魔法のかけるすきを狙い撃つ
「今だ」兄の一声と同時に体が光兄へと変わるその瞬間に兄が手を閃光の方向へと向けていた
「飲み込め」右手から先の空間が歪みその中へと閃光が飲まれて行くそして左手を
態勢を立て直した帝王の方に向け左手の先が空間を歪ませさっきの閃光が吐き出される
「なっ」帝王の左肩を閃光が大きな風穴を開け「グァアァッ!」悲痛な叫びが響く
「いってぇだろ、飲むのでさえ痛いからな」兄が右手をブンブン振り手の熱さを和らげる
「任せたぞ」そう言うと今度はまた弟に変わり「帝王!」弟が両手剣を大きく振り上げ
帝王へ向かい飛び込むと痛みに耐えながら左へ回避した
だが地面を砕く両手剣の音がせず弟の手には両手剣は無く「救いたい気持ちは届くんだ!」
帝王の回避する事を見越していた弟は両手剣をしまい力強い拳で帝王の巨体を天へと打ち上げる
「そんな・・・帝王様が負ける・・」男エルフが思い描いた未来との違いに絶望をしていると
「ねぇ」男エルフに今一番聞きたくない声が聞こえる無視をしたいだが答えない訳にはいかず
「どうしてって言いたいんだろ」「分かってるなら」「怖いからだよ当たり前だろ」
男エルフはエルから感じる嫌悪感と泣き出しそうな瞳に耐えれず
「俺にどうしろってんだ、何も知らない人間に命をかけろって?得る物もなく失うだけだ
そんなの俺は・・・」
兄に弟が体を変わり男エルフへ近づき胸倉を掴むと「そうか、本当にそれでいいんだな?」
兄が合流した時と同じ言葉をかける男エルフは「あんたやっぱ全部見てたんだな」
「当然」兄の言葉で観念したように「エル、俺は怖いんだよ死ぬのも嫌だ」「さっき聞いたわよ」
男エルフは大きく息を吸ってエルの目しっかり見直す
「俺はお前がいなくなるのが嫌なんだずっと一緒に仕事して俺が上司にこびても一緒に居てくれた
嬉しかった」
「他人にこびて自分の事しか考えない俺と違ってお前には人を思いやる気持ちが俺にない物を持ってる
それが嫌いでだけどすげーかっこよくて」
男エルフが最後に胸に手を当て気持ちを落ち着け
「だからよ、あの時死にそうになった時にエルが死んだら、こいつらと一緒に俺の前からいなくなったら
そう考えると怖くて死ぬ程嫌だったんだよ」
男エルフは自分の気持ちを全てぶちまけると足の力が抜け地面へ座り込む
「馬鹿じゃないそんなんで椿達に怪我させてそれで私が納得すると思ってんの?」
エルが兄の方を向き「お前に任せる好きにしろ」「そう・・・迷惑かけるわね」
そう言うと大きくため息をつき
「このチキン野郎!」叫び声と共にエルに男エルフが蹴飛ばされ転がった
「あんたが二度とそんな馬鹿げた事考えれないように私が教育してあげる帝国ごと全部よ!」
「許してくれるのか」「私が帝国を変える事ができたらね、それまでは死ぬ気でやんなさい」
男エルフが泣き出すと「泣く暇なんてないわよ椿達の治療手伝いなさい」「あぁ・・・分かった」
その後綾の傷は人であったら治るはずはなかったが食料にあった肉などを食べさせ回復した
兄が椿達を心配し「エルそっちはどうなんだ?」「ダメねしばらくは両手は使えそうにないわ」
椿が頭を下げ「すみません」と謝るが「穀潰し状態ですます~」「ふざけない」と菊の頭をエルが
痛くない程度に叩き「ちょっとこっち来て」エルが兄をテントから連れ出す
少し魔力車から離れた所で兄に話をし始める「私に話す事あるんじゃないの?」エルの言葉の意味を
察したのか「これの事か」兄が弟に一瞬変わりまた戻る「すごいだろ?手品とか俺さ得意で・・・」
エルの真剣な表情に誤魔化しが効かないと思い「細かい事は俺達自身わかんねーし簡単に言うとこの体に
俺と弟が入ってんだよ」少し驚いたが実際目の前で起きた事でエルも疑わずに
「呪いなの?」「分からん目が覚めたらってとこだ逆にそんな呪いあるのかって話だ」「知らないわね」
エルも見た事のない奇妙な事に今は諦め「仕方ないわね、そのおかげで今回助かったわけだし」
「見事な作戦だったろ?」「はいはい、それでこれからの事だけど」エルが話を変えると共に
少し周りから離して止めてある魔力車の荷台に乗り込み
「コレどうする?」「どうするっていちお帝王らしいしなぁーどうしたもんか」
二人が見つめる先には「コレとは何じゃ!それにいちおでもらしいでもない帝王であるぞ!」
両腕両足を拘束魔法をエルにかけられ身動きの取れない帝王が転がっていた
「貴様ら我の傷を治し生かすとは何を考えておる、今更許しはせん皆殺しには変わらんぞ!」
拘束されコロコロ転がっている分際での上から目線に「黙りなさいこの豚」エルが帝王を
足で踏みながら「よくもそんな状態で偉そうにできるわね」
「帝王である以上当たり前だ、それより足を退けよ無礼者」エルが偉そうな態度に腹が立ち
「これ?これが嫌なら豚らしくブヒブヒ鳴いたらやめてあげるわよ」さらに偉そうな態度で返した
「ブヒブヒ」「えっ・・」「ぬ・・・」見ていた兄が少し羨ましそうな目線でエルの足を見ながら鳴き
エルと帝王から冷ややかな汚物を見る目を向けられた
「だって鳴けって言ったじゃん!」「あんたに言ってないわよ気持ち悪っ」エルが足を退けて
本題に戻り帝王からもう一人の仲間について聞き出そうにも口を割らず
男エルフも教えられておらず「仕方ない、これでいくか」そう言うと右手で帝王の頭を掴む
「ぬっ!貴様何をする気じゃ」「ちょっと待って」何故かエルが止めに入り手を放す
「悪党みたいとか卑劣とか相手が相手だしいいだろ」「違うわよその洗脳以外に魔法はないの?」
兄が言われてみるとあったような気がしてだが何も思い出せず
弟に相談してみた「そうえば魔法とかスキル少なくね?」「いや俺のは」
「俺のだよだって魔法攻撃とかメインなんだぜ」「たしかに言われてみるとあったような」
二人で考えてみるが一切思い出せずそもそも他の魔法などあったかすらあやふやになったきた
「あぁ~ダメだ思い出せん」「一人で喋ってるみたいでやっぱ変ね」
エルには弟の事を会話をするためだと伝えたが結局気味悪がられ
「もういいわ、やっちゃいなさい」何故かエルに命令され「はいはい」再度右手で帝王の頭を掴み
「ブレインハック」
帝王の瞳から生気も先程までの騒がしさもなくなり「じゃあ帝王さんあんたが連絡してたのは誰だ?」
兄からの質問にゆっくり答えていく「タカシじゃ・・・」
「タカシってのは何者なんだ?」「我のネトゲ友だったんじゃ」
帝王の回答に驚くがエルの手前深く聞けず別の質問をした
「そのタカシはどこに行ったか分かるか?」「あやつは大の負けず嫌いじゃからな・・・」
帝王が途中で口を閉じてしまった「どうしたのよ?」「抵抗してんのかな、負けず嫌いだからなんだよ」
兄が頭を掴んでいる手に力をさらに入れて帝王がゆっくりと口を開き
「メガスーツを取りに行ったんじゃ」帝王の言うメガスーツが分からないが
「よく分からないけど戻ってくるって事?」「そうなるわな」
二人がとりあえず皆に説明しに行こうと魔力車から出ると綾がこちらに急いで来た
「大変です大きな魔物がこちらに向かってきてます」「もうすぐ夜明けなのにどうしてかしら」
兄とエルが綾に連れられ魔物のいる方へ向かうと
そこには5メートルもの高さに頭はなく体が戦闘機の形をした巨大なロボットのような物が
二足歩行で歩いてきている、そしてロボットらしき物がこちらを見つけたのか
大きくしゃがみ「綾急いで魔力車で逃げろ」「えっ?」「いいから!早く」喋り終わる前に
先程のロボットらしき物がいなくなり上から降って来た
その巨体から来る風圧は3人を軽く吹き飛ばして膝をつくと体の中央が開き
「あんたもあんの馬鹿も何で思い通りにならねぇかなぁ」気だるそうなだが少し怒っている言葉
「やっぱお前がタカシかよ・・・」兄が予想していた通りの綾を殺したあの男が出て来た
「タカシって実名出すんじゃねー馬鹿がっ!」男がキレながら
「もうコイツを出したんだテメーら全員キル数に加算決定!」男がロボットに乗り込み
ロボットの両腕に付いている剣の柄を取り出し両手で持つと
柄の先からビーム状の剣が伸びる「綾エル、お前らは魔力車で」兄が二人に逃げるように言いかけると
「馬鹿ですか」「馬鹿じゃないの」と二人から同時に怒られた
「私達4人で倒すんです」「そうよ、4人だって勝てるか分かんないんだから」兄と体の中から
見ていた弟が「兄貴怖いのは分かるけどよ」「分かってる」
ずっと兄を見ていた弟は綾が生き返ったとはいえ一度は死なせてしまったそのトラウマで自分だけで
戦おうとしすぎているのに気づいていた
「俺もいる」弟に慰められているのに恥ずかしくなり「うるせー分かったって言ってんだろ」
兄は心の中で弟に感謝しつつ大きく息を吸うと「綾、エル俺らだけじゃ無理だ助けてくれ」
「はい」「ありがたく思いなさい」先程まで目の前のロボットがとても大きく見えていたが
今では大したことなく見え「綾は俺に付いて来てくれ」「エルお前はこれ飲んで援護頼む」
兄が渡したのは前に飲ませたアイテム「任せなさい」と言うと一気に飲み干し少し後ろに距離を取る




