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第10話ボス戦と希望

ズーズ帝国で初めての朝を迎える兄はエルを連れ正門に向かって

国の中央にある商店街を歩いていた


「ここが噴水広場か食べ物に雑貨やなんか分からない物まで売ってるな」兄がキョロキョロしながら

歩くのを見てエルが「あんたもう少し自然にしなさい、田舎者まるだしよ」

「田舎者って電柱すらない国に言われたかないんだが」エルが不思議そうな顔をしながら

「は?電柱って何よ?」「あぁ・・・何でもない忘れてくれ」面倒なので説明をやめた



その間に商店街を抜け正門が見えてきた「うわ、最悪だ」兄がクルっと門へ背を向けた

「何してんの早く行くわよ」エルに引きずられるように連れて行かれる「ちょっと待ってくれ!」




兄が止めたが一足遅く

「あっ・・・おい君はあの時の子だろ急に走っていくから心配していたんだぞ」兵が兄に駆け寄り

諦めた兄が一度深呼吸すると

「あの時は通してくださりありがとうございます」急に猫なで声を出す兄の姿に

「オエェ~・・・気持ちわる!」先程までとのギャップに吐き気がしてきたエルがゴミを見る目を浴びせる


「そちらにいるのはキライト家のご息女様ではありませんか」兵が驚き慌てて綺麗な直立をした

「いいわよ楽になさい家なんて関係ない階級だって変わんないでしょ?」エルと兵士の話を聞き兄が



「エルさんって貴族か何かでしたの?」兄が頬に手をあてできる限り女性らしく真似て聞いてみた

「まだやってんの・・・オエ」エルの態度に兵士が「この女性が何かされているのですか?」



兄の本性を知らない兵が何があるのか尋ねると兄が兵に詰め寄り「いいえ何もありませんことよ」

作り笑顔が崩壊しかける兄を見て「ありませんことよってどんなキャラよ」エルのツッコミを受け




これはもうダメだなと思った兄が周囲を確認し人差し指を立てると兵の視線を指に集中させ

「ブレインハック」と小さく唱える


エルが兄の呪文を見て「精神支配もできるのね本当に悪党にぴったり」と嫌味を言ってきた

「ふざけんな人がせっかく女を武器に門番室まで行こうぜ作戦崩しやがって」兄が普段通りになり

「そんな馬鹿な事しなくても私が言えば普通に入れてくれるわよバーカ!」と幼稚な罵り合いが始まった






数分後辺りに人の目を感じ「バーカザコ貴族!・・・・あっ」気づいた頃にはヒソヒソと周りで

警戒され始め「喧嘩か?」「いや兵士さんがねあの女性ともめておるんじゃ」とどこからか声がした

「やばいめちゃくちゃ見られてる」兄が焦るのを気にも留めず


「ザコ言う・ウッ・なぁ~まだこれからだし・・・全然これからだしぃ」罵り合いの結果

エルが大人らしさなど微塵も感じない程泣き崩れ



「おいアレ見てみろ、兵士さんが泣かされてねーか?」「嘘だろあんな子供みたいな泣き方ありえねー」

と哀れみの視線を感じ「ごめん悪かったそんなに泣くな周りを見ろって」


全く返事がなくより一層ヒクヒクと泣いている「あぁもうめんどい」兄が泣きじゃくるエルを担ぎ

「兵士さんお腹が痛い?それは大変」と周りに言い訳をするように正門の方へと走り去った。









正門の横の壁に繋がっている門番室にエルフの門番が二人いた、ようやく泣き止んだエルと一緒に

兄が正門を隠れながら観察している「もういいか?」「教えなかったあんたが全部悪い」


「恥ずかしいし言いづらかったんだよ」「・・・・・」エルはこちらを見ずに黙り込む

「すみませんでした俺が全部悪かったから今からやる事もちゃんと説明するから・・・な?」



エルが満足した顔で声たからかに「そうねそこまで言うなら許してあげるわさっさと言いなさい」

エルの言葉に殴りたい気持ちを抑え「今からこの門番をな使って部屋に入って外から見えなくなったら」

説明の途中で「そこで何を話しているんだ?」



先程まで門番室の中から見えていた二人が後ろに立っていた「えっと・・・」兄が誰かに見られる

危険性があるがブレインハックをかけようとすると「あなた達門番の抜き打ち検査に来たのよ」

エルの言葉を聞き魔法をやめた



兵士がエルに気づき「これはキライト家のエル様と・・・そちらの方は?」問い掛ける

「コイツ」と言いかけ「えっとこの子は私の友人よ」兄が話を合わせるように「どうも」と軽くおじぎした

エルが良い事を思いついたように「そうだわ、この兵士がこの子にからんでたのをたまたま助けたのよ」


門番二人がエルの嘘に驚き「おまっ・・・何してんだ申し訳ありませんエル様の友人にそのような事を」

魔法をかけられている仲間の頭を無理やり下げさせ門番3人が頭を下げた


「そんないいんですよ、エルちゃんが助けてくれたし」と兄が友人を演じつつ兵士を操り喋らせる

「スミマセンデシタ」と変な喋り方になってしまった「もう少し上手く操りなさいよ」

エルが耳元でささやく「分かってるけど難しいんだよこれが」兄がそういいながら




指先を見えない程度に動かし兵士を操る「抜き打ち検査でしたかなら部屋に案内しマウス」

兵士の言動に「お前何ふざけてんだちゃんとしないと仕事無くなるんだぞ」と門番の一人に兵士が

頭を叩かれた「あんた何よマウスって」「やった事ねーんだから仕方ないだろ」兄がもう一度操ろうと



指を動かす前に「すみませんコイツ昨日の酒がまだ抜けてないのかもしれませんどうぞこちらです」

門番二人が門番室へ案内をし始めた






「エル様やご友人さんには汚い場所かも知れませんがお入りください」門番が部屋のドアを開ける

中には必要最低限な椅子と机交代で警備をするためかベットが二つありその先に鉄の扉があった


「じゃあ失礼するわね」「お邪魔します」とエルと兄が門番室へ入り見るほどの物もないが

適当に部屋の周囲を見たのちに「検査って何するのよ?よく知らないわよ」「こっからは任せろ」


兄が鉄の扉に近づき「あのーこのお部屋は何ですか?」と開けようとする

「すみませんこちらは門の魔力制御室ですので関係者以外入れる事はできないのです」

門番が扉と兄の間に慌てて入りこんだ


「エルちゃんこっちは検査しないの?」と兄が促し

「そうね全部調べないと意味がないわ、いいわよね?」とエルが扉に近づく



「分かりました、でも機械には触れないでくださいね」扉の前の門番が道を譲りエルが開ける

「私も見てみたいわ」と半ば強引に兄も入る「あぁ!困ります」と門番二人も続いて部屋に入る


中には中世なエルフの国には似つかわしくないゴテゴテとした機械があり

機械には手の形のくぼみとどのくらい魔力を送っているかのメーターが付いている


「へぇーこれが機械ね、初めて見たわ触っていい?」「それは困ります故障でもしたら私たちでは直せませんので」エルと門番のやり取りの間に兄が鉄の扉を閉め人目の入らない部屋で二度鈍い音がした








数分後門番二人が縄で縛られ尋問を受けていた

「門を開けるにはどうするんだ?」「私たちには無理だ王城に連絡を取らねば開かないんだ」

「連絡って毎回どうやって聞くんだよ」「それは言えない私たちも門番だ絶対に言わないぞ」


門番二人は少し足が震えているエルが少し可哀想になったのか

「別に殺したりしないわよ、安心なさい」「裏切者を信用できるか」


エルが裏切者と言われ「私はちがっ」「何が違うお前も、キライト家も終わりだ」

何も言い返せなくなってしまい落ち込んでいると






「馬鹿な奴らだ、この女がそんな事できるかよ」兄がエルを抱き上げニヤニヤと笑い

「こんな奴な、脅して使って殺してそれでお終い仲間など不要だ」と体の嫌がりそうな所を触り

「いやっ」エルが悲鳴を出し部屋の隅へ座り込んでしまった。


「そこで黙ってろ」エルに強く言い捨てると門番たちの頭を両手で持ち

「最後にお別れの言葉は済ませておけよ、雑魚共」兄の言葉に震え泣きながらに


「にっ・・逃げてください」「お願いします助けを」先程までと同じ者かと疑いたくなる程

今度はエルを心配して、罵った分余計に逃がそうと必死になった二人に


「ブレインハック」二人の目は虚ろな瞳に変わり先程の兵士と同じく操り人形と化した

「ふぅ~お疲れさん、連絡ってどう取ればいっ!」兄の顎へと見事なパンチがねじ込まれ倒れこんだ。








「あのさー普通さー分かるよなあいつらも殺してないじゃんか」兄は頭がくらくらする中顎を摩りながら

エルに怒っている「そんな事分かるわけないじゃない、それにあんたが変な所・・・触るから」

「まぁ時間もないし、さっさと聞いて連絡っての入れるぞ」「ありがとう」

エルの小さな感謝の気持ちは「は?」の一言で返され終わってしまった



兄が門番二人の縄を解き二人に命令をした「連絡はどうやるんだ?」「・・・・・」

「意識がないから答えれないのか、面倒だなー」と兄が頭をかきながら考え込んでいると

ザーザーと音がした後に「こちら管理室どうした?」部屋から声がし、する方へ向くと



「どうしよ」とエルが機械のくぼみに手をはめていた「何やってんだ」「だって気になったんだもの」

兄が仕方なく門番の一人に話をさせてみた「門を開けたいのですが」今回は上手く操れ喜び


「分かったでは、終わり次第また連絡をしろ」ガチャと音がしたのを終わりの合図と思い

「ごめんなさい・・・」エルが何故か素直に謝ってきたのに驚き「あぁ・・・別にいいよ上手くいったし」

その後徐々に門の開く音が部屋に広がっていった。













兄が出発してから綾たちは出発の準備を整えていた

「皆さん乗り込みましたか?」綾が魔力車を一通り確認して、最後尾の魔力車に乗り込もうとすると

「そこの魔力車どもよ、行かせはせんぞ」怒声とともにドンドンと周りの物が揺れる程の

大きな紫色のサイらしき魔物に乗った者が近づいてきた



魔力車に乗っている奴隷たちを確認すると「今すぐ戻ると言うのであればこのままで許してやるだが」

サイらしき魔物が地面を強く蹴り上に乗っている者が


「この帝王ズーズ、直々に貴様ら奴隷の身をもって国のあり方を叩きこんでくれる!」

帝王は手にしている金のハルバードを見せつけるように振り回し風がおきる


「あぁ・・・どうしよう」「見逃してくれ」奴隷達が帝王の威圧に嘆き降伏しそうな空気の中

「降りてはいけません、皆さんそのままどうか動かないでください!」綾が帝王の威圧に負けぬ程に

大きな声で指示を出す。







帝王がハルバードを振り回すのをやめ、目の前で魔力車を守るように立ち塞がる綾にハルバードの矛先を

向け「貴様は・・・そうか刀しか触れぬ野蛮人かそれなら理解できる」帝王が納得をした顔をしながら



「どうせ同族への情けと思い助けにでも来た挙句、あろう事か奴隷全員に泣きつかれでもしたのであろう」

綾が話より帝王の部下が誰も来ていないか辺りを警戒するのに必死な姿に怒り



「我より周りが気になるとは、ふざけるではないわ!」

サイらしき魔物が綾に勢いよく突っ込み

後ろの魔力車を守る形で綾が盾になり角に串刺しになってしまった


「帝王あなたは分かっていません、私は」串刺しになりながら喋る綾の予想外な姿に動けず

「元から全員助けるつもりです!」串刺しの姿のままでサイらしき魔物の頭を綾が思い切り突き刺す


ブモォーーンとサイらしき魔物は断末魔を上げながらその巨体を地面へと倒した

帝王が共倒れしないため後ろに飛び退き、綾だけが起き上がる驚きの光景に


「この化け物め!人の姿でだましおって!」帝王は怒りが頂点に達してしまい

「化け物如きが人を救う?笑わせるでない挙句には全員など夢物語もいい加減にせい!」


綾への怒りは収まらず

「そんなに可笑しいですか?」「あたりまえだその様な事、我を抜き考えたとしても世界が許さぬ!」

「でもこれから変わるかもしれませんよ?」「変わらぬ!救えぬ!世の中を知らぬ小娘風情が!!」


綾は帝王の怒声に怖がるどころか徐々に冷静になる心を感じ

「この体になってしまった事を感謝しないとダメかもしれませんね」と笑みがこぼれる


その瞬間先程まで少し距離を取っていた帝王が力の限りハルバードを横に一閃振り

綾の頭を狙ってきた「何を笑っておる!我が大切なプーちゃんを貴様許さぬ!」


「先程から怒り狂っていたのはこの魔物が原因だったのですね」綾が帝王から見れば枝のように

細い腕につけている籠手でハルバードを止めた「さすがは化け物じゃわ、全てが予想外すぎる!」



綾がお腹に空いた穴のせいで本気が出せずに帝王の全力での連撃で魔力車側に押し込まれていく

「どうした化け物、このままでは魔力車ごと貴様を潰してしまうわい!」


「そうですね、なら化け物は化け物らしい戦い方をお見せしましょう」「オねぇチゃん・・・・」

帝王の連撃の中魔力車から降りてこちらに来ようとする、白髪の少女の姿が綾の視界に入る

「何をしてるんですか!!」綾の怒声に泣きながらも少女は「いヤだ、おねェチャん死んジャ・・・やだ」



魔力車の中で互いに身を寄せ合い怖がる奴隷達の中、孤独に一人で綾の戦闘を見守っていた少女だったが

綾の危機的状況に、恐怖と不安になる気持ちが限界を超えてしまい我慢できず来てしまった。


「どうする化け物、貴様に来客だぞ?相手をしてやったらどうだ?」綾の焦りを見通しより一層

ハルバードに力を入れてくる帝王、少女の悲痛な姿が綾の視界に入ってしまい



ハルバードの重い一撃を受け流し続けて来た綾の、判断力を奪い受け流しきれず

刀が折れてしまい、最後の一撃と思った帝王が大きく振りかぶり綾へハルバードを叩きこむ










ハルバードの凄まじい威力に地面が割れ、砂煙で綾と帝王の姿が見えなくなり

「おネぇチャん・・・ひとリはヤダよ・・・ツライよ」少女の声の聞こえる方へと帝王が近づき


「魔力食いか奴隷商共も奇妙な物を扱いおる、その不気味な声を出すな」帝王の大きな手が

少女の頭を軽く覆い持ち上げる「貴様のような化け物は必要あるまい、すぐに後を追わせてやるわい」


帝王が手に力を一気に入れようとした瞬間腕の肉が食いちぎられ、少女の姿がなくなった

「うっ・・腕が・・腕があぁあぁぁっ!!」帝王が腕を抑えながら両膝をつく


激痛の中で後ろにあると思った綾の死体の方へ向くとあるのはハルバードにより

内臓が飛び散っているサイらしき魔物であった


今度は帝王が悲痛な叫びを上げた「あなたの様な外道でも悲しみや痛みを感じるのですね」

帝王が綾の声のする方へ右手だけでハルバード向け驚愕した。






そこには少女を抱き上げた綺麗な黒髪が薄紫色に変色し、黒い目は透き通るような銀色になり爪が伸び

歯も鋭い刃先の様に尖り腹の穴も治り、帝王が言った化け物となった綾がいた


「なんと醜い化け物・・・・それが本来の姿か」「そう思うのであれば好きになさってください」

綾が力を入れ過ぎないよう抱き上げていた少女を地面へ降ろし


怪我がないかと手を近づける、少女は綾の姿に混乱し後ずさりしてしまい綾の手が止まる

「いいのです・・・・それが当然の反応ですから」化け物になった綾の表情が一瞬だけ


元の綾に見え少女が戻そうとする綾の手を握る

「どンなス・・ガたでモ・・・・オネぇちゃン・・」喋る少女の手に力が入る







「お姉ちゃん大好きだから、だからどこにも行かないで私とずっといていなくなっちゃ嫌だ!!」






少女の強い意思に綾がそっと抱きしめ「ずっと一緒です、だから少しだけ待っててくださいね」

抱きしめていた手を離し、綾が泣いている少女の涙を拭い後ろを振り向くと



帝王の姿はなく王城の方へと血が続いていた

「逃げたのですか・・・・情けない」綾が帝王にとどめを刺しに行こうとしたら


「それは良い判断とは言えませんね」使用人が二人魔力車から降りて来て邪魔をする

「今なら間に合います、それに武人として戦おうとしなかったあなた方には言われたくありません」


「私達には」椿が喋る終わるのを待たず綾が拾った刀の破片を全力で投げると

椿の顔へ一直線に飛んでいき、その弾丸にも劣らない速度の破片を易々と掴み綾を睨みつける


「その動きでよく言えますね」「エルちゃんに言うのであれば・・・」椿が掴んだ破片を砕き

殺すような目で綾を睨み続ける



「あなた方の事情に口出しする気はありません、ですので邪魔をしないでください!」

綾の殺気に少女が近づき「おネぇちゃん、キケんだから・・・ダめ!」と綾の背中に抱きついた


「その子の言う通りです、今とどめを刺せたとしてその後はどうするのですか?」

椿が魔力車の奴隷達を指さす「相手も抵抗するでしょう、兵も集まってきますそれでも行かれますか?」


綾が深呼吸し心を落ち着かせると体から白い煙が出て元の姿へと戻っていく

「私とした事が本来の目的を見失っていました」綾がペコリとお辞儀して少女と手をつなぎ

魔力車を正門へと出発させた。

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